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第2章 新たなる仲間
第15話 弓使いの事情
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戦士と腕輪 第15話 弓使いの事情
街の近くの村でのモンスターの大群との戦いでなんとか討伐隊が勝利を収めてから
数時間が経過していた。少年と弓使いは元の姿に戻っており、身を隠していた林の中から
出てくるのであった。
「ふぅー。元に戻った。これで討伐隊に合流できるな。」
「全くだ。あの姿になると元の姿に戻るのに時間がかかるから困るんだ。」
少年と弓使いはそんなことを言いながら、村の門の前まで歩いていくのであった。村の
門の前では先鋒部隊のリーダーがモンスターの死骸の処分を指揮していた。
「おや、君たちは無事だったのかい。戦いが終わった直後にいなかったから、少し
心配したんだが、よかったよ。今、モンスターの死骸の処分を全員でやっているから
君たちも手伝ってくれ。」
「はい。わかりました。手伝います。」
少年はそう言うと、弓使いといっしょにモンスターの死骸を運んでいる戦士たちの
ところへ向かおうとするが、先鋒部隊のリーダーがあることを尋ねてきた。
「あ、そういえば、君たち。戦いの最中に参戦してくれた女性の魔法使いと竪琴を使う
女性を見なかったかい。彼女たちのおかげで今回はモンスターの大群に勝利できた
ようなものだからね。せっかく、礼を言おうと思っていたのに、すぐにいなくなって
しまってね。」
少年と弓使いはビクッとして体をこわばらせ、振り返って、先鋒部隊のリーダーに次の
ように答えるのであった。
「あ、いえ。見てないですね。俺たちもモンスターを倒すのに手一杯でその人たちがどこに
行ったかは見てないです。」
「そうか。それは仕方がないな。まあ、また出会えたら、礼を言うしかないな。」
先鋒部隊のリーダーは少年の回答を聞くと巨乳魔女と竪琴使いのことはあきらめたので
あった。少年と弓使いはその言葉を聞いて、ホッとすると、作業をしている戦士たちの
ところへ向かい、モンスターの死骸を街の近くの村から借りた馬車に積んでいくので
あった。
「あとは、このゴブリンの死骸を馬車に積んでくれ。その巨大ゴブリンは借りてきた別の
馬車に積んでくれ。」
「わかりました。よいしょっと。あー。今日の戦いは大変だったから、すごく疲れたよ。
普段なら、このくらいの作業なら難なくこなせるのにな。」
「仕方あるまい。あれだけの大規模な戦いだったんだ。俺も、たくさん矢を放ったから
腕がパンパンに腫れてしまったよ。こんなのはひさしぶりだぞ。」
先鋒部隊のリーダーから指示を出されて、作業をこなしていた少年と弓使いは体力をかなり
消耗していることを実感するのであった。30分後、最後のモンスターの死骸を馬車に
積むと少年と弓使いは休憩に入ろうとするのであった。
「よーし。モンスターの死骸を積み込むのは終わったぞ。休憩しようっと。」
「ふぅー。疲れたな。俺も休憩しよう。」
少年と弓使いはモンスターの死骸を積み終わって、木陰で休もうと考えるのであったが、
村の塀で村人が作業をしているのを見つけるのであった。
「あ、あれ。何してんだろう。」
少年は近くで作業を監督していた村長に聞いてみるために声をかけた。
「あの、何をなさっているんですか?」
「おー。これは。今、村の塀を修復しておりますのじゃ。今日の戦いでかなり破損し
ましたからな。直さずに放っておいては、あとでモンスターに襲われてはひとたまりも
ありませんからの。」
村長は次のモンスターの襲撃に備えて壊された村の塀を修復していると答えるのであった。
少年は村長の話を聞いて、体力の消耗のことをすっかりと忘れて自分にも何かできないかと考え始めるのであった。
「あの、よければ、俺も塀の修復作業を手伝います。」
