【第2章完結】追放勇者はどこへ行く

音無響一

文字の大きさ
上 下
44 / 129
第2章 新しい道

044 元勇者と絶対領域のその先

しおりを挟む
「アークの為に頑張ったんだから、よ~く見るのよ。」

俺の為⋯

そう思うならば、なぜ普通に見せてくれないのか。

スーッと部屋に入ってくるミュア。

マントを羽織っているじゃないか⋯

なんなんだ最初の顔だけ出す演出は。

ただ可愛らしいだけじゃないか。



「脱がして。」

はい?

「私の」

はい?

「マント。」

はい?

「アークが。」

はい?



「アークが私のマントを脱がして。」

さすがです先生。

小娘共とは根本が違います。

そもそも自分で見せることをしない。

その手法、全員に見習わせたいです。

これをケイトに教えていたら、確実に俺の亀様は暴れ狂っていたでしょう。



ちょっと大人しいと思っていたらここでぶっ込んで来たか⋯

こういうタイミングを虎視眈々と狙っていたのか。

相変わらず恐ろしいエルフだ。

この順番は誰が決めた?

エルフの陰謀か?



「アーク、脱がして。」

少し戸惑っていることがバレている。

俺はポーカーフェイスが崩れそうになった。

それをミュアは見逃さない。

このエルフは鷹の目を持っているのか?

鋭い観察眼⋯

もしやそれこそがエルフの秘術なのか⋯



「は・や・く」

ふふ、何を狼狽えてるの?

アークが戸惑っているのなんて手に取るように分かるわ。

4人の可愛らしい女の子を見てきて爆発寸前なんでしょう?

「何を戸惑ってるの?いいのよ、脱がしてアーク。」

いいわ、その顔よアーク。

私も疼いちゃうから、もっと歪ませるよの。



「仕方ないな。じゃあマントを取るぞ。」

既にマントのボタンは外れていた。

俺はゆっくりとマントを開いていく。

そしてマントを剥いだ。

⋯ちゃんと着ているじゃないか、驚かせやがって。

しかしこれは⋯いいのか?

「どうかしら?若い子達に負けないように頑張ったわ。」

見た目はミュアだって若い子だぞ。

だからこそ似合っている。

薄い紫と白のチェックのミニスカートだった。

なんなんだその短さは。

けしからん!

そして白のニーハイ。

敢えて綺麗な足を覆うことで、よりいやらしさを引き立てる。

そしてニーハイとミニスカートの間の露になっている太ももが眩しい。

なぜお腹を出す服を着ているんだ。

その引き締まったお腹とクビレを惜しみなく見せている。

その短い丈のトップスはいったいなんのために存在するのだろうか。

前をリボンで止めているだけの半袖のトップス。

薄いピンクのリボンが可愛らしい。

その服は普段着なのか?

俺は視線を上下に行ったり来たり、舐め回すように見てしまっていた。

「どうかしら?」

ミュアはクルッと回転した。

ふわっと少し浮き上がるミニスカート。

見える、見えちゃう⋯

み、見えないいいいい!

なんという技術。

屈めば確実に下着が見えるであろう短さにも関わらず、見えなかった。

先生、ここまでの短い時間に何個秘術をぶち込むのでしょうか。

心のメモを取るのが大変です。

取り切れません。

「どうかしら?みんなに負けてない?」

いつから勝ち負けが発生していたんだ⋯

そもそも普段着を選ぼうとなぜ考えたのか。

旅の途中なんだぞ?

まともなのはハーリルだけだったじゃないか。

だとしたらハーリルの一人勝ちだ。

「ああ、ミュアは綺麗だから負けてないよ。むしろミュアの一人勝ちだ。」

なんだこれは⋯さっきから本音で話せない。

思ったこととは別の言葉が出てきてしまう。

俺はエルフの術中にハマっているのか。

くそっ、いつからだ!

