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異変は急に
混沌を愛する者
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「シルヴェストル君はあえなくやられちゃったか~。」
何処か暗い場所、いや真っ暗な場所で男の声がする。
「彼があのまま行動してくれれば、この世界にアンデッドの概念が生まれてくれたのになぁ。残念。」
軽い口調で男が言う。口調は軽いが話している内容は聞き捨てならないものだ。
「しっかしあの王子様、邪魔だなぁ。シルヴェストル君の事もだけど、また行く先々で邪魔されたらたまったもんじゃないよ。アイテムも壊されちゃったし、良い事無しだね。」
この男は、シリヴェストリに魔法の道具を与えたニーグルムと名乗った男なのだろうか。アンデッドの概念を生み出すとどうなるかというのも気になる所だが、彼は一体何が目的でそんな事をしているというのだろうか。
「まぁまぁ。まだ彼にやられたのはたまたま近くにいたマルティコラスと、この世界の魔術師だろう?痛手と言うほどでないし、アンデッド位だったらいくらでも広める方法はあるじゃないか。」
男の近くにまた一人男が現れる。最初の男に似ているが、どことなく雰囲気が違う。
「そうだけどさぁ、面白くは無いじゃない?お膳立てしたのに丸ごと潰されちゃってさ。この世界の魔術って奴も中々どうして侮れないよね。」
両手を上げて最初の男は言う。参ったような感じを出してはいるものの飽くまで調子は軽い。
「だから次は頼むよニーグルム。次は結構団体さんなんだろ?取り合えず人間共には一泡吹いて貰おうじゃないか。その上でゆっくり振りまいて行こうよ、混沌をさ。」
にやりと笑って男は言う。出鼻を挫かれた感は否めないが、どうせ被害と呼べるほどのものでも無い。失敗しようが成功しようがどんどんやってしまえばいいのだ。
「どうせ次のステージにも彼らが出てくるんだから、精一杯頑張って貰おうじゃないの。彼らが頑張れば頑張るほど、後できつくなるんだしさ。」
彼等には異界から化け物を呼べる門がある。何を呼ぶ気なのかは知らないが、その気になればどんな強大な化け物でも呼べるのだろう。そんな余裕がある。
「ニーグルム、次はアスワドも連れて行きなよ。王子様御一行は別にいいんだけどさぁ、狼少女と勘違いした風車の騎士は目障りだしさ。彼等にはご退場願おうよ。」
最初の男はニーグルムににやりと笑ってそう言った。いやらしさを隠そうともしない。
「彼らはアウトかい?まぁ、確かに彼らは思った様にならなかったからもういらないけど。」
穏やかではない。内容から推察すればそれはジルベルタとジェラールの事だろう。彼らも異界の門を通ってこちらに来ている。とすればこの男らの思惑によって連れて来られたという事なのだろうが、その思惑とは予定が違ってしまったのだろう。しかし、もういらないとは言葉が過ぎる。
「まぁ、最後に彼等とは少し遊んであげるとしようか。お次の舞台は少々大がかりだし、楽しくなりそうだねぇ、これは。」
「何にせよ、この世界はもう僕たちの遊び場だ。精一杯遊ばせてもらって、この世界に大いなる混乱と恐怖と、そして混沌を振りまこう。そうすればやがて、僕らの王がおいでになる。」
この男達には王がいると言う。とすれば、彼らはその王の命令でこんなことをしているのだろうか。異界の門からの来訪者はまだ目に見えている部分の方が少ない。目に見えない部分では、相当数が入り込んでいるはずだ。そして彼らの口ぶりでは、その多くが人間のみならずこの世界に対して敵対する者だという事だろう。
「僕らはもうあの世界じゃ滑稽な幻想に成り下がってしまった。一杯食わされたって訳だ。でもこの世界じゃそうはいかない。色んな幻想を定着させて、今度こそ目的を達成させるんだ。まだ水面下だけど、それも今の内だけさ。大きいパーティが開かれれば世界が気づく、そして大騒ぎさ。」
この男たちは楽しそうに、本当に楽しそうに話す。この世界に災厄をもたらす謀を、とても無邪気に話すのだ。だからこそ恐ろしい。抽象的な言葉だけを選んで話しているが、その内容は世界の不幸を望むものだ。それをまるで楽しいお祭りの準備の様に。
「じゃ、アスワドも誘わなきゃいけないし、僕はもう行くよ。次の舞台の用意もしなきゃだしね。今回は少し派手だし、人間がいくらか死ねばいい塩梅なんだけどなぁ。」
そう言うとニーグルムの姿がフッと消える。それを見送って男はまたニヤニヤと笑う。
「楽しみだなぁ、本当に。」
ふと零した男の笑顔は邪悪に歪んでいる。人の形のしてはいるものの、この男たちは人間では無いだろう。しかし、では何者なのかと問われても確たる答えを誰も持ち合わせていないのだ。
男は言った、あの世界では滑稽な幻想に成り下がったと。何者かに一杯食わされたのだと。という事は、この邪悪な男たちは元の世界で何者かと戦った挙句に負けたという事なのだろうか。
しかし何処で誰に負けたのかは最早考えても仕方のない事だ。彼らはここにいて、この世界に災厄を振りまこうとしている。そしてこの世界の人間の大多数がまだこの事に気が付いてすらいないのだ。
うっすらとその影に気が付いているのはごく少数。今や渦中にあるリッシュモン王国、そこに住むほんの数人だけなのだから。
