【第2章完結】追放勇者はどこへ行く

音無響一

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第2章 新しい道

045 元勇者と4パターン目

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みんな集まったな。

危なかった⋯

あと少しでやられる所だったぞ。

「みんな服が買えてよかった。一気に華やかになったな。」

俺はみんなをぐるっと見渡す。

何故かカーテシーをしてるキュートちゃんが目に入ったが、無視しておこう。



「みんな適当に座ってくれ。」

ハーリルは座るところがないから立っているようだ。

ケイトとセシリアはベッドへ。

ミュアもその横に腰掛けた。

リーシャは俺が収納から出した椅子へ。

キュートちゃんはその側で立っている。

なんなの?傍付きのメイドかなんかなの?



「今後の予定について話したいんだ。情報収集をしてくると言ったよな。そこで分かったことがある。」

みんな黙って聞いている。

おっと、ケイトを見たらダメだ。

なんで少し前屈みになっているのかを疑問に思ったらダメだ。

視界に入れないようにしなくてはならない。



「ギルドで情報屋を知ってる奴を見つけてな、情報屋とコンタクトを取ってきた。」

セシリアもダメだ。

あの子はなんで脚を何度も組み直すのか⋯

ああ、また組み直して。

見えそうなの!でも見えないの!

セシリアは可愛い下着?それとも⋯

今は考えるな、見たらダメだ。



「その情報屋は⋯魔族だった。」

みんな驚いてるな。

いや、ミュアだけ驚いてないな。

ミュアだけは俺の話を聞いていないのだろう。

ベッドに座り、スカートの中が見えないように太ももをくっつけているのはいい。

正解の座り方だ。

なぜ俺の顔をじっと見てるのだろうか。

いかんいかん、気にしたらダメだ。



「その魔族にディゼスタ王国の話を聞いてきた。」

リーシャは俺の真横だ。

確認できない。

「リーシャを襲撃したのは⋯ディゼスタ王国の第1王子の差し金だ。」

みんな驚いている。

いや、ミュアは驚いていない。

やはり俺の顔をじっと見ている。

太ももを開こうとするでない。

ああ、見える、見えちゃう!

せ、セーフ!閉じました!



「そしてその襲撃を手引きしたのが魔族だ。」

更に驚く一同。

リーシャは「なんてことを⋯」と狼狽えている。

そしてミュアはやはり聞いていないのだろう。

また太ももを⋯ああ、本当に見えちゃう⋯

せ、せせせ、セーフ!

ギリです!ギリギリで閉じました!



「その場にいた魔族は俺が処分しておいた。このままリーシャを王都へ帰すのは早計だと思うんだが、みんなはどう思う?」

「私は危険だと思います。もしかしたら同じようなことが起こらないとは限りません。」

ハーリルが1番に意見を出した。

さすが神殿騎士なだけある。

危険をすぐに察知したな。

「俺もそう思う。この国は、というかこの国の王子は魔族と通じている。このことが世にバレればディゼスタ王国は滅亡するかもしれない。」



「アーク様のお力でこの国を助けることはできないんですか?」

ケイトが聞いてきた。

見たらダメなんだ。

でも見てしまう⋯

手を前で組むんじゃない。

誰だそのポーズを教えたのは。

胸が⋯胸が⋯ニットから零れ落ちそうに⋯

「俺個人の力でどうこうできる話では⋯」

出来そうなんだよなぁ。

力でゴリ押しして王子様をボコるのは多分簡単なんだよなぁ。

「俺には国に対抗出来るような武力は持ち合わせていないんだ。」

ただそれをしても俺が犯罪者になるだけだ。

「だからリーシャはまだ国に帰さない方がいい。」



俺はリーシャの方を向いた。

「リーシャはどうしたい?」

「私は⋯私は⋯どうしたらいいのでしょうか⋯」

俺が勇者のままでいれば魔族と通じてることを理由に、王子を糾弾できた可能性はある。

しかし俺の現状が分からなければ、勇者の威光を使えない。

少し時間はかかるが、ナレンギル王国かティリズム教国に行く方がいいか。

筋肉王子達に会うのは嫌だが、また勇者になる為に決着をつけなければならない。

もうみんなに黙ってるのはおしまいにする方がいいのか⋯



「リーシャの国を助けるために、俺にやれることがある。」

どうしよう⋯素性を話すか⋯

「その為にナレンギル王国かティリズム教国にいきたい。近いのはティリズム教国だ。まずはティリズム教国に向かおうかと思ってる。」

筋肉王子達がいつ俺を狙ってくるか分からない。

まだ話さない方がいいだろう。

「そのやれることってなんなの?」

尤もな疑問だな。

だがセシリア、それはまだ言えないんだ。

「みんなを危険に晒してしまうかもしれないから言えないんだ。俺の素性を知っているだけで狙われる可能性もある。」

やはり驚くよな。

狙われる可能性があるって怖いからな。

「俺だけが狙われるのはいいんだ。対処出来るからな。ただみんなが危険に晒されるのが怖い。もし俺が守れなかったらと思うとな。だから今まで言えていないんだ。」

危険があると分かり、沈痛な面持ちになる一同。



チラリとミュアを見る。

失敗だ。

薄らと笑っているじゃないか⋯

更に視線を下にズラす。

見⋯見え⋯

俺は目を見開いた。

まさかの4パターン目だった。

不毛地帯が目に飛び込んで来た。

俺は何を話しているのか忘れてしまった。



しばらく沈黙が場を支配している。

もちろん俺はただ喋る内容を忘れただけだ。

「アーク様、私達が危険に晒されるのは理解しました。ティリズム教国に行く前にケイトを国に返す方向で大丈夫ですか?」

ハーリルの言葉でハッと我に返る。

危なかった。

またエルフの術中にハマる所だったぞ。

「そうだな。そこを通ってティリズム教国に行こう。話が上手く行けば、リーシャはティリズム教国で保護して貰えるかもしれない。」



「私はその案でいいと思います。」

ハーリルが賛同してくれた。

「私も皆さんがそれでいいなら⋯」

ケイトが気まずそうにしている。

「私もそれでいいわ。」

セシリアはどの道ティリズム教国に行かないと帰れないからな。

「私もそれで構わないわ。」

足を閉じて喋りなさい。

見えてる!見えてるの!

ああ、なんで更に少し開くんだ⋯

「私は⋯」

リーシャはまだ悩んでいるようだ。



「これはリーシャを守るためなんだ。国の民も今すぐどうこうなるわけじゃない。遠回りになるが、大国の力を頼った方がいいかもしれない。」

危ない⋯またエルフの術中にハマるところだった。

「分かりました⋯ティリズム教国に行きます。」

渋々だが了承してくれたな。

「よし、次の行き先が決まったな。次はチョンザム王国だ。馬車が使えるかもしれないからな。調べておこう。馬車が使えるなら馬車に合わせて出発だ。馬車がないなら明け方から出発することになる。一度解散して各自部屋で待機していてくれ。」

「「「「「はいっ!」」」」」

みんな部屋に戻って行った。



よし、俺もまた情報収集に行くか。

精神的には疲れたが、身体は元気なのですぐに俺は動き出した。


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