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第2章 新しい道

056 元勇者とカマはかけられるもの

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馬車の旅は順調だった。

丁度お腹も空いてきたので休憩にしている。

開けた場所があったのでそこに馬車を停める。

馬達の世話をケイトとセシリアがすると言い出してくれた。

リーシャ同様に動物が好きなんだろう。

ケイトはまだ分かるが、セシリアは大丈夫か?

ハーリルに任せるのが適任のような気もするが、何故か2人で楽しそうやってるからいいか。

何かあれば助ければいいしな。



名前もこの2人に名前を付けてもらった方が良かったんじゃなかろうか⋯

しかし後の祭りだ。

プリティーちゃんとハンサムくんとビューチフォーちゃんなんだ。

3頭に水と飼葉を与え休んでもらう。

もちろん俺の回復魔法もしておく。

クリーンの魔法もすることで毛並みも美しくなっている。

名前負けしてないツヤツヤの毛並みだ。



「出だしは順調でよかった。だけどこの辺の地理は全く分からないから、どのくらいで着くか予想できないのが痛いところだな。」

「それはいいじゃない。道を間違えてないならそのうち着くわ。」

その通りだな。

商業ギルドで聞いた限りでは、この道を進めば着くって言ってたからな。

通常の乗合馬車なら5日あれば着くとのことだ。

俺達は普通とは違う旅程になるだろう。

上手い具合に街に着ければ宿で休めるだろうが、そう上手く行くとも限らない。

野営になるのに問題は無いからな。

それに走りながら馬車内で寝て、ハーリルかミュアに御者を任せてもいい。

なんとかなるだろう。



「アーク様、休憩後は私が御者をしてもよろしいでしょうか?」

「もちろん構わないぞ。」

ハーリルが嬉しい申し出をしてきた。

「久しぶりにやるので隣で見てもらえると嬉しいのですが⋯」

「それも構わないぞ。休憩後はそうやって走ってみよう。いきなりやるのは大変だろうしな。」

「はい!ありがとうございます!」

とっても眩しい笑顔だな。



軽い昼食を食べ小一時間ほど休んだので休憩地を後にする。

「ハーリル、準備はいいか?」

「はい、少し緊張しますが頑張ります!」

馬車はハーリルが操り、ゆっくりと進み出す。

「どうだ?何か問題ありそうか?」

少し進んだ所で声を掛ける。

「今のところ問題ないです!ただ、まだ不安なので隣に居て頂けると⋯」

「もちろん次の休憩地までこのまま隣にいるぞ。それは安心してくれ。」

「はい、ありがとうございます!」

嬉しそうな笑顔だな。

「2時間くらい走って休憩できそうな所があれば休憩しよう。」

そのままハーリルは手綱を取り馬車を走らせて行く。

このまま何事もなく休憩地まで走ることができた。

ハーリルは終始楽しそうに俺と話しながら御者をしていた。



「順調に進めているな。ハーリルは御者も上手かったから、今後も俺の休憩に合わせてやってもらうことにする。」

「はい、任せてください!」

ハーリルは自信のある顔で頷いていた。

「じゃあ次は私がやろうかしら。私も久しぶりだからアークにサポートしてもらわないとね。」

来たな⋯

くくく、何かを企んでいそうな言い方だが⋯

俺には神がついている。

エルフに惑わされることなく今日の野営地まで進んで見せよう。

「わかった。次は野営地までになる。そこまでよろしく頼むな。街に着くのは明日以降だろうからな。
それまで頑張ろう。」



セシリアとケイトは相変わらず馬の世話をしながら戯れているな。

キュートちゃんは馬車内で何があったのだろうか。

魂が抜けている顔をしているじゃないか。

まさか道中はずっと淑女講座なのか⋯

ご愁傷様だな。



「じゃあ出発しよう。ミュア、よろしくな。」

「任せてちょうだい。」

ミュアが手綱を取り馬車を走らせた。

ハーリル同様危なげなく進んでいる。

「商業ギルドの職員に聞いたんだけど、チョンザム王国が狙われてるらしいわ。」

「そんな話があったのか。ギルド長は何も言ってなかったが⋯」

「まだ大っぴらにはなってなくて、噂話程度らしいのよ。周辺の街に魔族が出たってね。」

北の小国が狙われているのか?

「ディゼスタ王国にも魔族の魔の手が伸びていたからな。もしかしたら小国を狙っているのかもしれない。」

「魔族の狙いはオーティス大陸なんでしょ?」

「それは俺も聞いた話だからな。魔族から直接聞いたことは無いから本当かどうか分からないんだ。」



魔族がオーティス大陸を支配しようとしているのは有名だが、それが本当のことかは分からない。

俺が生まれるずっと昔から言われていたことらしい。

魔族の本来の狙いが何なのかは分からないが、こちらを害するようなら殲滅する方がいいだろう。

1度話し合ってみるのもいいかもしれないが⋯

勇者は魔族を殺すのが仕事になってるからな。

魔族もそれを知っている。

話し合いが出来る可能性は低いだろうな。

転移の魔法がないと魔大陸には行けない。

覚えようかな⋯

もしかしてエルフは使える?