「い、いや。そこまでしていただいては困りますのじゃ。この村を守るために
モンスターの大群と戦っていただいておるのに。」
「でも、早く塀を修復したほうがみんなも安心して暮らせるから、手伝わせてください。」
少年は村の塀の修復作業に参加することを懇願するのであった。村長は少年の申し出を
断れないと感じて、こう答えるのであった。
「そこまで言っていただけるなら、修復に参加してください。助かりますじゃ。」
「お前が手伝うなら、俺も村の塀の修復作業に参加するぞ。俺だけ休むのは気分が悪い
からな。」
村長が少年の塀の修復作業への参加を受け入れると弓使いも塀の修復作業へ参加することを
伝えるのであった。少年と弓使いはさっそく村人といっしょに村の塀の修復作業を行うので
あった。
「この木の板をあそこの壊れた塀に運んでくだされ。」
「わかりました。よいしょっと。」
少年は村長の指示を受けて、木の板を運んだりして、村の塀の修復作業を手伝うので
あった。弓使いも木の板を釘と金づちで塀に打ちつけたりしているようであった。
「我々も手伝うよ。モンスターの死骸の処分はほとんど済んだしな」
「それは助かりますじゃ。よろしくお願いします。」
先鋒部隊のリーダーや他の戦士たちも手が空いたので村の塀の修復に参加するのであった。
1時間程度が過ぎると、村人や討伐隊の協力で村の塀がほとんど修復されるのであった。
「ありがとうございますじゃ。予定では明日の午後まで塀の修復に時間がかかると
思いましたが、皆様に手伝っていただいたおかげでこんなに早く終わりましたじゃ。
お礼といってはなんですが、今日のモンスターの大群を撃退した宴を開くつもりです
じゃ。ぜひ、戦士様たちにも酒や料理を振る舞わさせてくだされ。」
「ありがとうございます。では、村のご好意に甘えて、我々も宴に参加させていただ
きます。」
村長はモンスターの撃退や村の塀の修復への協力に感謝するため、討伐隊のメンバーを宴に
誘った。先鋒部隊のリーダーが村長の申し出を受諾して、少年や弓使いも宴に参加する
ことになるのであった。
「あ、そうだ。宴が始まる前に言っておきたかったんだ。1人で増援部隊を呼びに行って
くれて、本当にありがとう。先鋒部隊のリーダーとして、感謝するよ。」
「い、いえ、増援部隊を呼びに行きましたけど、斡旋所が先に派遣してくれてました
から、俺は村の戦況と途中からの村への道案内をしただけですよ。」
「いや、君が増援部隊と合流して来てくれたから、包囲攻撃していたモンスターの大群の
背後を奇襲攻撃できたんだよ。よくやってくれた。」
先鋒部隊のリーダーは少年に増援部隊を呼んで来てくれたことにとても感謝するので
あった。少年はその言葉を聞いて、少し照れると上機嫌になって、宴の会場に向かって
歩いていくのであった。宴の会場には大きな焚き火が置かれており、その周りを囲うように
村人や討伐隊のメンバーが地面に座っていくのであった。そして、酒やその他の飲み物を
渡されて、宴が始まるのであった。
「では、飲み物が行き渡ったようなので、宴を始めますのじゃ。本当に、今日は、ありが
とうございますじゃ。みなさまのおかげでモンスター撃退に成功しました。乾杯。」
村長が乾杯の音頭をとると、宴が始まり、村人や討伐隊のメンバーが酒や飲み物を飲ん
だり、料理を食べたりするのであった。少年や弓使いも振る舞われた料理をたくさん
ほおばるのであった。
「うーん。この肉の丸焼きはおいしいな。お酒はまだ飲めない歳だから、次の機会に
するか。あ、そうだ。あなたはお酒は飲まないのですか?」
「俺もまだ18歳だから、酒を飲むのはまだ早いから、この飲み物でいいよ。」
「あ、そうですか。18歳って、俺と近いですね。」
少年は弓使いに酒を勧めようとしたが、弓使いもまだ若かったので遠慮するのであった。
むしろ、少年は弓使いが自分と2歳しか違わないことに少し驚き、親近感をさらに持つので