いつから俺は嵌められてるんだ。

このままじゃまずい、早く抜け出さねば。



「アークはこういう服より⋯こっちの方が好きなんじゃない?」

左手で少しスカートの裾を持ち上げてみせる。

太ももを見せつける。

もう少し持ち上げたら見えてしまうわ。

その顔よアーク⋯もっと見なさい私を。



「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

言葉が出なかった。

生唾を飲み込んでしまった。

見たい。

心の底からそう思ってしまっている。

もうダメだ、底なし沼だ。

抜け出せない。

エルフの術中にどっぷりハマっている。



「あの洋服店はとっても良かったわよ。」

「何が⋯そんなに良かったんだ?」

「下着よ。」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「アークが好きそうな下着が選り取りみどりだったの。可愛い下着もた~くさんあったわ。それに大人の下着も、ね。」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「そんなアークに問題よ。私は可愛い下着、大人っぽい下着、それとも⋯やらしい大人の下着⋯」

私は右手で反対のスカートの裾も少し持ち上げる。

「いまつけてるのはど~れだ?」



再び俺は生唾を飲み込んだ。

どれだって⋯

どの下着も見たいです。

先生、3パターン全部お願いします!

「何をからかってるんだ、そろそろみんなが来るだろう。ふざけるのはここまでにしような。」

くそっ、やはり本音で話せない!なぜだ!

はっ!

ま、まさか⋯4パターン目があるとでも言うのか。

何もつけてませ~ん。

なんて言われたらどうする。

ダメだ、ダメだダメだダメだダメだ!

そんなの見せられたら⋯

亀様がお怒りになられてしまう。



「アークはどの下着が好きなのか知りたいわぁ。」

どんどんポーカーフェイスが崩れているわよ。

ほら、選びなさい。

どれを選んでもいいのよ。

今私は下着は身につけていないわ。

答えを言ったら、その答え通りの下着をマジックポーチから取り出し、あなたの目の前で履いてあげるわ。



「選ぶ必要なんてないだろう。ミュアの下着を見たら失礼じゃないか。」

早く誰か来てくれ⋯

亀様がもう臨戦態勢に入ろうとしているんだ。

ああ、なぜここにキートゥが居ないんだ。

助けてくれ友よ!



「失礼なんてことないわよ?だってあなたは私の⋯見てるじゃない。下着くらいどうってことないわ。アークが喜んでくれるならそれでいいのよ?」

さあ、早く選びなさい。

何を悩んでいるの?

その悩んでいる顔もいいわ。

今すぐ犯したい、そんな考えが浮かんでしまうわ。



「ミュアに似合いそうなのは⋯」

「違うわ。アークが好きな下着を聞いているの。」

くっ、俺の好きな下着だと?

全部好きなんです。

選べないんです。

先生、許してください、もう限界です。

「俺が好きなのは⋯」

言わないとなのか⋯何を選べば正解なんだ。

誰か教えてくれ。

「俺が好きなのは!」



「何をなさっているのですか?リーシャ様から、時間がかかっているので様子を確認するように仰せつかったので、参りました。」

レッパンンンンンンンンンンンン!

ナイスタイミングだキュートちゃん!

さすがリーシャだ。

ありがとうリーシャ。



「キュートちゃん、まだ時間がかかるってみんなに伝えて来なさい。わかったわね?」

強い⋯

なんて強いんだ。

オーマンレイクの畔で跪いていたのはなんだったんだ?

命令しているじゃないか。

キュートちゃんの立場はなんなんだ?

キュートちゃんは震えてるじゃないか。

どんな顔でキュートちゃんに言ったんだ?

あ、レッパン逃げやがった!

なんて頼りにならない援軍なんだ⋯

キートゥ!キートゥはいずこ!



「さあ、邪魔者は居なくなったわ。」

ひいいい、や、やられる。

さっきの魔族なんかより怖い⋯

このエルフにはホーリーセイバーなんて役に立たなそうだ。

俺のホーリーセイバーを立たすしかないのか?

馬鹿なことを考えるな!



「何をされているんですか?ミュア、遅すぎです。」

は、ハーリル!

助かった⋯

「もう終わるところだったのよ。楽しかったわアーク。」

なんでまたそんな目で俺を見るのか⋯

ケイトもセシリアもリーシャも来てくれたな。

良かった。

というか長かった⋯

もう話すのやめて寝たい⋯

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...