アルベール達は、また大きなお祭りに巻き込まれる事となる。
何処か暗い場所、いや真っ暗な場所で男の声がする。
「彼があのまま行動してくれれば、この世界にアンデッドの概念が生まれてくれたのになぁ。残念。」
軽い口調で男が言う。口調は軽いが話している内容は聞き捨てならないものだ。
「しっかしあの王子様、邪魔だなぁ。シルヴェストル君の事もだけど、また行く先々で邪魔されたらたまったもんじゃないよ。アイテムも壊されちゃったし、良い事無しだね。」
この男は、シリヴェストリに魔法の道具を与えたニーグルムと名乗った男なのだろうか。アンデッドの概念を生み出すとどうなるかというのも気になる所だが、彼は一体何が目的でそんな事をしているというのだろうか。
「まぁまぁ。まだ彼にやられたのはたまたま近くにいたマルティコラスと、この世界の魔術師だろう?痛手と言うほどでないし、アンデッド位だったらいくらでも広める方法はあるじゃないか。」
男の近くにまた一人男が現れる。最初の男に似ているが、どことなく雰囲気が違う。
「そうだけどさぁ、面白くは無いじゃない?お膳立てしたのに丸ごと潰されちゃってさ。この世界の魔術って奴も中々どうして侮れないよね。」
両手を上げて最初の男は言う。参ったような感じを出してはいるものの飽くまで調子は軽い。
「だから次は頼むよニーグルム。次は結構団体さんなんだろ?取り合えず人間共には一泡吹いて貰おうじゃないか。その上でゆっくり振りまいて行こうよ、混沌をさ。」
にやりと笑って男は言う。出鼻を挫かれた感は否めないが、どうせ被害と呼べるほどのものでも無い。失敗しようが成功しようがどんどんやってしまえばいいのだ。
「どうせ次のステージにも彼らが出てくるんだから、精一杯頑張って貰おうじゃないの。彼らが頑張れば頑張るほど、後できつくなるんだしさ。」
彼等には異界から化け物を呼べる門がある。何を呼ぶ気なのかは知らないが、その気になればどんな強大な化け物でも呼べるのだろう。そんな余裕がある。
「ニーグルム、次はアスワドも連れて行きなよ。王子様御一行は別にいいんだけどさぁ、狼少女と勘違いした風車の騎士は目障りだしさ。彼等にはご退場願おうよ。」
最初の男はニーグルムににやりと笑ってそう言った。いやらしさを隠そうともしない。
「彼らはアウトかい?まぁ、確かに彼らは思った様にならなかったからもういらないけど。」
穏やかではない。内容から推察すればそれはジルベルタとジェラールの事だろう。彼らも異界の門を通ってこちらに来ている。とすればこの男らの思惑によって連れて来られたという事なのだろうが、その思惑とは予定が違ってしまったのだろう。しかし、もういらないとは言葉が過ぎる。
「まぁ、最後に彼等とは少し遊んであげるとしようか。お次の舞台は少々大がかりだし、楽しくなりそうだねぇ、これは。」
「何にせよ、この世界はもう僕たちの遊び場だ。精一杯遊ばせてもらって、この世界に大いなる混乱と恐怖と、そして混沌を振りまこう。そうすればやがて、僕らの王がおいでになる。」
この男達には王がいると言う。とすれば、彼らはその王の命令でこんなことをしているのだろうか。異界の門からの来訪者はまだ目に見えている部分の方が少ない。目に見えない部分では、相当数が入り込んでいるはずだ。そして彼らの口ぶりでは、その多くが人間のみならずこの世界に対して敵対する者だという事だろう。
「僕らはもうあの世界じゃ滑稽な幻想に成り下がってしまった。一杯食わされたって訳だ。でもこの世界じゃそうはいかない。色んな幻想を定着させて、今度こそ目的を達成させるんだ。まだ水面下だけど、それも今の内だけさ。大きいパーティが開かれれば世界が気づく、そして大騒ぎさ。」
この男たちは楽しそうに、本当に楽しそうに話す。この世界に災厄をもたらす謀を、とても無邪気に話すのだ。だからこそ恐ろしい。抽象的な言葉だけを選んで話しているが、その内容は世界の不幸を望むものだ。それをまるで楽しいお祭りの準備の様に。
「じゃ、アスワドも誘わなきゃいけないし、僕はもう行くよ。次の舞台の用意もしなきゃだしね。今回は少し派手だし、人間がいくらか死ねばいい塩梅なんだけどなぁ。」
そう言うとニーグルムの姿がフッと消える。それを見送って男はまたニヤニヤと笑う。
「楽しみだなぁ、本当に。」
ふと零した男の笑顔は邪悪に歪んでいる。人の形のしてはいるものの、この男たちは人間では無いだろう。しかし、では何者なのかと問われても確たる答えを誰も持ち合わせていないのだ。
男は言った、あの世界では滑稽な幻想に成り下がったと。何者かに一杯食わされたのだと。という事は、この邪悪な男たちは元の世界で何者かと戦った挙句に負けたという事なのだろうか。
しかし何処で誰に負けたのかは最早考えても仕方のない事だ。彼らはここにいて、この世界に災厄を振りまこうとしている。そしてこの世界の人間の大多数がまだこの事に気が付いてすらいないのだ。
うっすらとその影に気が付いているのはごく少数。今や渦中にあるリッシュモン王国、そこに住むほんの数人だけなのだから。
アルベール達は、また大きなお祭りに巻き込まれる事となる。
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