あった。少年はもっと弓使いと話をしようとしたが、弓使いは立ち上がると焚き火から
離れるように歩いていくのであった。
「ちょっと、夜風に当たってくる。」
弓使いはそう言い残して、宴の会場から離れていくのであった。少年は弓使いが人気の
ないところに行くと思い、いい機会だと感じて、弓使いを追うように宴の会場を抜け出す
のであった。
「あっ。あの、今、よろしいですか?」
「な、なんだ。どうしたんだ。」
少年は宴の会場から離れて1人で物思いにふけっていた弓使いに声をかけるのであった。
「その、あの戦いの中で、俺が女性の魔法使いになったことです。」
「そのことか。俺も似たようなことだからな。あのときはさすがに驚いたが、別に今は
そこまで気にしていないさ。」
「あんなことが起こり始めたのは、俺の住んでいた村の近くにある洞窟で手に入れたこの
剣士の腕輪をはめてからなんです。」
少年は弓使いに自分が変身するようになった原因を語り出すのであった。弓使いも少年の
話に耳を傾けていくのであった。
「俺の目的の1つはこの剣士の腕輪の副作用を解くことなんです。」
「そうだったのか。お前が女性に変身するのはモンスターを1日に10匹倒すことで
起こるのか。俺のとはちょっと違うんだな。あまり参考にならないと思うが、
話してくれた礼に俺のことも話そう。」
弓使いは少年の話を聞き終わると今度は自分のことを語り出すのであった。
「俺が持っているこの弓は静穏の弓と言って、うちの家系で代々受け継がれてきた弓だ。
但し、この静穏の弓は特殊で誰でも引けるわけではなかった。俺の家は猟師をやって
いるが、親父はこの弓を引くことはできなかった。」
弓使いは自分の副作用に関連して、自分の持っている静穏の弓について語り始めた。
「俺が16歳の誕生日になったとき、親父からこの静穏の弓を受け継いだんだ。親父や
祖父も引けなかったから、俺も引けないだろうと思っていたが、親父からもらって
引いてみたら、すぐに引けたのさ。親父も俺も大喜びだったよ。次の日からは
猟をするときに必ず持っていって使っていたんだ。最初のうちは特に副作用はなく
普通に暮らせていたんだ。」
弓使いは静穏の弓を手に入れた経緯を話し始めて、副作用のことを語り始めた。
「ただ、数ヶ月が経過した後のことだった。たまたま、その日はモンスター退治や
猟で多くの動物を仕留めて、矢をたくさん放っていた。夕方くらい前になって
弓の練習もして100本くらいの矢を放った直後だった。静穏の弓が青い光を発して
俺の体はその青い光に包まれて、竪琴を持った女性に変貌してしまったんだ。」
弓使いは少年に静穏の弓の副作用により変身したときのことを告白するのであった。
「変身したあとは、お前も知っての通り、心も体も女になってしまって、数時間後に
元に戻ったときは本当に焦ったぜ。だから、なるべく静穏の弓を使わずにいたが、
そのあとは何事もなく過ごせたから、数ヶ月後に試しに使ってみて、問題なさそう
だった。しかし、100本くらいの矢を放つとまた竪琴を持った女性に変貌して
しまったんだ。それからはあまりたくさん矢を放たないようにしてきたんだ。だから、
他の戦士の仲間になったり、パーティーを組んだりするなんてあり得ないんだ。」
弓使いは少年に静穏の弓の副作用の話を語り終えるのであった。少年は自分とは経緯が
違うと思ったが、ある違和感を感じたので弓使いに質問した。
「あっ。あの。初めて変貌したあとは静穏の弓を使わなかったんですよね。そのまま、
使わなければ、いいんじゃないんですか。俺の剣士の腕輪は外せないんですよ。」
「実はそうしたいんだが、俺自身のある問題があって、静穏の弓はどうしても使い
たいんだ。」
弓使いは少年と違い、副作用が出る静穏の弓を使用しないことも選べたが、使わざるを
得ない理由があるみたいであった。少年はさっそくその理由を聞いてみるのであった。
