【第2章完結】追放勇者はどこへ行く

音無響一

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第1章 迷いの森

006 元勇者とケイト

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ここは一体どの辺なんだろうか。

森を歩き始めて1時間、川が流れていたので休憩する。

道中で靴の素材になりそうな植物を見つけたので採取しておいた。

そこで5人分の簡易サンダルのようなものを作った。



「この森は素材の宝庫ですね。」

小柄な女が言った。

素材採取の際に自己紹介をされた。

「私はケイトと言います。色々とありがとうございます。」

素材に手を伸ばす際にマントから豊満な胸が見える。

マントの下は裸だから仕方ないんだが⋯

綺麗な胸だ⋯

しかし俺は見ないふりをし、頭を優しく撫でてやる。

肩口で綺麗に切りそろえられた金髪だ。

「助けたことが悪くならなければいいんだがな。ここからは俺がしてやれることはほとんどない。頑張って生きてくれ。」

「ありがとう⋯」

ケイトは顔を赤らめ俯いてしまう。



「これで完成です。皆さん履き心地はいかがですか?」

「痛くもないしバッチリだわ。ありがとう。」
「ありがとうケイトちゃん。」
「とても器用なのね。ありがとう。」
「私もこういうことができるようになりたいわね。ありがとねケイトちゃん。」

4人がケイトにお礼を言っている。

少しでも心が穏やかになれば嬉しい限りだ。

しかし目のやり場に困るな。

マントの下はもちろん全裸だ。

座りながら靴を履こうとしてると⋯モロ見えだ。

みんな美人でスタイルもいいから本当に困るな。

「ここで休憩したらもう少し進もう。ここが森のどこなのか、どの国なのかすら俺にはもう分からないからな。誰かわかるものはいるか?」

5人全員が首を振る。

分からないんじゃ仕方ないな。

休憩が終わったら野営出来そうな所まで進もう。

まずは小休止だな。少し目を閉じておこう。

見てはいけないものが目に入りすぎる。

起きてはいけないモノが起きる前に目を閉じよう。



私はケイト。

森へ素材の採取に来ている時にゴブリンに攫われた。

そこまでは覚えているの。

その先は⋯少しは覚えているの。

でも思い出したくもない。

あのおぞましい光景⋯今でも思い出すと吐き気がしてしまうわ⋯

私には待ってる人がいる。

街でおじいちゃんが1人で店を切り盛りしているはずよ。

早く戻らないと⋯おじいちゃんしか私の家族はいないの。

こんなことくらいで死にたくないわ。

何としても生きて私はおじいちゃんの元へ帰るの。

私はおじいちゃんの後を継ぎ、アクセサリーを作る仕事をしているわ。

両親は魔物に殺されてもうこの世にはいないの。

私は一人っ子だから、もう私にはおじいちゃんしかいない。

私達を助けてくれたこの人は何者なんだろう。

魔物が現れても瞬時に倒していく。

よく分からない収納を持っていて、そこに採取したものを入れている。

冒険者なのだろうか。

名前すら教えて貰っていない。

助けてもらった4人に聞いても、誰も教えて貰っていないようだった。

何より紳士的だ。

私も街では1番の美人と言われていたが、他の4人は私なんかより美人でスタイルもいい。

それなのにこの男性は私たちに一切手を出してこない。

15人を女神様の元へ送る様を見ていた。

聖職者ではないと言っていたが、あの光景はとても神秘的だった。

優しく抱きしめ、そして口付けをし、抱きしめたまま全てを消しさっていく。

この人が魔法を使い、女の人が消えていく時、皆一様に笑っていた。

あんな出来事があったのに全員が笑っていたのだ。

私は神の所業でも見ているのかと錯覚した。

この人は何者なのか。

本当は人間ではなく神の使いなのか。

先程、採取の際に無防備にも手を伸ばしたせいでマントがはだけ、胸を見られた。

しかしそれでも顔色ひとつ変えず、優しく頭を撫でてくれたのだ。

この人の優しさに触れ、胸が熱くなった。

そしてお腹の下の辺りがキュンとし⋯

なんてはしたないのかしら⋯こんなことなったことないのに⋯



む、ケイトの顔が赤いな。

大丈夫か?少し内股になっているし。

「ケイト、何か問題があったか?大丈夫か?」

「だ、だだだ、大丈夫でしゅ!」

心配になり声を掛けたが⋯盛大に噛んだな。

うむ、可愛らしいもんだ。

水分を摂り、干し肉やパンで腹ごしらえをしてから俺たちはまた進み始めた。

どこを進めば正解なのかも分からない。

どの方角に進んでも、あるのは獣道だ。

こんなところまで人が来ることはないのだろう。

素材が潤沢なのも人の手が入っていないからなんだろうな。

俺は珍しい素材を見つけては収納に放り込んで行く。

みんな靴を手に入れたからか、先程よりもペースが速い。

それにしても⋯ケイトの距離が近くないか?

ほぼ真横だ。

そしてよく話しかけてくる。

「ケイト、そんなに話してたら疲れないか?あまり無理は良くない。」

「ご、ごめんなさい⋯迷惑でした⋯よね⋯」

なんでそうなるんだろうか⋯女心は分からんな。

「迷惑ではないぞ。ただ心配なだけだ。もう少しで日が暮れる。野営できる場所でゆっくりみんなで話そう。」

「み、みんなで⋯そうですね!皆さんと話しましょう。」

何やら歯切れがわるいが⋯まぁいい。



「大きな木があるな。そこに窪みがある、みんなでそこに行こう。」

何とか休めそうな場所が見つかった。

うん、なかなか大きいな。

この窪みなら女達5人で入れるだろう。

虫が湧いてるな⋯俺は虫が苦手なんだ⋯

サラバ虫!オールクリア!

ふう、消滅完了。

そしてクリーン!うむ、清潔だな。

そこに敷物を出し、くつろげるようにしていく。

「今日はここで休もう。俺が寝ずの番をするから、みんなはここで休んでくれ。」

「1人でですか?それは大変なんじゃ⋯」

ケイトが心配してくれているが⋯

「初日もそうしてきた。夜が明けて安全になったら、また仮眠させてもらう。俺はそういう訓練をしているから心配しなくて大丈夫だ。」

そして俺は焚き火を焚き、夕飯の準備に取り掛かる。

今日はなんのスープにするかなぁ。

チラリと窪みを見ると、横になる女達が見えた。

やはり無防備すぎるな。

丸見えを通り越してモロ見えなんだ。

裸よりも、服越し、布越しに見えるのが⋯

はぁ、目に毒だな。

料理に集中だ。


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