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其の五
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「覚えておいて。次に誰かが幸明くんを泣かすようなことがあったら、僕は決して容赦しないから」
そう言い放ち、自分よりも大きな体の幸明を軽々と姫抱きにして教室を後にする日野西。
その後を追った俺の前で、アイツはまるで大切な宝物のように幸明を見つめていた。
***
「……日野西。お前、幸明のことをどう思っているんだ。恋愛対象として好きなのか?」
「うーん、どうだろ。性格は素直だし、突拍子もないことばかりするから見ていて退屈しないよね」
「まあな。すっげー迷惑だけど」
保健室のベッドに横たわる幸明。
こうしてアホなことを一切口にせずに眠る姿は普通に美し……いや、やっぱ駄目だ。見れば見るほど腹が立ってきた。
今すぐ手加減無しに頬を抓(つね)って叩き起こしてやりてぇ。が、見守るようにベッド脇の丸椅子に座る日野西が邪魔で手を出せない。
仕方なく日野西の横に突っ立ったまま睨みつけるだけで我慢する。くそがっ。
「……ぅ」
「幸明!?」
「よしよし、大丈夫だよ幸明くん」
悪夢でも見てるのか、急に眉を寄せ悲しそうな表情を浮かべた幸明。
その頭を優しく撫でる日野西。
「大丈夫、大丈夫、僕も美周くんもそばにいるからね」と繰り返す声がまるで幼子をあやす母親のようで――目の前の光景に、その言葉に、何故か俺は動きを止めていた。
が、やがてうなされなくなった幸明が今度は幸せそうにへらりと笑い「ぐふぐへ」と気持ち悪い寝言をつぶやき、次にまた眉間にしわを寄せ「そ、そんな馬鹿な……俺の……理想の受けが……」と悶え苦しみだしたところで、容赦なくビンタを食らわしてやった。
「ぶへぇえっ!? ぅおお、何これ待って痛いよっ俺のほっぺ痛熱いいぃ! え、周と悠布? あれ、ここは誰。俺はどこ?!」
「うるせぇさっさと起きろアホ幸明が!」
「……うん、二人は本当に仲良しさんだよね」
直後。
「騒ぐほどの元気があるならさっさと教室へ戻りなさい」
と学校医に怒られたのは俺のせいだけじゃないと思う、絶対に。
<SIDE:都木美周/おわり>
【其の五 終了】2021.8.9
そう言い放ち、自分よりも大きな体の幸明を軽々と姫抱きにして教室を後にする日野西。
その後を追った俺の前で、アイツはまるで大切な宝物のように幸明を見つめていた。
***
「……日野西。お前、幸明のことをどう思っているんだ。恋愛対象として好きなのか?」
「うーん、どうだろ。性格は素直だし、突拍子もないことばかりするから見ていて退屈しないよね」
「まあな。すっげー迷惑だけど」
保健室のベッドに横たわる幸明。
こうしてアホなことを一切口にせずに眠る姿は普通に美し……いや、やっぱ駄目だ。見れば見るほど腹が立ってきた。
今すぐ手加減無しに頬を抓(つね)って叩き起こしてやりてぇ。が、見守るようにベッド脇の丸椅子に座る日野西が邪魔で手を出せない。
仕方なく日野西の横に突っ立ったまま睨みつけるだけで我慢する。くそがっ。
「……ぅ」
「幸明!?」
「よしよし、大丈夫だよ幸明くん」
悪夢でも見てるのか、急に眉を寄せ悲しそうな表情を浮かべた幸明。
その頭を優しく撫でる日野西。
「大丈夫、大丈夫、僕も美周くんもそばにいるからね」と繰り返す声がまるで幼子をあやす母親のようで――目の前の光景に、その言葉に、何故か俺は動きを止めていた。
が、やがてうなされなくなった幸明が今度は幸せそうにへらりと笑い「ぐふぐへ」と気持ち悪い寝言をつぶやき、次にまた眉間にしわを寄せ「そ、そんな馬鹿な……俺の……理想の受けが……」と悶え苦しみだしたところで、容赦なくビンタを食らわしてやった。
「ぶへぇえっ!? ぅおお、何これ待って痛いよっ俺のほっぺ痛熱いいぃ! え、周と悠布? あれ、ここは誰。俺はどこ?!」
「うるせぇさっさと起きろアホ幸明が!」
「……うん、二人は本当に仲良しさんだよね」
直後。
「騒ぐほどの元気があるならさっさと教室へ戻りなさい」
と学校医に怒られたのは俺のせいだけじゃないと思う、絶対に。
<SIDE:都木美周/おわり>
【其の五 終了】2021.8.9
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