「どうして、副作用のある静穏の弓を使い続けるのですか?」
「じ、実は、俺は弓の狙撃が下手くそなんだ。他の弓で遠い的を狙うと外れまくって
話にならないレベルなんだ。この静穏の弓は狙撃能力と速射能力を高めてくれるんだ。」
少年はあっけに取られて、口をぽかんと開けてしまうのであった。少年は気を取り直して
弓使いにさらに質問するのであった。
「じゃあ。弓矢の訓練をすればいいじゃないですか。訓練すれば、静穏の弓を使わ
なくても。」
「だ、だめなんだ。いくら弓矢の訓練をしても、あまり上達しないんだ。だから、
静穏の弓を使うしかないんだ。」
弓使いは悔しい表情を顔に出して、少年に副作用のある静穏の弓を使い続ける理由を
語り終えるのであった。そんな弓使いに、少年はこんなことを言うのであった。
「あきらめちゃ。だめです。これからも訓練や実戦を続けていけば、なんとかなると
思います。訓練や実戦で狙撃能力を高めれば、必ず、静穏の弓なしでなんとかやって
いけるはずです。」
「そ、そうか。誰にも相談できず、1人で悩んでいたから、思考が硬くなってしまって
いたな。」
「あの。それで何なんですが、前に断られた仲間になってもらう話なんですが、もう一度
考え直してもらっていいですか。お互い、実戦で1人でモンスターを退治したりするのは
大変ですし、副作用のことは隠す必要もないので万が一に変身しても大丈夫ですし、
どうですか?」
少年は互いの副作用のことを理由に弓使いに仲間にならないかと再度申し出るのであった。
今度はさすがに弓使いも真剣に考え込んでいくのであった。しばらく、時間が経過して
弓使いはある結論を出すのであった。
「わかったよ。お前の仲間になろう。これからは、よろしくな。」
「あ、ありがとうございます。いっしょに副作用を克服しましょう。」
弓使いが少年の仲間になることを受け入れ、少年は大喜びするのであった。2人は宴の
会場に再び戻って、焚き火の前で語らい合い、みんなといっしょに夜を明かすのであった。
街の近くの村でのモンスターの大群との戦いでなんとか討伐隊が勝利を収めてから
数時間が経過していた。少年と弓使いは元の姿に戻っており、身を隠していた林の中から
出てくるのであった。
「ふぅー。元に戻った。これで討伐隊に合流できるな。」
「全くだ。あの姿になると元の姿に戻るのに時間がかかるから困るんだ。」
少年と弓使いはそんなことを言いながら、村の門の前まで歩いていくのであった。村の
門の前では先鋒部隊のリーダーがモンスターの死骸の処分を指揮していた。
「おや、君たちは無事だったのかい。戦いが終わった直後にいなかったから、少し
心配したんだが、よかったよ。今、モンスターの死骸の処分を全員でやっているから
君たちも手伝ってくれ。」
「はい。わかりました。手伝います。」
少年はそう言うと、弓使いといっしょにモンスターの死骸を運んでいる戦士たちの
ところへ向かおうとするが、先鋒部隊のリーダーがあることを尋ねてきた。
「あ、そういえば、君たち。戦いの最中に参戦してくれた女性の魔法使いと竪琴を使う
女性を見なかったかい。彼女たちのおかげで今回はモンスターの大群に勝利できた
ようなものだからね。せっかく、礼を言おうと思っていたのに、すぐにいなくなって
しまってね。」
少年と弓使いはビクッとして体をこわばらせ、振り返って、先鋒部隊のリーダーに次の
ように答えるのであった。
「あ、いえ。見てないですね。俺たちもモンスターを倒すのに手一杯でその人たちがどこに
行ったかは見てないです。」
「そうか。それは仕方がないな。まあ、また出会えたら、礼を言うしかないな。」
先鋒部隊のリーダーは少年の回答を聞くと巨乳魔女と竪琴使いのことはあきらめたので
あった。少年と弓使いはその言葉を聞いて、ホッとすると、作業をしている戦士たちの