聞いてみるのもいいかもしれないが⋯

教える対価に何を要求されるか分かったもんじゃない。

それに神獣のルンの存在だ。

あいつは何のために存在するんだ?

女神の眷属なのか?

まだまだこの大陸には分からなことだらけだな。

その謎は俺が解く必要はないだろう。

まずは今抱えてる問題を処理しなくてはな。



「チョンザム王国でも魔族が王族や貴族に取り入っていたら危ないな。かと言ってどうこう出来ないのももどかしいが⋯」

「魔族でもアークなら簡単に対処できるんでしょ?何かあっても私達は安心ね。」

それもそうなんだが⋯

5人とも守れるかは正直なところ不安だ。

このままケイトを家に送り届けるのも少し不安が残るな⋯

行ってみたいと分からないとこもあるからな。

まずはチョンザム王国へ行くしかあるまい。



「ねぇアーク。」

来たな⋯

ふふふ、何を言っても動じないぞ。

さぁかかってくるがいい!

「どうした?」

「昨日の夜⋯」

夜⋯セシリアのことか?

「夜に何かあったのか?」

「随分楽しそうにしてたわね。」

ま、まさか⋯背中撫で回しマッサージを見ていた?

「なんの事だ?」

「ふーん、しらばっくれるんだ。」

何もやましいことはしてない。

俺は寝落ちた、あれは夢なんだ。

「俺は寝てしまったからな。」

「へぇ~。1人で?」

何を疑われているんだ⋯

まさか!

夢じゃ⋯ないのか?

「セシリアの⋯声が聞こえてたけど?」

な、なんてことだ。

1人でセシリアがしていたのは夢じゃないとしよう。

それの声を聞かれていた。

そうであってくれ⋯

「なんの事かわからないな。俺は寝てしまっていたからな。」

「どうあってもしらばっくれるんだ。セシリアもな~んかソワソワしてるのよねぇ。あの子1人でするの好きだから、アークの部屋でしてたのかと思ったわ。それにしても激しそうだったけど?」

このエルフは盗み聞きしておったのか⋯

そういのは辞めた方がいいんじゃないか?

「おいおい、俺がセシリアを手を出したとでも言いたいのか?」

「そうねぇ、それでもいいんじゃないかしら?全員アークに好意を抱いてるわよ?」

何だと?

確かにそうかもしれんが⋯

それでもミュア以外は全員純粋なんだぞ。

全員に手を出すなんてダメだろう。

もうリーシャに手を出してる俺が言ってもなんの説得力もないが⋯



「もしそうだとしても全員に手を出すのはダメだろ。」

「もうリーシャ王女には手を出してるのに?」

⋯⋯⋯⋯⋯え?

動揺するんじゃない。

落ち着け。

深呼吸だ。

悟られないように心の中で深呼吸しろ。

「ミュアはなんでそんなに色々知ってるんだ?」

「あら、本当に手を出してたのね。」

ヤラレタ⋯

まさかのカマかけ。

御者をしながらでも秘術を使うなんて⋯



「まさか本当に王女様に手を出してるなんてね。そりゃあ他の子に手は出せないわねぇ。」

「ははは、なんの事かわからないな。」

「もうとぼけたって無駄よ。残念だったわね。」

くそっ、なんて手強いんだ!

神よ!こういう時の対処方法をご教授ください!

「大丈夫よ、みんなには秘密にしてあげる。」

なんという甘言⋯

対価が怖いんだが⋯

「その代わり、宿に着いてからの楽しみが増えたわね。」

ミュアは片手で手綱を握りながらミニスカートの裾を少し捲る。

「今日は大人っぽい下着を履いてるわ。」

ど、どんなのなんだろうか⋯

「見てもいいわよ。色を当てたら捲っていいわよ。」

ああ、捲りたい⋯

ダメだ、明鏡止水の心を取り戻すんだ。

「何色でもいいじゃないか。ミュアには何色でも似合うさ。」

「答えないとバラしちゃうかもなぁ。」

「黒!黒です!大人っぽい下着と言ったら黒でしょう!どうですか?」

「ハズレよ。正解は赤。残念ね。スケスケでやらしい下着なのになぁ。当てて欲しかったわ。」

くそっ、ハズレて安心なはずなのに⋯

なんでこんなに悔しいんだ。

赤いスケスケの下着から見える不毛地帯⋯

見たすぎるだろ!

やっぱりこのエルフには一生勝てる気がしないぜ!





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