伝説のパーティ!~王子アルベールとその仲間達は如何にして伝説と謳われる様になったか~

雨雲之水

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異変は急に

酒場の二人

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 アルベール等が王宮で叙勲式などを執り行っており、他の仲間たちはその日は各々自由行動である。

 そしてミリアムとセリエは二人して冒険者ギルドのバーで飲んでいた。神妙な面持ちと言う訳では無いが、どこか真面目な雰囲気だ。



「正直チャンスがあるかどうかって話なのよね。」



「今は難しいんじゃないかしら?アルは冒険者になりたてで、ソチラの方が楽しいって感じだし。それに次から次へと問題が湧いて出るから、どうしてもそっちが優先になっちゃうわよね。」



 女性二人の今日のテーマは、アルベールとこれ以上お近づきになれるかどうかだ。



 少し前までであったならこれは女性冒険者の共通のテーマでもあった。しかしアルベールは一足飛びにAランクに上がってしまい、Bランク以下の冒険者は箸にも棒にもかからないときた。そうなって俄然有利となったミリアムとセリエであったはずなのだが、肝心のアルベールは色恋にはあまり興味がない様子。



 いや、無い訳では無いのだろうが、今はそんな事をしている場合では無いといった調子だ。



「まだ知り合って日も浅いし、そこまで考える事も無いとは思うけどねぇ。」



「やっぱり王子様ともなると知り合う女の子は貴族って事になるんだろうしなぁ~。」



 最初は別にそういう目で見ていた訳では無い、そこまではという話だが。しかしジェラールとマリオンの様子を見ていてそんな気分が鎌首をもたげて来たのは確かだ。

 王子様と平民の女の子との恋。というと少しロマンチックな感じにもなるだろうか。平民の女の子は冒険者だが。



「王子様って所を抜きにしても、アルは別格でしょ。剣も魔術も一流で、真面目で人当たりも良くて優しいなんて殆どおとぎ話じゃん。」



 勿論これらの要素はアルベールが王族であるが故に修め得た要素だ。王子でなくてこのスペックの男子は誕生しえないだろう。

 元々がさつな者が多い冒険者だ。アルベールの様な者は自然新鮮に映るし、何より地位や実力も相まって人気はうなぎ上りだ。しかも十六歳という年齢もあり、殆どが年上に当たる女性の冒険者達は一様にやられていた。



 狙うと言うと打算的に映るが、しかし彼女らはアルベールの実力をいつも間近で見てきている。実際には仲間たちの働きあっての勝利だが、それでもアルベールの存在感は頭抜けている。まぁ、ジェラールを除けば男性は後はジョンしかいないのでそれも推して知るべしという所ではあるが。



 そのジョンも今日は何処かへ行っている。何処へ行っているのかはご想像にお任せだ。



「マリオンはまぁいいとして、これからも異界から人が入ってくるのは確実でしょ?場合によってはライバルが増える可能性もある訳だし、距離は縮めておきたいよねぇ。」



 ジルベルタは外見からしてもアルベールより年が下だと思われた。であるなら、人が増えて自分がその前に埋もれてしまう前になんとか手を打っておきたいというのは当然だろう。



 これが通常の冒険者であったならば、パーティを組んでいる内に気が付いたらというパターンに沿えた。しかしアルベールは冒険者といえど王子様である。あんまり時間をかけていると何処か他の貴族の子女にうっかり横から入られかねない。

 政略結婚が当然視野に入る貴族・王族だ、しかもアルベールの側からならばともかく貴族からすればコネ作りの意味でもアルベールは優良物件だ。ガエルやマクシミリアンよりは競争率も高くない上にまだ十六歳という若さ、いつその矢が飛んできてもおかしくは無い。いや、或いはもう飛んできているのかもしれないのだ。



「先ずは冒険者として信頼しあえる間柄になるのが先だと思うけどね。今の私達じゃぁお世辞にもアルベールの背中を守れるとは言い切れないし。」



 セリエの言葉にミリアムはうなだれる。確かにそうなのだ。しかしあのアルベールの強さに追随出来るのはジルベルタとジェラール位のものだ。そもそもジョンもミリアムもセリエも、ついこの間までCランクの冒険者であったのだ。最初からBランクの圏内に入っていたアルベールとは比べるべくもない。



 となるとやはり魔術が最有力候補だった。アルベールに魔術を教えて貰えばアルベールとの時間を作りつつ、アルベールの強さに追いついていく事も出来る。



「せめて強くなる前に強くて可愛い女の子が異界から来ませんように!」



 ミリアムが祈る。今は祈るくらいしか出来る事が無かった。強くなるのには時間がかかる、それは重々承知している。アルベールとて昨日今日あの強さを手に入れた訳では無いと知っているからだ。だがジルベルタの例を見れば異界からそんな女性が現れないとは限らない。



 兎にも角にも何かチャンスが欲しかった。セリエはそんなに構えてはいない。どちらかと言えばこれはミリアムの問題であったのだ。

 それは言うなれば王子様にあこがれる女の子の願望であった。
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