ところへ向かい、モンスターの死骸を街の近くの村から借りた馬車に積んでいくので
あった。
「あとは、このゴブリンの死骸を馬車に積んでくれ。その巨大ゴブリンは借りてきた別の
馬車に積んでくれ。」
「わかりました。よいしょっと。あー。今日の戦いは大変だったから、すごく疲れたよ。
普段なら、このくらいの作業なら難なくこなせるのにな。」
「仕方あるまい。あれだけの大規模な戦いだったんだ。俺も、たくさん矢を放ったから
腕がパンパンに腫れてしまったよ。こんなのはひさしぶりだぞ。」
先鋒部隊のリーダーから指示を出されて、作業をこなしていた少年と弓使いは体力をかなり
消耗していることを実感するのであった。30分後、最後のモンスターの死骸を馬車に
積むと少年と弓使いは休憩に入ろうとするのであった。
「よーし。モンスターの死骸を積み込むのは終わったぞ。休憩しようっと。」
「ふぅー。疲れたな。俺も休憩しよう。」
少年と弓使いはモンスターの死骸を積み終わって、木陰で休もうと考えるのであったが、
村の塀で村人が作業をしているのを見つけるのであった。
「あ、あれ。何してんだろう。」
少年は近くで作業を監督していた村長に聞いてみるために声をかけた。
「あの、何をなさっているんですか?」
「おー。これは。今、村の塀を修復しておりますのじゃ。今日の戦いでかなり破損し
ましたからな。直さずに放っておいては、あとでモンスターに襲われてはひとたまりも
ありませんからの。」
村長は次のモンスターの襲撃に備えて壊された村の塀を修復していると答えるのであった。
少年は村長の話を聞いて、体力の消耗のことをすっかりと忘れて自分にも何かできないかと考え始めるのであった。
「あの、よければ、俺も塀の修復作業を手伝います。」
「い、いや。そこまでしていただいては困りますのじゃ。この村を守るために
モンスターの大群と戦っていただいておるのに。」
「でも、早く塀を修復したほうがみんなも安心して暮らせるから、手伝わせてください。」
少年は村の塀の修復作業に参加することを懇願するのであった。村長は少年の申し出を
断れないと感じて、こう答えるのであった。
「そこまで言っていただけるなら、修復に参加してください。助かりますじゃ。」
「お前が手伝うなら、俺も村の塀の修復作業に参加するぞ。俺だけ休むのは気分が悪い
からな。」
村長が少年の塀の修復作業への参加を受け入れると弓使いも塀の修復作業へ参加することを
伝えるのであった。少年と弓使いはさっそく村人といっしょに村の塀の修復作業を行うので
あった。
「この木の板をあそこの壊れた塀に運んでくだされ。」
「わかりました。よいしょっと。」
少年は村長の指示を受けて、木の板を運んだりして、村の塀の修復作業を手伝うので
あった。弓使いも木の板を釘と金づちで塀に打ちつけたりしているようであった。
「我々も手伝うよ。モンスターの死骸の処分はほとんど済んだしな」
「それは助かりますじゃ。よろしくお願いします。」
先鋒部隊のリーダーや他の戦士たちも手が空いたので村の塀の修復に参加するのであった。
1時間程度が過ぎると、村人や討伐隊の協力で村の塀がほとんど修復されるのであった。
「ありがとうございますじゃ。予定では明日の午後まで塀の修復に時間がかかると
思いましたが、皆様に手伝っていただいたおかげでこんなに早く終わりましたじゃ。
お礼といってはなんですが、今日のモンスターの大群を撃退した宴を開くつもりです
じゃ。ぜひ、戦士様たちにも酒や料理を振る舞わさせてくだされ。」
「ありがとうございます。では、村のご好意に甘えて、我々も宴に参加させていただ
きます。」
村長はモンスターの撃退や村の塀の修復への協力に感謝するため、討伐隊のメンバーを宴に
誘った。先鋒部隊のリーダーが村長の申し出を受諾して、少年や弓使いも宴に参加する
ことになるのであった。
「あ、そうだ。宴が始まる前に言っておきたかったんだ。1人で増援部隊を呼びに行って
