銀腕のノーデ

雨雲之水

文字の大きさ
上 下
9 / 9

日曜のSecret meeting!

しおりを挟む
 駅前から少し歩いた所にある図書館。今日は日曜日だ。



 実は今日は澤田さんと待ち合わせている。先日一緒に帰った時に携帯電話の番号を交換していたが、土曜の夜に明日図書館で話を聞きたいと言われた。



 図書館と言っても一階ロビーなら雑談も出来る。人に聞かれたとしても断片的に聞いただけじゃアニメか漫画の話と思って良しだろう。

 当事者の俺が少し神経質になっているだけだろうが、未来の話なんて言われて信じる人間はまずいないはずだ。案外普通に話していても大丈夫なのかもしれない。



「それで、こないだの話なんだけどさ。」



 ロビーの椅子に座って澤田さんが話しかける。彼女にとっては来るかもしれない未来の話だが、俺にとっては過ぎ去った嫌な過去だ。



 詳しく話すのは、正直気が重い。



「そもそも、なんでここなの?初めから東京とか狙えばいいのに、わざわざこんな地方狙ってくる意味ってあるのかな?」



 澤田さんは当然の疑問を口にする。



 確かにそうなのだ。日本の中心辺りに位置するとは言え、それ以外何か利点がありそうには見えないこの岐阜県。山林に覆われている上に奪って役に立つような施設があるかと言えば、どうだろうか?



 大体がこの辺りは陶器の町だ。セラミック、もまぁ役には立つだろうけど、セラミックを狙ったから岐阜県を一番最初に攻撃しましたって言われてもな・・・



「分からないな。奴らの進行スピードは最初はゆっくりだったけど、ある程度経ったら加速度的に上がって行った。その頃にはもうこの県は奴等の支配領域で、人間が入って無事でいられる様な土地じゃなくなってたから。」



 俺が止めたからつつがなく皆暮らしているけど、そうじゃなかったらエクスキューショナーズは暴れに暴れて街を破壊して人を締め出す。

 あの戦闘員だって、本来ならかなりの脅威なんだ。何せあれはロボットだ。この時代で完璧な二足歩行ロボットを作り、それを操れるなんてかなりの技術力だ。



 それはそうと



「そういえば澤田さん、俺の言う事を素直に信じてくれてるけど。何で?」



 目の前で変身したらそりゃ信じざるを得ないだろうけど、それはノーデとエクスキューショナーズの話。



 未来がやばいなんてこんな話は、普通は突飛に過ぎるんじゃないだろうか。でも現に彼女はエクスキューショナーズの侵攻なんかについての疑問は口にするけど、俺の言う未来の話については疑問を挟まない。質問はしてもだ。



「え、だって・・・」



 彼女は少し言い淀んだ。まぁ、ただ単に素直ないい子ってだけかも知れない。信じる理由を聞いても、それは案外すっと出る様な物では無いのかも。何となく、とかもありそうだしな。



