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第3章 魔大陸

095 勇者とナレンギル国王

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俺達は執事に案内された控え室で謁見の準備が整うまで待っている。

来る予定ではあったが、日時指定はしていなかったので仕方ないだろう。

「この大陸一の大国なだけあるわね。控え室だけでもすごい豪華だわ。」

ミュアの言うことは尤もだろう。

調度品なども豪華なものが設置されている。

座っているソファもとても座り心地がいい。

「俺は1度は来ているが、みんなはさすがに王城に来ることなんてないか。セシリアはあるのか?」

「私も王城に来るのは初めてよ。これから謁見だなんて緊張しちゃうわ。」

セシリアもないのか。

自国の王に会うのは緊張して当たり前か。

ケイトなんて顔面蒼白じゃないか。

「ケイトは大丈夫じゃ無さそうだな⋯」

「ひゃ、ひゃい!」

もう返事すら噛み噛みじゃないか。

非公式なら良かったんだがな。

ドラゴンで来るって伝ええあったから仕方ないか。

それにヨウはこの国では特別だろうしな。

ミュアとヨウとリヴァちゃんは緊張とは無縁なんだろう。

いつも通りだ。



「皆様、謁見の前に謁見の間での作法をお教えしたいと思います。」

先程の執事がやってきて作法の説明をしてくれるそうだ。

基本的に話すことになるのは俺だけだろう。

今回は王城に来たことを伝えるだけだからそんなに長くやることは無いそうだ。

その後に非公式で王と話す場を設けるとのことだ。

俺以外のみんなは跪くだけでいいそうだ。

ヨウとリヴァちゃんはそんなことはしないだろうがな。

「それでは準備も整ったので参りましょう。」

執事の案内で謁見の間へと向かう。



謁見の間の扉にはドラゴンのレリーフがある。

前回来た時には気にしなかったが、これはヨウなんだろう。

「それでは先程の説明通りにお願いします。」

執事の合図で俺達は謁見の間へと進んだ。

王が来るまで跪く。

ヨウとリヴァちゃんはつまらなそうに立っている。

しばらくするとナレンギル王が姿を表し、玉座へと座った。

「神竜様、ナレンギル王国へようこそおいでくださいました。」

まずはヨウに声を掛けた。

「お主がレンの子孫か。あまり似ておらんな。もう何千年前か分からぬし、仕方ないか。」

ヨウには人間の王だろうと関係ないよな。

それを咎めようとする奴らもいない。

先程のドラゴンを見たらそうなるだろう。

「この国の発展に寄与された神竜様にお会いできて嬉しく思います。」

「うむ、最初の頃に比べて立派になっているようで安心したぞ。初代国王のレンも今のこの国を見たら喜ぶであろう。子孫のお主達がしっかりやっているのだからな。」

「ありがたきお言葉⋯ところでもう1人の女性もドラゴンとティリズム教国の教皇から伺っております。紹介してはもらえますか?」

リヴァちゃんが自分で自分を指さした。



「そうですそうです。ご紹介して頂けると。」

リヴァちゃんは胸を張って話し始めた。

「我は大精霊にて海の覇者!リヴァイアサン!レイ様の家来になったのです!」

まだそんなことを言っているのか⋯

「なんと!勇者レイの家来に?それが真なら喜ばしいことですな。神竜様とリヴァイアサン様がついているなら、魔族など遅るるに足りませぬな。」

こいつらが居なくても何とかなるがな⋯

ならないようなら終わりだ。

「勇者レイよ、よく戻ってきた。そちには迷惑をかけたな。」

ユディ達のことを言っているのか?

