【第2章完結】追放勇者はどこへ行く

音無響一

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第3章 魔大陸

124 勇者と岩山

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俺は考えた。

なぜこうなったのか。

夜が明けるまで1人で考えた。

お仕置とはなんなのだろうか。

今この状況が俺へのお仕置ではないのだろうか。

いくら考えても答えは出なかった。

そうこう思案していると夜が明けた。

朝食を作り、テントで寝ている3人を起こす。



「レイ様、おはようございます」

「おはようハーリル。朝食が出来ているから服を着てテントの外に出てくるといい」

昨夜のことを思い出したんだろう。

自分の尻を触っている。

寝ている間に回復魔法をかけたので痛みはないはずだ。

「痛く⋯ない。昨日のは幻だったのか⋯なんで痛みが残ってないのだろうか⋯私はお仕置されていなかったのか⋯」

痛みを残しておいた方が良かったのか⋯

なかったことにしたいから黙っておこう。

ヨウとリヴァちゃんも起こし、みんなで朝食を摂る。



「今日はどうするのだ?」

どうするか⋯

俺は寝たいんだが。

三徹くらいできるから寝なくてもいいが、疲れてはいるな。

「このどデカい岩山を調べてみよう。何も無いかもしれないがな」

「わかったのだ。何も無いならブレスで吹き飛ばして見晴らしを良くしてやるのだ!」

やめろ。

なんでもブレスで解決しようとするんじゃない。



朝食を食べた俺たちは岩山を登ってみることにした。

「レイ様、どうやって登るんでしょうか」

確かにこれはどうしようか。

掴めそうなとこはあるが、ハーリルは登れるのか?

俺とドラゴンズは力技で登れるだろうが、ハーリルは途中で力尽きる可能性があるな。

「ハーリル、おんぶして登ってみよう」

「は、はい?」

「はいはい!我もおんぶして欲しいです!」

リヴァちゃんは自力で登れるだろ、引っ込んでなさい。

「リヴァは自分で登れるだろうが!引っ込んでおれ!おんぶされるのは妾なのだ!」

代弁してくれたのは嬉しいんだが、お前も引っ込んでろ。



「2人とも自分で登れ。ハーリル、こいつらは放っておけ。ハーリルを置いていくわけにはいかないから遠慮するな」

「い、いや、でも⋯⋯⋯あ!レイ様、あそこが何か怪しくないですか?」

ハーリルが指さしたところを見る。

「どこが怪しいんだ?どこも似たような岩山だぞ?」

「い、いや、ほら、あの辺怪しいような気がしません?ほらあそこです!」

適当に言ってないか?

「特に怪しいようには見えないが⋯」

ハーリルが指し示すところへ行ってみる。



「ここの何が怪しいんだ?なんにも無さそうだが⋯」

俺は岩を触りながら怪しいとこがないか色々と探してみる。

「リヴァ!ここの岩は硬そうなのだ!どちらが一発殴って岩をどこまで砕けるか勝負なのだ!」

「むむ!望むところです!では勝った方がおんぶの権利を得るということで良いでしょうか!」

やめろやめろ。

砕いたところで権利は得られんぞ。

それに破壊をするんじゃない。

「では妾からやるのだ!」

「いやいや、ここは我から!」

また騒ぎ始めおって⋯



「ええい!うるさい!同時にやればいいだろ!」

俺の言葉で取っ組み合いになりかけてたドラゴンズは動きを止め、岩山と向かい合った。

「そうなのだ!では同時にぶっ叩くぞ!」

「分かりました!せーのでいきましょう!」

気合いを入れるドラゴンズ。

「「せーーーーーの!」」

待て待て、2人とも本気じゃないだろうな。

なんて魔力を拳に込めてるんだ。

そんな力でドラゴンズがぶっ叩いたら岩山が消し飛ぶだろ。

止めなければ。

そう思った時にはドラゴンズは拳を振り抜いていた。



そして響き渡る強烈な破壊音。

まるで特大な雷が落ちたかのような打撃音が鼓膜を激しくふるわせた。

ドラゴンの本気の一撃により衝撃波が発生し、大地が揺れる。

突風が吹き荒れ砂煙が舞う。

全く周りが見えない。

岩山はどうなったんだ⋯

消し飛んだか?

