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第1章 迷いの森

033 元勇者と次の目的地

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朝になった。

疲れていたはずなのにとてもスッキリとしていた。

昨日は色々あった。

ありすぎてよく分からなくなってる。

ただやるべき事は決まった。

森を出て、今の俺の現状がどうなってるのか、そして女達を全員無事に送り届け、そして⋯

そしてリーシャと⋯

それはまだ少し先の話だ。

まずはみんなに話そう。



とりあえず朝食の準備でもするか。

これも勇者パーティの頃からの習慣だ。

一番最初に起きて用意をする。

身についてしまっているからな、悪いことではないしこれはこれでいいだろう。

用意を始めるとリーシャが起きてきた。



「おはよう⋯ございます。」

顔が熱い⋯アーク様のお顔をまともに見れない。

昨夜はなんて幸せだったのでしょうか⋯

「おはようリーシャ。⋯その、身体は大丈夫か?」

私の身体の心配まで⋯

なんてお優しいお方なのでしょうか。

「はい、私は大丈夫です。とても、とても幸せでした。」



「そうか。それなら良かった。みんなが起きてきたら、今後どうするか話そうと思う。まずはディゼスタ王国に行こう。国のことがあるなら早く戻った方がいい。みんながそれで納得するかはわからないが、みんなの意見も聞いて決めていこう。」

「⋯はい、分かりました。私は私のやるべき事を成します。」

少し寂しげな顔をしたが、すぐに王女としての顔に戻った。

なんて強い女性なんだろうか。

俺はその顔に見惚れていた。

次にハーリルが起きてきたようだ。

「おはようございます。」

「おはようハーリル。起きてくる順番がいつも同じだな。」



「昨夜は疲れて寝ていたようです⋯お話をするはずだったのに申し訳ございません。」

やはり見つめあっていた?

なぜ私は一番に起きないのだ⋯

そうしたら朝のひと時を2人きりで過ごせたかもしれないのに⋯

「疲れていたんだろう。気にするな。みんなが起きて、朝食を食べたら今後のことを話そう。」

「はい、わかりました。何か手伝うことはありますか?」

「そうだな⋯もう少しして起きてこなかったら、みんなを起こして欲しい。今日は全員揃ってる方がいいからな。」

「はい、そうさせてもらいます。」

私はアーク様のお手伝いをすることも出来ない⋯

なんて無力なのだろうか。



「簡単なスープとパンにするか。ルンとキュートちゃんの分も作っておこう。キートゥは来るのか分からんが、来たとしても足りるだろ。」

俺はササッと調理に取り掛かり作っていく。

昨日寝るのが早かったせいか全員起きてきたようだ。

「みんなおはよう。そろそろ出来るからしばらく待っててくれ。」



「じゃあ私がパンを配りますね!これを持って行って大丈夫ですか?」

「ケイトは気が利くな。ありがとう、それをみんなに配ってくれ。」

「はいっ!」

今朝は噛まなかったな、成長したか?

「それじゃ私はスープをよそうわ。」

「ミュアもありがとう。出来たからよろしく頼むよ。」



「ハーリル?どうした?」

「いえ⋯なんでもないのです⋯」

私は何も手伝っていない⋯

私はこんなにも何も出来ない鈍臭い女だったのか⋯



なんだか分からんがハーリルは朝から雰囲気が重いな⋯

「それじゃみんなで食べよう。」

「「「「「いただきます!」」」」」

うん、今日もそこそこだな。

パンも時間停止機能がある収納のおかげで出来立てだ。

カチカチのパンなんて食べたくないからな。



「みんな、食べ終わって落ち着いたようだな。」

俺はみんなをゆっくりと順に見渡した。

「今後のことについて話したいと思う。」

全員頷いてくれた。

「神獣ルンの話だと、ここから行ける場所は1箇所だ。そこを絞りたい。みんな早く帰りたいだろうが、全員の意見を聞いてから決めていこう。」

「アーク、私からいいかしら?」

このタイミング⋯だと?

何かよからぬ予感が⋯

「私は最後でいいわ。というより私は行く場所なんてないの。ここにいるのはなんでなんでしょうね。死んでもいいと思ってたけど、まだ生きてるってことはなにかすることがあるのかと思って付いてきたのよ。」

な、そうだったのか⋯自分から最後を選ぶとはな。

いや、むしろそれが狙いか?

わからん、このエルフの考えてる事は⋯

「ミュアの意見は分かった。誰から聞いていこうか。起きてきた順に聞いていくかな。リーシャから話してくれるか?」

俺はリーシャに視線を向けた。

リーシャは軽く頷いてから話し始めた。

「私は⋯ディゼスタ王国の第一王女、リーシャ・ディゼスタです。私は国の民の為に一刻も早く戻りたい。そう思っております。」

みんな驚かないな。

ある程度予想していたのだろう。

「ありがとうリーシャ。それじゃあ次はハーリルだな。」

「はい、私は⋯ティリズム教国の神殿騎士です。ディゼスタ王国とは隣接してるので、リーシャ様の次で構いません。」

淡々と答えてるな。

「ありがとうハーリル。次はケイトだな。」

緊張してるな。落ち着いて話すんだぞ。

「は、はひ!」

出だしから噛むな。落ち着け。

「私はディゼスタ王国とティリズム教国の間に挟まれるようにあるチョンザム王国という小国です。そこの王都に帰りたいです。順番はお任せします。」

「ありがとうケイト。じゃあ最後は⋯セシリアだな。」

「私はナレンギル王国の男爵家の娘よ。王国の端に領地があるわ。そこに戻れれば大丈夫よ。ティリズム教国からそんなに遠くないわ。」

これでみんなの話が聞けたな。

「みんなありがとう。よく話してくれた。身分の違いなどあるが、この後も変わらず頼む。」

「「「「「はいっ!」」」」」



「話を統合すると、リーシャから送り、ケイト、ハーリル、セシリアの順で送り届けようと思うんだが、それでいいか?」

俺はしばらく思案した後に、こう提案した。

「私は皆さんが納得して頂けるならその提案を喜んで受け入れます。皆様、どうか私の我儘を聞き入れて頂けると嬉しいのです。」

リーシャは深々と丁寧に頭を下げた。

小国とは言え、一国の姫が男爵令嬢や平民に頭を下げるなどあってはいけない。

それだけのことだと態度で示したのだ。

「私はどのタイミングでも良かったので、アーク様の案に従います!」

「ケイト様、ありがとうございます。」

またリーシャはケイトに頭を下げた。

「や、やめてくだしゃい!王女様にしょんなことされたら、私の心臓が止まっちゃいまひゅ!」

焦りすぎだケイト。

「素性は明かしたがこれまで通りでいいじゃないか。戻ったらそれ相応になればいい。」

「そ、そうですね。分かりました。」



「ハーリルとセシリアはどうだ?セシリアは最後になってしまうが⋯」

「私はアーク様の提案で問題ないと思います。」

「私も学園のことがあるけど、あと少しで卒業だし、何とかなるわよ。それに経験できないことをしてるから、学園より有意義だわ。」

「ハーリル様⋯セシリア様⋯お二人共ありがとうございます。」

再度リーシャは深々と頭を下げた。

「これで決まりだな。ルンに頼んでディゼスタ王国の近くに送ってもらおう。」



こうして俺たちはディゼスタ王国へ向かうことが決まった。


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