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第44話 タナトスとヒュプノス再び

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「スパイラルハリケーン!」

タマモの魔法がガーロンの頭上から直接打ち込まれた。

一瞬にしてガーロンの体内を螺旋状の暴風が暴れ回る。

ドラゴンブレス同様、ガーロンも霧散した。

「ふふふ、やはり相手を圧倒するのはいい気分なのじゃ。」

みんながタマモの元に駆け寄ってきた。

「すごい魔法だったな、ガーロン相手に圧勝とは。」

「なんですかありゃあ。塵すら残っていないでやすよ!」

「でも消滅させない方がよかったんじゃないか?」

シオンの言葉に反応するタマモ。

「なんでなのじゃ!あやつは妾を散々侮辱したのじゃ!殺すまでやらねば気がすまぬのじゃ!」

「いや、それはいいんだ。ハーデスの所まで案内させたらが良かったんじゃないかって⋯」

言われて気付いたタマモ。

「ななな、なんのことかわからんのじゃ。ではハーデスを探しに行くのじゃ!」

「シオンの言う通りだが、あの状態のガーロンを放っておいたら被害も出ただろうし消滅させて良かったってことにしよう。」

「そうだな。師匠が無事ならそれでいいか。」

みんなでタマモを囲み、勝利したことを喜んでいる。

「逃げたタナトスとヒュプノスもまだいるだろうし、油断はできないな。」

プロメテウスが双子神の存在を危惧している。

「あいつらか⋯今度は失態を見せぬようにせねばな。アレの借りを返さねば私も気が済まぬな。」

「自分も不甲斐ないところは見せられやせんから頑張るでさぁ!」

テュポーンとナガーチが気合いを入れた。

「とにかくハーデスを見つけないとだからな。ここら辺を探してみよう。」

アビスパレス近辺を散策していると、シオンの攻撃が逸れたかなのか、綺麗に残っている神殿があった。

「あそこの神殿にいるかわからんが行ってみよう。」

「他に怪しいところもわからないし行くしかないだろう。」

プロメテウスとシオンは頷きあい、全員で神殿へと向かった。



神殿の前に辿り着くと、入口の前にはタナトスとヒュプノスが立っていた。

「来やがったか!お前らのせいでこんな風になったんだぞ!」

「ここに来たということはガーロンは死んだということだね。」

シオンは神弒を構える。

「またお前達か。今度こそ斬るぞ。」

シオンの力を目の当たりにしているタナトスとヒュプノスは怯んでしまう。

「な、なんだと!俺が負けるわけないだろ!」

「ガーロンも勝てないのに⋯でも僕らだって負ける訳には行かないよ!」

テュポーンがシオンの神弒を持つ手に自分の手を添えた。

「ここは私にやらせて貰おう。先程の借りを返さないとだからな。それにシオンがやるとすぐに終わってしまうだろう?」

「それなら自分にもやらしてもらいたいでさぁ!」

「分かった。2人ともよろしく頼むよ。」

「任せておけ。」

「タマモさんのようにはいきませんが、自分も戦えるって所を見せるでやすよ!」

テュポーンとナガーチは力強く返事をし、タナトスとヒュプノスに向かい合う。

「テュポーンさん、どちらとやりやすか?」

「うるさい方を私がやろう。あいつは私の夫に剣を向けたらしいじゃないか。万死に値する。私の手で屠ってやろう。」

「分かりやした。じゃあ自分はあっちでやすね。」

テュポーンはタナトスと。ナガーチはヒュプノスに向かって歩き出す。

「なんだなんだ!さっきは俺らの魔法で寝ていた雑魚じゃないか!」

「君たちなら秒殺だよ。相手になるのかなぁ?」

「そういえばテュポーンさん、武器はどうするんでやすか?無手でやるんでやすか?」

「心配は無用だ。私の武器も鎧も自己修復機能が備わっている。彼らの魂がある限り無くなることはない。」

テュポーンは天に手を翳す。

「来い!深淵の大鎌よ!」

テュポーンの呼び掛けにより、天から大鎌が降りてくる。

そしてテュポーンの手に握られた。

「お前ら程度の雑魚神に鎧を使う必要はないだろ。これだけで十分だ。では、疾く去ね。」

一足飛びでタナトスに接近するテュポーン。

剣ごと斬り裂くかのような一撃をタナトスは何とか防いだ。

「タナトス!今助けるよ!」

「おっと、そうはいかないでやすよ。自分と遊んでほしいでやすね!」

動き出そうとしたヒュプノスに、ナガーチは渾身の蹴りを放つ。

ヒュプノスは寸前でガードするも後方へ吹き飛ばされる。

「なんで邪魔するんだよ!もう怒ったよ!」

「これで簡単に援護に行けやせんね。ではゆっくり自分と遊びやしょう。」

ナガーチは超スピードでヒュプノスに接近し、拳と蹴りを放っていく。

「ははは、まるでなってやせんよ!それでも神でやすか?」

ヒュプノスは肉弾戦は得意でなく、ナガーチの攻撃をことごとく受けてしまう。

「はぁ、それでおしまいかい?」

何事も無かったかのように立ち上がるヒュプノス。

「君は何も分かってないね。いいかい?僕は神だ。君のようなただの冥界の住人がいくら強くなろうと神である僕を傷つけることなんて不可能だよ。」

ヒュプノスは角笛を構えた。

「安らかな眠りを君に与えよう。死よりも残酷な眠りをね。」

ヒュプノスが魔力を角笛に流しながら吹き始めると、清らかなメロディーが流れてくる。

「さぁ、眠れ。エバーラスティングスリープ。」

それはとても穏やかな魔法の流れだった。

全てのものに安らぎを与える、そんな魔法が場を支配する。

「ふふふ、この魔法を発動したら全てのものが強制的に眠りにつくんだ。あっけないね。」

ヒュプノスはタナトスの援護に向かおうとする。

「タナトスの相手にしてるやつはやばそうだったからね、早く助けにいかないと。」

「どこに行くんでやすか?」

その声に振り返るヒュプノスの顔面にナガーチの渾身の突きが深々と突き刺さる。

「っっっ!な、なんで眠っていないんだ!」

「なんででやすかね?自分にもわからないんでやすよ。」

「まぁいいよ、だからと言って君は僕を倒すことは⋯」

ヒュプノスは話してる途中で膝を着く。

「んな、なんだよ、これは⋯」

「おお、上手く行きやしたね。シオンさんに教えてもらった内部を破壊する技でやすよ。」

「なんだって⋯こんな技があるのか⋯」

「降参しやすか?あなたを倒したらあっしが神になるんでやすよね?自分は神になりたいとは思わないんで、倒したくはないんでやす。」

「お、お前ごときに僕を倒せると思っているのか!」

ヒュプノスは無理やり立ち上がろうとするが身体が言うことをきかず、立つことができないでいる。

「じゃあ眠っていてくだせぇ。」

ナガーチはヒュプノスの後ろに周り、腕で首を締め付けた。

「うが、な、なにを⋯は、離せ⋯」

「これもシオンさんに教えてもらった技でやすよ。スリーパーホールドってやつでさぁ。」

一瞬にして意識を断ち切られたヒュプノス。

「眠りの神を眠らせちまったでやすよ。さすがシオンさんの教えてくれた技でやすね。神継が発動しないってことは生きてるってことでやすよね。」

ヒュプノスがまだ生きてることを確認し、ナガーチはその場を後にする。

「テュポーンさんはどうなってるんでやすかね。」

ナガーチは一旦みんなの元へ戻るのだった。



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