【第2章完結】追放勇者はどこへ行く

音無響一

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第1章 迷いの森

014 元勇者と神殿騎士の女 後編

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ハーリルはどうしたんだろうか。

撫でたのは失敗だったか?

嫌そうというよりは恥ずかしくて逃げたって感じに見えたが⋯

まさか⋯初心なのか?

髪の毛の手触りの感覚が残っている。

ケイトとはまた違う滑らかさ。

もう少し触りたかったな⋯



さてと、そろそろみんな寝たか確認に行くか。

俺は洞窟の奥に行く。

仲良く並んで寝ているようだ。

「あ、ああ⋯や、やめ、やめてぇ⋯」

ん、ハーリル?

俺はハーリルらしき声のそばによる。

「はぁ、はぁ、やめ、やめて⋯」

小さい声だが呻いているようだ。

あの夜のことを思い出しているのかもしれない⋯

他の女達が起きても可哀想だと思い、ハーリルをお姫様抱っこして洞窟の入口の方へ連れていく。



俺の寝ていた敷物にハーリルを寝かす。

その横に座り頭を撫でた。

安心したのだろう、穏やかな顔になり寝息を立てていた。

やはりハーリルの髪の手触りは抜群だ。

絹のように滑らかで、ずっと撫でていたい。

ふう、魔物も今日はほとんど姿を見せないな。

リーシャと今日だったら⋯悔やまれるなぁ。



私は悪夢にうなされていた気がする。

なのに今はとても穏やかに目が覚めた。

違和感に気付く。

撫でられている、あのお方に。

なぜ?なんでこうなっている?私1人なのか?

「ん、起きてしまったか。うなされてたからこっちに連れてきたんだ。」

あ、なぜ手を離して⋯



「そ、そうだったのですね。ありがとうございます。」

ちょっと撫ですぎたか?

「すまんな、起こしてしまったみたいで。」

もう落ち着いたみたいだし、向こうに戻ってもらった方がいいか。

「そろそろ戻るか。他の女達もびっくりするかもしれないしな。」

俺は立ち上がろうとしたが、ハーリルに手を掴まれた。




「ま、まだ、こうしていたいと言ったら⋯」

私は何を⋯困らせるだけなのに⋯

座り直し、私の頭を再び撫でてくれた。

そしてとても、とても穏やかな笑みを浮かべている。

「そうだな。もう少しこうしていよう。」

「は、はい⋯」

なんという充足感、なんという幸福感なのだろうか。

このお方に触れられている。

このお方に触れている。

満ち足りていく。



しっかりしているようだが、まだ心が幼いのかもしれないな。

俺よりは年上なのだろうか。

「ハーリルはいくつになるんだ?俺は18になったんだ。」

「私は19になりました。私の方が歳上⋯」

大人びて見えるが一つしか変わらないんだな。

「一つお姉さんだったんだな。歳上の女性にこういうことするのは失礼にならないか?」



「し、失礼など!むしろもっと⋯」

私の方が歳が上?一つだとしても私の方が⋯

「失礼じゃないなら良かった。もっとって言うなら⋯こっちに来るか?」

はえ?こ、こここ、これは?

太ももの上に頭を?

