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第一章前編『英雄爆誕編』(破)ハーレム展開はお約束
第十四話「いきなりゴロツキ!?」
しおりを挟む飛翔して一時間もかからずに国境へと辿り着いた。
それほど国境越えはさかんでもないのか、特に並んでたりはしなかった。
まぁ好き好んで長旅する奴はいないよね。この世界は新幹線も車も無いのだ。
そんな酔狂な事をする奴なんて行商人か冒険者くらいなものなのだろう。
退屈そうにあくびをしていた門番にフィルナが挨拶する。
「こんにちわ」
「おう、こんにちわ。一応、身分証を見せてもらえるかな?」
ちなみに、国境を越えて飛翔しなかった理由はこの身分証明だ。
フィルナの話を聞いた限りでは、この辺りでは国境を超える際に入国メダルが支給されるらしい。
無くしたらわりと大変なことになる貴重品で、他国からその国へと入った証になるのだそうな。
きちんと帳簿にも記入され、万が一紛失した場合はこの帳簿から確認される事になる。
その国の生まれを証明できない者が入国メダルさえ持たないでうろついていると投獄されることになる。
つまり、身分証明ができないとどこに逃げても身動きがとれないということだ。
そして入国メダル以外にも、生まれを証明する身分証が必要となる。
この近隣の主要な国では生まれた際に教会による洗礼として身分証のメダルを受け取る事になっているのだそうな。
ちなみに紛失すると罰金を払うか奴隷になるかのどちらかになってしまうのだとか。
だが、これこそが問題だ。俺にはそういった身分証明が一切ない。
入国メダルが無いのはしかたない。一応、俺はこの国の生まれって事になるわけだからだ。生まれたてでこんななりしちゃいるが、転生したのはこの国なのだからね。
だが、どこの生まれかもわからないというのは他国へ行く際に大きな障害となる。
が、そこは俺の嫁。フィルナの作戦は実に功名だった。
奴隷には当然の如く、身分証明書が無いのだ。
人ではなく所有物だからである。
ゆえに身分照明が無い理由はこれで問題なくなった。
だが、奴隷のふりをして出入国を行う逃亡者も当然いる。
なので、奴隷を外の国に出す場合、色々と手続きが必要となるのだが……。
冒険者ライセンスがある場合、戦闘奴隷としてもろもろの輸出許可申請が省略されるのだそうな。
なんでそんなことになっているのか、フィルナいわく「わかんない」だそうで、現行法でそうなってるんだからそれでいいじゃないか、とのこと。
もっとも、このやり方で入った場合、指名手配されていることがバレた瞬間、石版の追跡魔術の効果により、かなりの確立でどこにいるかがバレて最終的には捕縛されてしまうらしいのだが……。
それでも運さえよければ、逃げ続けることで捜索コストの問題から追跡が打ち切られる可能性もあるので、ここで対応をミスって拘束され続けるよりは確実に逃走成功の可能性は高くなるとのこと。
さすがは元帝国騎士。その手のことは詳しくて助かる。身分詐称するにはもってこいの采配だ。
「はい、鑑定どうぞ」
「あぁ、じゃあいくよ。拒絶しないでくれよ」
「はいはい」
俺の御主人様ことフィルナが鑑定を受ける。
「フィオナ・ハルティスさんね」
フィルナは、帝国騎士としてのスパイ活動用の偽名、偽造身分戸籍を提示する。
騎士としておおっぴらに活動できない時用に購入しておいたものなのだそうな。
当然、冒険者ライセンスもこの名前で登録している。
だが、この方法も確実ではない。
「ではいきますね」
眼力を込めてフィルナを睨む衛兵。
「はい。確認できました。どうぞ」
「ありがとう。お疲れ様」
無事、鑑定をやり過ごせた。俺が授与した偽装によるものである。ステータスパネルの名前を書き換えたのだ。
そう、鑑定で相手のステータスを見れば偽名をいくら名乗っていようとバレバレなのである。
鑑定は商人など特定のクラスについている人が得られるスキルの一つで、ある程度努力してその道を歩んだ者ならば誰でも使用できるものらしい。
だが、そういったスキルや魔法を勝手に使用するのは基本的には失礼な行為であるらしく、かける際は許可を求めるのが礼儀らしい。
なので、許可も取らずに避妊魔法をかけた俺はわりと失礼だったのだという。
ちなみに、そんな簡単に鑑定されるのに偽造戸籍役に立つの? と思われるかもしれないが、鑑定は通常スキルの上位にあたる上級スキルのさらに上、レアスキルというものに該当するらしく、高いスキルポイントや勉強時間をつぎ込んでわざわざ習得する者は少ないらしい。
が、その少ない人物相手にこそ偽装戸籍の提示が必要な場合も多いので、フィルナは偽装も習得練習中だったのだとか。
そんなこんなで、出国審査も終えて、国境を越える。
さらばファルサリス帝国。二度とこないだろうけど、また会う日まで。
そして俺は飛翔で空白地帯を超え、隣国のミルトグリム連邦共和国へと辿り着いた。
先ほどと同じような入国審査を終え、飛翔して街へと到着。
辿り着いたのは、連邦国内でも帝国に近い人獣混合領プルミラ。
その中でも特に帝国側に近い位置にある入り口の街、ジョサリム。
追っ手が怖いが、しばらくはここで路銀を稼ぐことにしようと思う。
いざとなったら飛んで逃げればいいしな。
さて、新天地だ。がんばるぞ!
と、意気込んでいた所、ここで問題が起きた。
フィルナが倒れたのだ。
無理も無い。急いでいたとはいえ俺に担がれての長距離飛行の旅。
疲労も溜まっていたのだろう。
それに何より、タイミングが悪かった。
女の子だもん。しょうが無いよね。
生理である。
よかったちゃんと避妊は効いていたらしい。
喜ぶ所か? というツッコミもあるだろうが、転生して二日で子持ちはRTAとしても記録更新過ぎだろう。
やはり男にとって彼女の妊娠は大事件なのである。なので、ちゃんと来て一安心である。
まあ、もしできてたとしても、ちゃんと責任はとるつもりだったけどね。
それはさておき、当分は俺の偽造戸籍を購入するためにお金でも貯めようか、と仕事を探すも、初日で仲間探しに失敗して何も出来ずに翌日。
結局、未だまともな冒険者デビューは果たせず、彼女は疲労と生理で寝込んでる。実に暇である。
なら、やれることなど一つだ。
彼女の見舞い品を買うがてら、俺は街の散策へと向かうことにした。
何か面白いものでも見つかるといいな。
ゆっくりと散策する異世界の街並み。
レンガでできた家が立ち並んでいる。
実に感動の光景である。海外旅行なんてしたことなかったからなぁ。
もっとも、もう家には帰れないから、旅行じゃないんだけどね。
と、そんな風に感慨にふけっていたまさにその時。
「おうてめぇ、舐めてんのかゴルァ!!」
怒号が路地裏から鳴り響いた。
さっそく見つけてしまったよ。面白そうなものが。
「この落とし前、どうつけてくれるんじゃゴルァ!!」
「……が……じゃない……」
小さくてよく聞こえなかったが、か細い女の声も聞こえる。
「っってんだ!? っこらぁぁぁ!!」
あいからず男の声はいきり立っている。
これはアレだな。うん、急ごう。
俺は声の聞こえる方に向かい、路地裏へとかけこんだ。
案の定、俺はゴロツキ三人に絡まれているフードローブ姿の少女を発見するのだった。
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