ウィッチとガンマン

雨雲之水

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第1話「間違われたガンマン」

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 時は開拓期、新たに発見された新天地には多くの人間がやってくる。殆どは希望に胸を膨らませてくる者達だが、その中には「訳アリ」も含まれていた。



 新天地のあちこちに街や村が出来、所々でそれなりの賑わいを見せていた。最も、光があれば必ず影が出来るものだが・・・・・。



 一山当てることの出来た幸運なものもいるにはいたが、荒野にはついていない者の方が多く転がっていた。新天地でも幸せは早い者勝ち、運は天に任せるしかなかったのだ。



 しかしそれでも要領のいい者は仕事を探し出し従事した。頭の良い者は新しく商売等を考えた。腕の立つものはそれが如何なるものであれ他人から頼りにされた。何とかしてどうにかしようと皆が皆もがいていた。



 しかし、どうにもならない者達もいた。そんな彼等はその殆どが死ぬか死の危険の伴う危険な仕事に就いていった。そしてその代表格の職業が、「ガンマン」だった。



 常に命懸けのガンマン家業だが、そんな際立って危険な仕事だからこそ個人の技量は尊重された。そして時が経ちそこに伝説が生まれ、ロマンが生まれた時、ガンマンは只の負け犬どもの職業ではなくなっていた。



 とはいえ、薬室に命を込める様な仕事が安全な訳が無い。ガンマンという職のイメージはともかく、それを長く続けられるかといえばそうでもなく、大半のものは早々と死んでいくのであった。



 そして、ここにもその「大半」のうちの一人が転がっていた、名前は「スミス・カーター」。荒野に夢見る一介のガンマンであるが、彼はガンマンとして、いや、人として余りにも運がなかった・・・・・



 レイゼムという街にやってきた彼。宿にチェック・インをすませて酒場で一杯ひっかけていたところ、一人の男に決闘を申し込まれた。ガンマンは職業柄人の恨みを買いやすく、また、挑まれた決闘から逃げるのは美徳とされなかったのである。



 決闘のために街外れへと移動した彼等、しかし、そこには10人以上の「決闘相手」が控えていたのだ。



 銃を抜く暇すら与えられず蜂の巣にされたカーター。いっそひと思いに頭にでも当たって即死すればまだよかったのだが、弾丸はそのことごとくが急所からはずれ、死へのカウントダウンを徒に長引かせていた。



 痛みと出血のせいで最早動くことさえままならないカーター。後はゆっくり死を待つだけの彼だが、そんな彼が決闘というよりは私刑に処された理由は実はとんでもなく下らない理由だった。



 街についた彼は宿でチェック・インを済ませた。当然サインはスミス・カーター(Smith=Carter)だ、しかし、彼の字が汚く、そのせいで宿の親父はスミス・カートン(Smith=Carton)と読み間違えてしまった。



 さて、最近レイゼムや他の街で専ら噂になっているゴロツキの群れ、所謂「ギャング」がいた。どこの街でもあぶれ、ガンマンすら真っ当に出来なかった負け犬の集団がついに人を襲うまで腐りきったといったところだ。その頭目の名前は「スミス・カートン」。



 実に馬鹿馬鹿しい勘違いだといえるだろう、ギャングの頭目が何もわざわざたった一人で宿屋なんかに泊まる訳も無い。スミス・カーターは被害者と思われる人たちのストレスを少しの間だけ発散させたに過ぎない。何故ならスミス・カートン本人は未だ生きていて、これからも人を襲い続けるからだ。



 ともあれ、彼の頭上には幸運の星は瞬いていなかった。ふと、何者かが日差しを遮っている気がした。カーターはそれがあの世からのお迎えだと思い、頭の中で(手はもう動かないし動かすのがひどく億劫だった)十字を切り、気を失ってしまった。
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