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第一章前編・閑話的外伝「精湯治性射・黄金水伝説完結編」(松)裸のお突き愛
第六十八話「いきなり不起立性(以下略)発症事件・解決編2(中編)」
しおりを挟む「ところで、いつまでそんな所にいるつもり?」
セルフィの透き通る美しい声が浴間から響き渡る。
「そのままだと風邪ひくの、さっさとこっちに来るといいの」
セルフィの言葉に、背後に立つ二人を見てみると。
そこには、あいも変わらずに愛くるしい我が愛しの嫁の姿が。
そう、全裸の幼女……もとい、見た目は幼女、年齢は成人。歩く姿は合法ロリこと、我が嫁フィルナとルティエラさんのお二人だ。
空気を読んで全裸で立ちすくみ続ける両名。
だがしかし、恥じらうように両腕でその身を抱くお姿は……。
まさか、恥じらいではなく、寒さ、なのか?
一応、温度が下がり過ぎないよう魔法で空間調整してるはずなんだけどけどな。
むぅ、これはあかんな。
もしも嫁が風邪をひいてこじらせて肺炎にでもなって、死んでしまうようなことになってしまったら、俺は絶望して闇墜ちして世界を滅ぼしてしまいかねない。それくらいに俺は嫁を愛しているのだから。
重いって? 本気の恋をしたら誰だってこんな風になるもんさ。
まぁ、実際は恋というか、濃い行為の末の『来い』から始まるラブロマンスだった訳だけどな。ぐへへ。愛より先にHがあった訳だしな。ぐへへのへ。
それはさておき、実際はそこまでこじらせる前に魔法で治すとは思うけどね。
この世界には便利な治癒魔法やら魔法薬なんてものもあるみたいだし。風邪くらい治せるだろ。
ただ、俺の前世の世界には無い未知の病が存在し、それが非情に厄介なもので、風邪や衰弱から発症するとなれば話は別だ。
しかも、それが普通の魔法では対処できないものだったなら、なおさら、な。
そんなことになってしまう前になんとかしなければ!
このままでは嫁の体が危険で危ない!
こんな所でいつまでもダラダラしてる場合じゃねぇ!
なら、やるべきことは決まってるよなぁ!?
そう、風呂に入れるんだよぉぉっ!!
という訳で。
「お先にどうぞ」
俺は二人を執事めいた優雅な手印で静かに、スマートに風呂場へと誘導する。
これで一安心だな。後はゆっくりと準備をして後を追い、混浴としゃれ込もう。
そう考えて、俺は二人が進むのを待つ。
――だがしかし。
「そうじゃないの」
セルフィがストップをかける。
え? なんぞ?
「アルクもなの」
なぜか名を呼ばれる。はて?
「アルクも、さっさと脱ぐの」
……ですよねー。
彼女の余計な一声のせいで、目の前の二匹の野獣、もとい小動物めいたプチっ娘ガールズが俺の存在、もとい、その違和感に気付いてしまう。
最初はこてりと首を傾げ、きょとんとこちらを見ていただけの二人だったが、やがて、はっ、とその表情に合点の灯火が浮かぶ。
気付かれてしまったか。おのれセルフィ、余計な真似を。
「そうだよ。さっきからボクたちばっかりず~る~い~」
「そうそう、不公平なの」
「お風呂は裸で入るもの、です」
フンス、と可愛らしく両拳をぐっと胸元で握りながら、睨むように抗議の表情を向けるルティエラさん。
なんということだ。まさか我等が良心たる彼女までもが敵にまわるとは。四面楚歌とはまさにこのこと。おのれセルフィ、謀ったな。
「ボクたちは裸んぼなのにさぁ~、まさかアルクだけ湯浴着とか、言わないよねぇ~?」
「そーなのー。日和ってんじゃねーのー。ちゃっちゃか脱げ脱げー」
おのれセルフィ。調子に乗りおって。後で見ておれ。ヒーヒー言わせちゃる。
まぁ、別に恥ずかしいとかではないし、別に良いんだけどさ。見られて困るような体はしてねぇし。
貧弱な前世とは違うのだよ。モブぷに前世とは!
なお、野郎の脱衣シーンなんざ需要がなかろう。という訳で、詳しいことは割愛させていただく。時間は有限だからな。
という訳で、俺は全裸になった。
とりあえず、一枚脱ぐたびにセルフィがうるさかったり、フィルナが鼻息荒く目を見開いて熱烈な視線をぶつけてきたり、ルティエラさんに至っては、両目を手で覆い隠しつつも案の定、指の隙間から覗いてくる、というテンプレ清純派お嬢様ムーブをかましてきたりと、三種三様の反応があって、割と可愛かった。
いやまぁ、セルフィのだけはちょっとどうかと思うけどな。
「でかいよでかいよ」だの「キレてるキレてる」だの「仕上がってんね! ナイスバルク!」だの、ボディビル大会じゃないんだから……。
あと、なんだよ「腹に煉瓦詰まってんのかい!」とか「肩が肩鎧だな、もう鎧いらねぇな!」とか。異世界の例え独特だなっ!
そりゃ板チョコとかメロンが無いのはわかるけどさ。なんだよ「背中世界樹!」って。俺の背中世界支えちゃってんのかよ。
あと個人的に一番受けたのは「太腿が超魔獣王象」かな。俺の脚、そんなに太いか?
挙句の果てには「胸板神魔鋼」「尻が紫剛鉄」「上腕が鷲獅子の後脚みたい!」だもんな。いや、俺は一体どんな合成魔獣なんだよ。
しかしまぁ、アレだな。
どうしてこっちの世界にもボディビルの掛け声広まってんの? とか、そんな競技こっちにもあんの? といった疑問は残るものの。
まぁ、そんなのはどうでもいいんだ。重要なことじゃない。
俺の胸のうちにでかく広がってしまった疑問。それは――。
……セルフィ、お前もしかして、そういう大会とか見る趣味、あったりすんの?
ついでに言うならさ、むくつけき大男同士のくんずほぐれつとかに興味があったりさ……いや、なんでもない。
彼女は何も答えてくれない。
そもそも質問すらしてないからね。
この触れるべからざる恐るべき禁断の疑念について、俺は胸の内に秘めたまま永久にそっと閉まっておこうと、そう心に誓うのだった。
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