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第一章前編『英雄爆誕編』(破)ハーレム展開はお約束

第三十話「いきなり夜這い(前編)」

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 そんなこんなで酒盛りが始まった。

 無事に生きて帰ってこれた事を祝い酒を飲む。
 実に冒険者らしいといえる。

「アルク~」

 むにゃむにゃとすでに出来上がったセルフィが甘えてくる。
 豊満なお胸様がむにょりと押し付けられ心地よい。温かいしいい匂いがするし実に最高である。

「あの群れを全滅できたのは私のおかげ。褒めて」

 確かに、あの時の采配は実に見事だった。
 相当な数だったからなぁ。魔力切れギリギリのラインで攻撃してくれたのかもしれない。かなり無茶をさせてしまった。
 俺も即座にその戦術に気付いていれば半分くらいは請け負えていたかもしれない。そうすれば負担をかけずにすんだのだろう。
 ステータスばかりいくら高くても経験がなってないなと反省させられるばかりだ。
 次はがんばろう。

 というわけで、しっかりと役割を果たしてくれたセルフィには感謝の気持ちを込めて。じっくりと愛でてあげるのだった。

「ん~……アルクの手、気持ちいい」

 よしよしと頭を撫でると満足そうに目を細める。そんな風にセルフィを甘やかしていると――。

「ボクもがんばったもん」

 撫でろといわんばかりに頭を突き出してくるフィルナ。
 片方を愛でているともう片方も愛でろとばかりに擦り寄ってくる。犬か猫みたいだ。
 実に可愛いもんである。
 よしよしと撫でると嬉しそうに目を細める。

 そんな俺達をなんというか、うらやましそうに? じっと見つめてらっしゃるルティエラさんがおりまして。

「来る?」

 と誘ってはみるのだが。

「い、いえ。私ごときがおこがましいです」

 と断られてしまう。

 相変わらずまだ距離を近づけてくれない。
 まるで慣れてない野良猫みたいだ。
 まぁ、それが普通なのかな?
 今までの二人がちょっとチョロすぎたもんな。

「カモーン」

 セルフィもこう言っているのだが。

「ぅ……その……私は何もできませんでしたから」

 相変わらず自分に自信が持てない感じのルティエラさん。

「そんなことないと思うけど?」
「でも……実際、私の支援魔法なんてなくてもみなさんだけで充分戦えてらっしゃるようですし」
「いつか必要になるかもしれない」
「で、では……その時にでも」
「あと、戦闘ではあまり目立った活躍がないみたいにみえるけど、実は凄い役立ってる」
「うん。薬草採集もそうだけど、あの魔法は助かったよね」
「アレがなかったらここまで大儲けできてなかった」

 そうなのだ。
 生活魔法のBランクに存在する収納ストレージ。これが実に便利だった。
 アシッドウルフの毛皮数十頭分。せっかく解体したはいいけどかさばりすぎて持ち帰れないことに気づいたのはすっかりさばききった後だった。
 その大量の素材を持ち帰るのに役立ったのがこの魔法だ。

「でも、生活魔法Bランクでしたらアルクさんもセルフィさんだって持ってらっしゃったじゃないですか」
「そんな便利なのがあるなんて知らなかった」
「私も。すっかり忘れてた」

 案外抜けてる二人なのであった。
 その点、数ヶ月でも先を進んでいるルティエラの経験は実に役立った。
 自分にある能力を熟知し、最大限に活かす。ベテランの貫禄という奴である。
 完全素人の俺達三人旅だったらどうなっていたことか。

 戦闘ならそこそこできたかもしれないけどそれ以外のところでつまづいていた可能性は充分に高い。

「まぁ、お互いにさ。無いところを補い合っててバランスいいと思うよ。このパーティ」
「……雑用しかできなくて申し訳ないです」

 褒めてるんだけどなぁ。
 相変わらず卑屈なルティエラさんなのだった。


 そんなこんなで就寝タイム。

 今回はかなりの黒字になったので各自小部屋である。
 豪遊という奴だ。

 まぁ俺の戸籍なんていつでも買えるし。
 今は利便性を優先しようじゃないか。

 久々にゆったりと静かにベッドで一人、大の字になっていると――。

 コンコンと控えめなノック。

 誰だろう?
 ちなみにセルフィとフィルナはすっかり酔いつぶれてしまったのでベッドに投げ捨ててきた。
 ゆえにこの二人が夜のお誘いに来ることはありえない。
 ということは――?

「わ、私です……お時間よろしいでしょうか」
「どうぞ。鍵はかかってないよ」
「し、失礼いたします」

 おずおずと入ってきたのは寝間着姿のルティエラさん。
 いつものフードローブ姿ではない、だぼだぼの可愛らしい上下姿だ。
 どうしてだろうね。だぼだぼの寝間着姿の女の子ってどこかいつもより可愛らしく見えるよね。

「どうしたの?」

 ちなみに俺は酔ってない。というか酒を飲んでいない。
 なぜなら、飲んでも酔えないことがわかったからだ。
 俺のスキルの中には状態異常無効の効果を持つものがある。
 そしてこの状態異常無効は毒さえも無効化するようなのだ。
 よって毒は効かない。そしてどうもアルコールは毒あつかいらしいのだ。
 結果、俺はどうがんばっても酔えない。
 酔えないのにあんな不味いものをわざわざ飲む必要は無い。
 なので俺は酒盛りの間もずっとフレッシュジュースを飲み続けていたのだ。

 そして先日痴態を見せてしまったルティエラさんも今日はお酒をお召しにならなかったご様子。
 シラフの二人が深夜にこんばんわである。何のようだろう?

