極夜のネオンブルー

侶雲

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5旅立ち

23旅の道連れ

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病院の近くの高台に、ママを連れてきた。
理由は、私の彼氏を紹介するためだ。

「さあ着いた、ここがパパとママとアンディの
思い出の高台ね。」(コリンナ)

「そうよ。
それで、話って何?」(ビーナ)

そこにいたのは、私とママとノラブロの三人。

「私の彼氏を紹介します。」(コリンナ)

「ちょっと待って!
まさか?
まさかこの薄っ気味の悪いヒョロっとしたのが
あんたの彼氏なんて言わないわよね?」(ビーナ)

「そのまさかです。
名前はノラブロ。」(コリンナ)

「ダメダメダメダメダメダメダメダメダメ
絶対ダメよ!
ちゃんとした人と付き合って、幸せになりなさい!」
(ビーナ)

「ちゃんとしてます。
ノラブロには霊が見えるの、
私のことをパパが見守ってくれてるって
教えてくれたの。」(コリンナ)

「もっとダメだわよ、なにその強引なオカルト設定、
冗談じゃないわよ。」(ビーナ)

ノラブロは黙っていたが、ママから罵られる度に
まるでハンマーで打たれた杭のように体が地中に
埋まっていくようだった。
遠くを見つめながら、
メンタルをかろうじてガードしていた。

「ちょっとアンタ、ウチの娘に何してくれてんのよ?」
(ビーナ)

「コリンナさんは真の強い女性です。
あなたにも、クラークさんにもとてもよく
似ています。」(ノラブロ)

「こら!
アンタに何がわかるんだ!
私とクラークを語るな!」(ビーナ)

「いい加減にしてよママ!
ママだって年の差婚だったクセに!」(コリンナ)

「それとこれとは違うでしょ?」(ビーナ)

「なにが違うのよ。
最初はおじいちゃんだって反対してたんでしょ?」
(コリンナ)

「それがなによ?」(ビーナ)

「ママだっていつかは受け入れるようになるわよ。
私、絶対あきらめませんから!」(コリンナ)

「コーリーンーナー。」(ビーナ)

ママはダダをこねるような声を出した。

付き合い始めたのはつい数日前。
ノラブロは私に旅に出ろと助言してきた。
曰く、私は一つの場所にとどまるタイプではなく、
いろんな場所におもむき、たくさんの人たちの前で
歌うべきだ、とかなんとか。
私は、ノラブロだって居場所を転々としてるんだから、
ノラブロと一緒だったら旅に出てやっても良いという
条件を出してやった。
多分、私の好きな男性のタイプと
ママの好きな男性のタイプは似ている。
ノラブロの話では、パパは不器用だけど誠実で、
困っている人を放ってはおけない性格だそうだ。
そして、私はノラブロがまさにそういう性格の
持ち主だと思った。

「ねえママ、それともう一つお話があるの。」
(コリンナ)

「今度はなによ?」(ビーナ)

「私の十八歳の誕生日、ママと祝いたいの、
絶対逃げないでほしいの。」(コリンナ)

ママの腕をメリー並みにがっしりつかんでやった。

「わかったわよ。」(ビーナ)

「監禁するからね、絶対離さないからね。
もうママの職場にビーナは辞めますって
連絡入れてやったから。」(コリンナ)

「なにー!
本気で言ってんの?」(ビーナ)

「本当です。
だいたい、あのお店が全部悪いんじゃん、
私とママが仲悪くなったの。」(コリンナ)

「ちょっとバカ!
アンタなんてことしてんのよ!」(ビーナ)

「それと、ママの再就職先は私が用意しました。
私がギターカフェ辞めるから、ママを紹介しました。
今度面接行って下さい。」(コリンナ)

「もう、あきれたわ。
いいわよ、アンディが紹介した
アンタの職場なんだから、
さぞかし良いお店なんでしょうね。」(ビーナ)

「それと、誕生日にはノラブロ様も来て下さるの。」
(コリンナ)

「こんなヤツ連れてこないで
こんな不気味なヤツ連れてこないで
こんな変なヤツ連れてこないで
こんなオカルトなヤツ連れてこないで
こんなおかしなヤツ連れてこないで
こんなわけわかんないヤツ連れてこないで
こんないらないヤツ連れてこないで
こんな邪魔なヤツ連れてこないで…」(ビーナ)

そろそろノラブロは地中深くに生き埋めになりそうだ。
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