伝説のパーティ!~王子アルベールとその仲間達は如何にして伝説と謳われる様になったか~

雨雲之水

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リッシュモン王国・2

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 まずこの国には奴隷制は無い。昔はあったがそれ等は全て現国王フィリップが廃止した。



 理由は単純。フィリップが嫌だったからだ。



 若きフィリップは身分と名を伏せて冒険者をやっていた。国の中を色々見て回った訳だが、国の内にある奴隷制は彼の心を引き裂いた。

 鉱山や農場で使われる奴隷たちは領主の持ち物だ。故に彼らに財は無い。彼らが誰かの財なのだ。



 苦しい環境は彼らの人生を蝕み、当然短命で未来も無い。奴隷の子は当然奴隷。奴隷から身を起こす手段など無いのだから。

 しかしそれを見てフィリップは思った。彼らの中に稀有な才能を持つ者がもしいたとしたら、それらの才能が奴隷のまま一生を終える事が果たしてこの国にどれほどの損失になるだろうか、と。



 奴隷制を当然の者として考える者達にそんな考えを持つ者など当然いない。奴隷に対して優しい主はいただろうが、考えの根底は自らの持ち物を大事に扱うと言った所。持つ者と持たざる者との確固たる壁である。



 フィリップはそれを良しとはしなかった。



 農奴ならばまだマシと言った所であろうが、鉱山に充てられた奴隷の生活は生と死との激しいチキンレースであった。崩落や出水は即座に命を奪う。そして命を懸けて鉱石を掘っても、それらは主を通して国に入る。この巨大な搾取装置は国が主体の機関なのだとフィリップが気づいた時、フィリップの心には既に奴隷解放の波が巻き起こっていた。



 奴隷を哀れに思って。勿論フィリップはそれだけで彼らの解放を目論んだわけではない。



 物同然の扱いを受け、財も希望も持たない彼等奴隷。彼らがもし奴隷と言う立場から解放され、真っ当な国の民となって国の経済活動の輪の中に入ったとしたならば?

 勿論貴族たちの反目はある。そして解放された奴隷たちに身の振り方を教える事も必要だ。しかしそれらを整える事が出来たならば?奴隷と呼ばれるモノではない、この国に住まう民が増えるという事だ。



 フィリップは即位するとすぐさま奴隷解放を打ち出した。すると即座に貴族たちの反目にあった。しかしフィリップはそれを頑として強行した。税収に始まるあらゆる法令の改革。土地や財における取り決めなど目の回る様な忙しさがフィリップ達に襲い掛かったが、彼らはやり通した。



 そしてその結果、リッシュモン王国から奴隷という存在は無くなり、代わりに王を慕う驚くべき数の国民が増えたのである。



 新たな国民達も生活スタイル自体は以前とさほど変わりはしない。相も変わらず農業や鉱業に従事している。しかし身分が保証され、財を持つことが出来るようになった。彼らに支払われる金は国の中を巡り、経済活動を活発にしていく。



 村々では金勘定の出来る者が上役となり、上役がごまかして懐に入れないように役人が付いた。何せ大規模な改革だ、人手が兎に角必要だった。

 貴族の末弟達は自分達が付けるポストが出来た事に大いに喜んだ。そうでなければ実家で燻ぶっているのが関の山だったのだから、彼らは喜んで役場のポストに就いて行った。



 また、魔術を扱える貴族の子弟たちも鉱物の採掘現場に従事していった。貴族の子弟は嗜みで魔術を学ぶ者がいはするが、それらを活用するかと言われればそうでもない。飽くまで勉学の一環として学んでいた。



 しかし、使えるのであるならば大っぴらに使ってみたいというのが人情だった。



 フィリップは彼等を王宮付きの魔術師として登用した。鉱山勤務の魔術師では箔が付かない為だ。端くれとは言え貴族は貴族。立場や名誉に関しては慮る必要があった。貴族位ではなくなるとは言え、元貴族の宮廷魔術師。彼らにしてみれば十分魅力的な職業だった。



 そしてこれらを統括したのはエンゾだった。エンゾは彼らに更なる魔術を教え込み、事実上弟子とする事で宮廷魔術師の中でもトップの存在となったのだ。
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