「と、隣……! よ、よろしいでしょうかっ」

 めっちゃ顔真っ赤にしながら尋ねてくる。
 別にいいけど?

 ポンポンと隣を叩いてお座りとうながす。

「し、失礼いたしますですっ」

 なんかめっちゃ緊張してるし。
 どうしたのかな?

「え、えっと、その」
「うん?」

 俺の隣にちょこんと座り俺を見つめるルティエラさん。
 小動物めいていて実に可愛い。

 ゆっくりと、相手の言葉を聞く姿勢で待つ。

「こういう時、どのような言葉をかければよいのか初めてでありましてその……」
「うん」

 とりあえず相槌を打って待つ。

「上手くいえないというか、何言ってんだとか思われるかもしれませんが、その……」

 おどおどと指遊びをしながらしばし押し黙る。慎重に言葉を選んでいらっしゃるご様子。

「た、単刀直入に用件をお伝えさせて頂きますと……その」
「うん」

 そして、ルティエラはその言葉を口にするのだった。

「わ、私を……抱いてください」

 お、おぉう。
 なんという大胆発言。
 え、いいの? やっちゃうよ?
 はやる気持ちを抑えて言葉の続きを待つ。

「実は……あの時から、ずっとお慕いしておりました」

 伏し目がちに、顔を真っ赤にして告白してくるルティエラ。

「あの時、助けて頂いた時から、ずっと貴方のことが忘れられませんでした」

 募りに募っているのであろう思いのたけをこれでもかと全力でぶつけてくる。

「来る日も来る日も頭に思い浮かぶのは貴方のことばかり。それくらい、私にとって、あの日のできごとは衝撃的だったのです」

 あの日……あぁ、ディジナ村でワイバーンを倒した時ね。懐かしい。

「もう二度と会えないかもしれない。きっと会えないだろう。けど、どうしても忘れられない。仲間のことなんて捨て置いてでもどうしてあの時後を追いかけなかったのかと後悔でむせび泣いた日もありました」

 そ、そこまで?

「でも、奇跡的にこうして再会することができて、私は運命を感じずにはいられませんでした」

 確かに、すごい偶然だったもんね。

「けど、あなたにはもう……そういった関係の方がいました」

 うん、フィルナとセルフィね。でも三号さんができても問題ないっぽいよ?

「目の前で愛される二人を見て、何度もうらやましいと思いました」

 我慢しないで混ざればよかったのに。

「誘われるたびに、心が踊りました」

 そうだったんだ。遠慮しなくてもよかったのに。

「でも、こんな私でもよいのでしょうかと、悩み、避けながらこの日まで来てしまいました」

 ぐっと強く手を握り、意を決した様子でルティエラは言葉を紡ぐ。

「受け入れてもらえているというのに、素直になれずにいる己に何度もどかしさを感じてきたことか……」

 告白と言うかなんか熱弁じみてきたぞ。真面目な子なんだな。うん。

「夜、貴方に抱かれる姿を妄想した日々もありました」

 うん、昨日見た。可愛かったよ。

「……こんな淫らな私をあなたは嫌うでしょうか」

 いや? むしろ好きだぜ? エッチな女の子が嫌いな男なんているのかね。

「もう、こんなに切ない思いを隠し通すなんて無理なんです」

 俺の目をまっすぐに見つめる瞳。

「お慕いしております」

 ぐっと身を乗り出して彼女は俺へ心の内をさらけ出す。
 頬を朱に染めながら、一人の乙女がここまで俺のことを思ってくれている。

「だから……私を今日、抱いてくださいませんか」

 それを拒絶することなんて俺には出来ない。
 だから、

「おいで」

 両手を広げて彼女を待つ。
 やがて、おずおずと遠慮がちに悩んだ末、意を決するような表情でポフッと俺に身を寄せるルティエラさん。
 ちょうどよくスッポリと納まったその小さな体は、ほんのりと熱を帯びており、暖かかった。

 よしよしと頭を撫で、触れるだけのキスをする。
 顔を真っ赤にしてぎゅっと俺を強く抱きしめるルティエラ。

 その目をじっと見つめる。
 彼女も俺の目を見つめ返す。

 そこに言葉はいらなかった。

 俺は彼女の体をそっと押し倒す。

 触れるだけで壊れてしまいそうな繊細な細い体。
 その体をぎゅっと抱きしめる。

 彼女も俺を強く抱きしめる。

 見つめあい、むさぼるように口づけし、舌を絡めあう。

 しばし口内で戯れあった後、顔を離すと、そこには潤んだ瞳で俺を見つめる姿。

 恥じらいがちに目を伏せながら、彼女は言う。

「あの……その……優しくお願いしますです……」

 その仕草、その言葉に、俺の自制心も限界を迎えるのだった。


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