砂煙が鬱陶しいので風魔法でそれを吹き飛ばす。



「痛いのだあああああああああぁぁぁ!」

「いたあああああああああああああい!」

砂煙が腫れると、岩山は何事も無かったかのようにそこに存在していた。

「なんだと⋯」

ドラゴンズが本気で殴ったんだぞ?

ダンジョンじゃあるまいし、なぜ破壊出来ないんだ。

まさかこれも魔族特有の魔法とでも言うのか⋯

転移魔法といい、俺達を嵌めた幻術魔法といい、魔族はどれだけ特殊な魔法を持ってると言うんだ。



「はっ!そんなことよりハーリル?大丈夫か!」

とてつもない衝撃波が発生していたんだ、ハーリルは吹っ飛んでいるかもしれんぞ。

俺は辺りを見渡すと、すぐ側で気絶しているハーリルを見つけた。

耳から血を流している。

おそらく音と衝撃波で鼓膜をやられたのだろう。

身体強化してても痛かったからな。

ハーリルは間に合わなかったというよりは魔力量の差でやられたのだろう。

俺はハーリルに回復魔法をかけてやる。



「それにしても無傷とは⋯この岩山はなんなのだろうか」

俺は痛みで騒いでいるドラゴンズをシカトし岩山を触ってみたり小突いてみたり観察してみる。

「なんなのだこの岩は!妾の拳で砕けぬとは⋯」

「我の拳の方が痛いです!レイ様、回復魔法をお願いします!」

拳の痛みを何とかしてくれと騒ぎ立てるドラゴンズはシカトし、俺は剣を取り出した。

何の変哲もないただの長剣だ。

まずは普通に振り下ろしてみる。

甲高い金属音が鳴り響き、長剣は中程から折れた。

今度は大槌を取り出す。

これもダンジョンで手に入れたなんの効果もない大槌だ。

槍でも試したが折れるだけで岩山は無傷だった。



「この岩山はなんなのだろうか。効果のない武器とはいえ、傷一つ付かないのはおかしい」

俺は折れた武器を地面に放り投げ、腕を組んで思案している。

「妾が殴って破壊できないのだ!おかしいに決まっておろう!そんなことはいいから回復魔法をせぬか!」

「折れてます!これは確実に骨が折れています!」

本当にうるさいな⋯

めんどくさいので回復魔法をかけておく。

「小癪な岩山なのだ!こうなったら本気のブレスをお見舞いしてやらねば気が済まん!やるぞリヴァ!」

「はいヨウ様!我々の本気を見せてやりましょう!」



バインドの魔法で2人を同時に背中合わせで動けないように縛っておく。

「うるさい、静かにしてろ」

もちろん胸を強調させるようにしてやった。

意味は無い。

ただ2人ともいい乳してやがる。

服を着ててもわかる。

「ここからが妾達の見せ場なのだ!はよう解くのだ!」

縛られた状態で暴れるもんだからバインドが身体にくい込んで⋯

確かに今がお前らの見せ場だ。

存分にその乳を強調させててくれ。



俺は岩山に火魔法で炎の塊をぶつけてみる。

ファイヤーボールと呼ばれているようだな。

岩山に当てる。

するとそれが跳ね返り俺に向かってきた。

いきなりのことで驚くが、ただのファイヤーボールだ。

俺は素手で掴み魔力を込めた手で握り潰す。

「跳ね返ってきたな。ヨウ、お前らがブレスを放ってたらこうなってたかもしれんぞ。しないで良かったな。お前らの拳が砕けたのも、自分の威力がそのまま返ってきたからじゃないのか?」

ドラゴンズの本気ブレスが跳ね返ってきたと思うとゾッとするな。

防御が遅れたら死ぬぞ。

武器を叩きつけた時はその威力がすぐに武器側に返ってきたのだろう。



エクリプスエッジでも壊せないんじゃなかろうか。

エクリプスエッジの威力が返ってきたら、死ぬだろうし完全なる消滅だ。

果たしてエクリプスエッジの威力を反射できるのか謎だが、一か八か過ぎるな。

試しに俺が本気で殴ってみるか。

欠損したところですぐに治せばいいしな。

多少の痛みは我慢するしかあるまい。





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