くれて、本当にありがとう。先鋒部隊のリーダーとして、感謝するよ。」
「い、いえ、増援部隊を呼びに行きましたけど、斡旋所が先に派遣してくれてました
から、俺は村の戦況と途中からの村への道案内をしただけですよ。」
「いや、君が増援部隊と合流して来てくれたから、包囲攻撃していたモンスターの大群の
背後を奇襲攻撃できたんだよ。よくやってくれた。」
先鋒部隊のリーダーは少年に増援部隊を呼んで来てくれたことにとても感謝するので
あった。少年はその言葉を聞いて、少し照れると上機嫌になって、宴の会場に向かって
歩いていくのであった。宴の会場には大きな焚き火が置かれており、その周りを囲うように
村人や討伐隊のメンバーが地面に座っていくのであった。そして、酒やその他の飲み物を
渡されて、宴が始まるのであった。
「では、飲み物が行き渡ったようなので、宴を始めますのじゃ。本当に、今日は、ありが
とうございますじゃ。みなさまのおかげでモンスター撃退に成功しました。乾杯。」
村長が乾杯の音頭をとると、宴が始まり、村人や討伐隊のメンバーが酒や飲み物を飲ん
だり、料理を食べたりするのであった。少年や弓使いも振る舞われた料理をたくさん
ほおばるのであった。
「うーん。この肉の丸焼きはおいしいな。お酒はまだ飲めない歳だから、次の機会に
するか。あ、そうだ。あなたはお酒は飲まないのですか?」
「俺もまだ18歳だから、酒を飲むのはまだ早いから、この飲み物でいいよ。」
「あ、そうですか。18歳って、俺と近いですね。」
少年は弓使いに酒を勧めようとしたが、弓使いもまだ若かったので遠慮するのであった。
むしろ、少年は弓使いが自分と2歳しか違わないことに少し驚き、親近感をさらに持つので
あった。少年はもっと弓使いと話をしようとしたが、弓使いは立ち上がると焚き火から
離れるように歩いていくのであった。
「ちょっと、夜風に当たってくる。」
弓使いはそう言い残して、宴の会場から離れていくのであった。少年は弓使いが人気の
ないところに行くと思い、いい機会だと感じて、弓使いを追うように宴の会場を抜け出す
のであった。
「あっ。あの、今、よろしいですか?」
「な、なんだ。どうしたんだ。」
少年は宴の会場から離れて1人で物思いにふけっていた弓使いに声をかけるのであった。
「その、あの戦いの中で、俺が女性の魔法使いになったことです。」
「そのことか。俺も似たようなことだからな。あのときはさすがに驚いたが、別に今は
そこまで気にしていないさ。」
「あんなことが起こり始めたのは、俺の住んでいた村の近くにある洞窟で手に入れたこの
剣士の腕輪をはめてからなんです。」
少年は弓使いに自分が変身するようになった原因を語り出すのであった。弓使いも少年の
話に耳を傾けていくのであった。
「俺の目的の1つはこの剣士の腕輪の副作用を解くことなんです。」
「そうだったのか。お前が女性に変身するのはモンスターを1日に10匹倒すことで
起こるのか。俺のとはちょっと違うんだな。あまり参考にならないと思うが、
話してくれた礼に俺のことも話そう。」
弓使いは少年の話を聞き終わると今度は自分のことを語り出すのであった。
「俺が持っているこの弓は静穏の弓と言って、うちの家系で代々受け継がれてきた弓だ。
但し、この静穏の弓は特殊で誰でも引けるわけではなかった。俺の家は猟師をやって
いるが、親父はこの弓を引くことはできなかった。」
弓使いは自分の副作用に関連して、自分の持っている静穏の弓について語り始めた。
「俺が16歳の誕生日になったとき、親父からこの静穏の弓を受け継いだんだ。親父や
祖父も引けなかったから、俺も引けないだろうと思っていたが、親父からもらって
引いてみたら、すぐに引けたのさ。親父も俺も大喜びだったよ。次の日からは
猟をするときに必ず持っていって使っていたんだ。最初のうちは特に副作用はなく