「ヒーローは、嘘つかないでしょ?」



 いい笑顔で彼女はそう言ってくれた。くっ、守りたいこの笑顔。

 今までも高いモチベーションで世界を守る気満々だったけど、目の前に信じてくれる人がいると言う事がこんなにも力を与えてくれるなんて。



「あ、あぁ。」



 でも真正面からそんな事を言われるとは思わなかった。少し気恥ずかしい。



 その後も澤田さんには色々と本来これから起こるはずだった事柄について話しておく。でも、もうそんなのは当てにならないという事も加えておいた。



「え、何で?どこに来るかとか分かんないの?」



「初襲撃を俺が撃退したから、奴等の予定も狂ってしまっているんだよ。計画を何らかの形で修正するとしても、俺が見た未来の通りにはならないと思う。」



「そっか、本当ならエクスキューショナーズの襲撃は成功していた筈だもんね。」



 そう、そしてこの事が俺にとっても問題ではあった。

 元々何処かが襲われてから動き出すしかなかったが、2回目以降の襲撃は完全にあちらさんの気分次第。一回目だけはT市と分かっていたものの、これからはもう分からない。



 願わくば計画の邪魔になるだろう俺を狙ってエクスキューショナーズが行動してくれますように。



 初動を邪魔した俺は奴等にとっては無視できない障害のはずだ。明確に敵対行動をとっているしあまつさえ怪人を難なく倒している。



 しかも結構な大技で、だ



「とは言え、俺を狙って来るとなるとT市が確実に被害を受ける事になる、か。」



 被害が出るのはこの際仕方ないと割り切ってしまった方が良いんだろうか。凄く不誠実に聞こえるけど、後手に回るしかない以上どうしようもない。



「あ、風見君。そろそろお昼だし、何か食べに行こうよ。」



 気を遣ってくれたのか澤田さんが昼食に誘ってくれた。悩む所が顔に出てしまっただろうか。

 時計を見れば12時に差し掛かろうと言う所。あまり深く考え込んでも、答えの出ない問題だ。何か食べて一旦切り替えよう。



「何か騒がしくない?」



 外に出ると遠くから何か聞こえる。大体察しはついている、奴等だ。恐らく駅前。破壊音も聞こえる、こうしてはいられない。早く行かないと。



「澤田さん、後でまた落ち合おう。橋を渡った公園で待っててくれないかな。」



 そして俺は走り出す。取りあえずは駅前の見えるスーパー駐車場の屋上へ。そして駅前をみてみれば、そこにはやはりエクスキューショナーズが現れていた。バスが横倒しになり、車も何台か破壊されている。



(バスもそうだけど、壊された車の持ち主は気の毒だな。殺されたりしてないといいけど。)



 だが、今はとにかく転身だ。これ以上の暴挙を許すわけにはいかない。

 俺は右手を胸にやり転身する。



 そして同時に駅前に向かって跳び出す。



 転身した俺はノーデ。世界征服を企む悪の秘密結社、エクスキューショナーズを止める事が出来る世界でただ一人の男だ!
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

底辺エンジニア、転生したら敵国側だった上に隠しボスのご令嬢にロックオンされる。~モブ×悪女のドール戦記~

阿澄飛鳥
SF
俺ことグレン・ハワードは転生者だ。 転生した先は俺がやっていたゲームの世界。 前世では機械エンジニアをやっていたので、こっちでも祝福の【情報解析】を駆使してゴーレムの技師をやっているモブである。 だがある日、工房に忍び込んできた女――セレスティアを問い詰めたところ、そいつはなんとゲームの隠しボスだった……! そんなとき、街が魔獣に襲撃される。 迫りくる魔獣、吹き飛ばされるゴーレム、絶体絶命のとき、俺は何とかセレスティアを助けようとする。 だが、俺はセレスティアに誘われ、少女の形をした魔導兵器、ドール【ペルラネラ】に乗ってしまった。 平民で魔法の才能がない俺が乗ったところでドールは動くはずがない。 だが、予想に反して【ペルラネラ】は起動する。 隠しボスとモブ――縁のないはずの男女二人は精神を一つにして【ペルラネラ】での戦いに挑む。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ラストフライト スペースシャトル エンデバー号のラスト・ミッショ

のせ しげる
SF
2017年9月、11年ぶりに大規模は太陽フレアが発生した。幸い地球には大きな被害はなかったが、バーストは7日間に及び、第24期太陽活動期中、最大級とされた。 同じころ、NASAの、若い宇宙物理学者ロジャーは、自身が開発したシミレーションプログラムの完成を急いでいた。2018年、新型のスパコン「エイトケン」が導入されテストプログラムが実行された。その結果は、2021年の夏に、黒点が合体成長し超巨大黒点となり、人類史上最大級の「フレア・バースト」が発生するとの結果を出した。このバーストは、地球に正対し発生し、地球の生物を滅ぼし地球の大気と水を宇宙空間へ持ち去ってしまう。地球の存続に係る重大な問題だった。 アメリカ政府は、人工衛星の打ち上げコストを削減する為、老朽化した衛星の回収にスペースシャトルを利用するとして、2018年の年の暮れに、アメリカ各地で展示していた「スペースシャトル」4機を搬出した。ロシアは、旧ソ連時代に開発し中断していた、ソ連版シャトル「ブラン」を再整備し、ISSへの大型資材の運搬に使用すると発表した。中国は、自国の宇宙ステイションの建設の為シャトル「天空」を打ち上げると発表した。 2020年の春から夏にかけ、シャトル七機が次々と打ち上げられた。実は、無人シャトル六機には核弾頭が搭載され、太陽黒点にシャトルごと打ち込み、黒点の成長を阻止しようとするミッションだった。そして、このミッションを成功させる為には、誰かが太陽まで行かなければならなかった。選ばれたのは、身寄りの無い、60歳代の元アメリカ空軍パイロット。もう一人が20歳代の日本人自衛官だった。この、二人が搭乗した「エンデバー号」が2020年7月4日に打ち上げられたのだ。  本作は、太陽活動を題材とし創作しております。しかしながら、このコ○ナ禍で「コ○ナ」はNGワードとされており、入力できませんので文中では「プラズマ」と表現しておりますので御容赦ください。  この物語はフィクションです。実際に起きた事象や、現代の技術、現存する設備を参考に創作した物語です。登場する人物・企業・団体・名称等は、実在のものとは関係ありません。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

処理中です...