「私が欲を出さなければこんなことにならなかったのかもしれん。」

あれはナレンギル王のせいではないと思うんだが⋯

むしろ息子が死刑になるほど追い込んだのは俺⋯なことないか。

自業自得だなあれは。

「勇者レイがこうやって帰還してくれて、こんなに喜ばしいことはない。まさか伝説の神竜様を伴ってなど誰も予想できまい。この後晩餐会の用意をさせている。皆も楽しんでくれると嬉しいぞ。」

ナレンギル国王は右手をサッと上げた。

これで謁見は終わりなようだ。

王が去った後に俺達も案内に従い謁見の間を退室した。



「直ぐに終わってよかったな。みんなのことを考えてのことだろう。この後の晩餐会はもっと気楽に話せるから、みんな安心してくれ。」

「妾は美味い飯が食えるならなんでもいいぞ!」

「我も人間の食事にハマりました!」

ドラゴンズは元気だな。

セシリアとケイトはまだ緊張しているが⋯

「晩餐会まではまだ時間がございます。先程の控え室でお待ちください。」

俺達は控え室に戻りお茶を楽しんでいる。

「勇者レイ様、王がお話をしたいと仰っています。お時間が取れましたので、お越しいただきたいのですがよろしいでしょうか。」

「わかりました。みんな、少し行ってくるな。」

俺はみんなと少し別れ、ナレンギル国王の元へと行った。



「こちらでございます。」

案内された場所は執務室のようなとこなのだろう。

「失礼します。」

俺は通された場所に入った。

俺は王の姿を確認すると王国式のお辞儀をする。

「よく来てくれた勇者レイ。そんなにかしこまらないでくれていい。ここは非公式な場所だからな。」

「突然の来訪なのに謁見の機会も設けてくれてありがとうございます。」

国王は笑って答えた。

「ははは、そんなの気にしないでくれ。教皇のじじいが自慢するもんだからな!私もやらないと気がすまなかったのだ!」

教皇のじいちゃんと仲がいいのか?

「そうだったんですね。教皇にはティリズム教国では随分とお世話になりました。国王と教皇は仲がよろしいのですか?」

「ナレンギル王国とティリズム教国は同盟よりも固い結束をしているからな。長年いい関係を築けているのだよ。各国で争いはあるが、ナレンギル周辺で争いが起こらないのはティリズム教国のおかげでもある。この2つの大国が手を組むことで馬鹿なことを考える国が出ないのだ。」

お茶が入ったので一息つく。

「ユディ達の話しは聞いていると思う。レイには申し訳ないことをした。あの愚息が改心する可能性にかけたんだが⋯足を引っ張るだけだったようだな。」

そんな思惑があったんだな。

「そのことに関してはなんと言っていいのか⋯」

「レイが悪い訳では無い。私の育て方が悪かったのだ。国でもあの愚息の扱いに困っておったからな。」

元々素行が悪かったのか。

「報告では色々聞いているのだが、それが真実かはわからない。レイの口からどんなことがあったのか、全て教えてはくれないか?」

「⋯⋯⋯わかりました。」

俺は元勇者パーティであったことを全て話した。



「⋯本当に申し訳ないことをしたんだな。済まなかったレイ。」

深々と頭を下げるナレンギル国王。

「や、やめてください。頭を上げてください。もう終わったことですし。」

それでも頭を上げない国王。

俺はそれを見守るしかなかった。



しばらくしたら頭を上げた国王。

「いや、愚息が迷惑をかけたのだ。これくらいはさせてくれ。」

公式の場でこんなことをされたらたまったもんじゃない。

非公式の場だからだろうが、心臓に悪いな。

俺は気になったことがあるので話題を変えた。

「ところで国王。お伝えしたいことがございます。マードレル男爵領でのことです。」

魔族の脅威が各国に迫っていることは、教皇の書簡でも伝えてあることだろう。

セシリアが誘拐されたこと、そしてセシリアの兄が魔族と通じている可能性があることを伝えた。

「そんな短いやり取りの中で違和感を感じたのだな。マードレル男爵領は王都から1番遠いところにある故、情報があまり入ってこない。ティリズム教国との境にあるが、国同士の関係が良好だから辺境伯も置いていないしな。」

北に行く前にセシリアの家を調べた方がいいかもしれない。

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