普通に暮らせていたんだ。」
弓使いは静穏の弓を手に入れた経緯を話し始めて、副作用のことを語り始めた。
「ただ、数ヶ月が経過した後のことだった。たまたま、その日はモンスター退治や
猟で多くの動物を仕留めて、矢をたくさん放っていた。夕方くらい前になって
弓の練習もして100本くらいの矢を放った直後だった。静穏の弓が青い光を発して
俺の体はその青い光に包まれて、竪琴を持った女性に変貌してしまったんだ。」
弓使いは少年に静穏の弓の副作用により変身したときのことを告白するのであった。
「変身したあとは、お前も知っての通り、心も体も女になってしまって、数時間後に
元に戻ったときは本当に焦ったぜ。だから、なるべく静穏の弓を使わずにいたが、
そのあとは何事もなく過ごせたから、数ヶ月後に試しに使ってみて、問題なさそう
だった。しかし、100本くらいの矢を放つとまた竪琴を持った女性に変貌して
しまったんだ。それからはあまりたくさん矢を放たないようにしてきたんだ。だから、
他の戦士の仲間になったり、パーティーを組んだりするなんてあり得ないんだ。」
弓使いは少年に静穏の弓の副作用の話を語り終えるのであった。少年は自分とは経緯が
違うと思ったが、ある違和感を感じたので弓使いに質問した。
「あっ。あの。初めて変貌したあとは静穏の弓を使わなかったんですよね。そのまま、
使わなければ、いいんじゃないんですか。俺の剣士の腕輪は外せないんですよ。」
「実はそうしたいんだが、俺自身のある問題があって、静穏の弓はどうしても使い
たいんだ。」
弓使いは少年と違い、副作用が出る静穏の弓を使用しないことも選べたが、使わざるを
得ない理由があるみたいであった。少年はさっそくその理由を聞いてみるのであった。
「どうして、副作用のある静穏の弓を使い続けるのですか?」
「じ、実は、俺は弓の狙撃が下手くそなんだ。他の弓で遠い的を狙うと外れまくって
話にならないレベルなんだ。この静穏の弓は狙撃能力と速射能力を高めてくれるんだ。」
少年はあっけに取られて、口をぽかんと開けてしまうのであった。少年は気を取り直して
弓使いにさらに質問するのであった。
「じゃあ。弓矢の訓練をすればいいじゃないですか。訓練すれば、静穏の弓を使わ
なくても。」
「だ、だめなんだ。いくら弓矢の訓練をしても、あまり上達しないんだ。だから、
静穏の弓を使うしかないんだ。」
弓使いは悔しい表情を顔に出して、少年に副作用のある静穏の弓を使い続ける理由を
語り終えるのであった。そんな弓使いに、少年はこんなことを言うのであった。
「あきらめちゃ。だめです。これからも訓練や実戦を続けていけば、なんとかなると
思います。訓練や実戦で狙撃能力を高めれば、必ず、静穏の弓なしでなんとかやって
いけるはずです。」
「そ、そうか。誰にも相談できず、1人で悩んでいたから、思考が硬くなってしまって
いたな。」
「あの。それで何なんですが、前に断られた仲間になってもらう話なんですが、もう一度
考え直してもらっていいですか。お互い、実戦で1人でモンスターを退治したりするのは
大変ですし、副作用のことは隠す必要もないので万が一に変身しても大丈夫ですし、
どうですか?」
少年は互いの副作用のことを理由に弓使いに仲間にならないかと再度申し出るのであった。
今度はさすがに弓使いも真剣に考え込んでいくのであった。しばらく、時間が経過して
弓使いはある結論を出すのであった。
「わかったよ。お前の仲間になろう。これからは、よろしくな。」
「あ、ありがとうございます。いっしょに副作用を克服しましょう。」
弓使いが少年の仲間になることを受け入れ、少年は大喜びするのであった。2人は宴の
会場に再び戻って、焚き火の前で語らい合い、みんなといっしょに夜を明かすのであった。
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