「こうする方が姿勢も楽じゃないか?」

そのまま撫でられ続けている。

恥ずかしい⋯恥ずかしいのに私は満たされていく。

チラリとあのお方のお顔を見る。

なんて優しい穏やかな顔を⋯



目が合ってしまったな。

ハーリルもとても美人だ。

見つめられると目が離せなくなる。

髪の毛を撫でる手が止まらない。

ハーリルを落ち着かせてあげるためにこうしてるんだが、なんだかんだ俺も穏やかな気持ちになれるな。

少し眠くなってくるが、ここは我慢しなければな。

む、また魔物が邪魔しに来たじゃないか。

今日はヘマをしないぞ。



「ハーリル、魔物が近づいてきている。」

え?魔物?また私は気づかなかったのに⋯

優しく頭を下ろされた。

「少し待っててくれ。」

そう言い残し、あのお方は行ってしまわれた。

少しなのに、とても寂しく感じてしまう。

あのお方なら魔物に引けを取ることなどないであろうが、少しだけ心配してしまう。



しっかり索敵しないとな。

数は⋯6か、そんなに多くないな。

風の槍を6本作り、それぞれに向かって打ち込む。

魔物の姿が見える前に倒せたな。

今日は誰も起きては来ないだろ。

もう一度確認してと⋯大丈夫そうだな。



あのお方が戻って来られ、そのお姿を見て安堵している。

私は不安だったのだろう、あのお方に駆け寄っていった。

「おかえりなさい。ご無事で何よりです。」

抱きしめていた。

逞しい胸に飛び込んでいた。

「おっと、ただいまハーリル。1人になって不安になったのか?」

私を優しく抱きしめ、頭を撫でてくれる。

不安な私の心にも気付き慰めてくれる。

なんてお方なのだろう。

ずっとこの人に抱かれていたい。



「ハーリルも休んだ方がいい。洞窟に戻ろう。」

うーん、なかなか離してくれないな。

強制的に眠らしちゃうぞ?俺のが起きちゃう前にな!

さすがにマントの前ががはだけてる女とこうしてるのは、なかなかに辛いものがあるんだ⋯

リーシャやケイトのような女性らしい柔らかさはないが、鍛えた女の身体というのはこれはこれで⋯

余計なことを考えるな。



急に浮遊感に襲われた。

横抱きに抱えあげられたのだ。

こんな風に私を軽々と⋯男性とはこんなにも力強いのか⋯

「ハーリル、ここじゃなくてせめて洞窟内に戻ろう。」

そうなのだ、ここは洞窟の入口から離れている。

普段の私ならこんな危険な行為はしないのに⋯

そんなこと頭からすっぽり抜けていた。



「少し横になるか?」

俺はゆっくりと敷物に下ろそうとする。

「まだ、まだ離さないでください⋯」

腕を俺の首に回し、耳元で囁かれた。

その声は普段の凛々しい声ではなく、とてもか細く、儚く感じた。



「分かった。でもこの体勢のままじゃ俺も疲れるからな。一緒に横にならないか?」

1度下ろされ、敷物へと寝かせられた。

はだけたマントを直され、両手で私を包み込むように抱きしめてくれた。

私は声を出せなかった。

恥ずかしさより、幸福感に包まれていたのだ。

「苦しくないか?」

私は腕の中で頷くことしか出来なかった。



背の高い女もいいもんだな。

こうしていると俺も眠くなるのが困ったもんだ。

何とか朝まで起きていないとな。

「ハーリル、早く寝ないと明日が辛いからな。」

頷いてはくれるんだが、胸を擦られるとくすぐったいな。

それに身体を寄せてるから、鍛えてると言っても、そこはやはり女性だ。

女性特有の柔らかさが⋯

し、しまった⋯ヤツが起きてしまう。



何かが私に当たって⋯

これは⋯

全く男性経験のない私でも、ある程度の知識はある。

気付いてしまう。

私に当たるモノがナニかを。



しまったなぁ、こうなるとなかなか治まりが⋯

もう強制的に眠らすか⋯

ハーリルの腕がマントの中で動くのを感じた。

苦しかったのか?

俺は少し空間ができるように腕の力を抜いた。



こうしたらいいと、何かで聞いたことがある。

ほんとうにこれでいいのかは分からない。

これで喜んでくれるなら⋯私はいくらでも⋯

そっと指先で触れてみる。

恥ずかしくて顔など上げていられない。

ゆっくりと下から上になぞってみる。

あのお方は何も言わない。

ただ抱きしめ頭を撫でてくれている。

これでいいのだろうか。

手のひらを当て優しく擦る。

私を抱きしめる手に力が入る。

これで喜んでくれているのだろうか⋯



ハーリル⋯初心なように見えて、知っているのか?

でも⋯たどたどしいな。

それがまた初々しく可愛らしく思えてしまう。

普段の凛々しい姿とのギャップなのだろう。

俺はハーリルを抱きしめ撫でていた。

細く長い美しい指が俺のモノを包み込んだ。

直接触れて欲しくなる。

良くないとはわかっている。

昨日含めて3人目だ⋯

しかも今は昨日と違い、邪魔がなさそうだ。



「ありがとうハーリル。とっても⋯」

お礼を言われた?

これで良かったのだろうか。

「ヒュプノスコール。」

もっとするにはどうしたらいいか思考しようとしたのを最後に、私の意識は途切れた。



はぁ、危なかった。

また今日も溜め息か。

さてと、ハーリルを連れていくか⋯



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