あいらぶ

葉津緒

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拝啓、母上さま。

新学期が始まりそろそろ二週間が過ぎようとしています。新入生を迎えて、学園も活気づく今日この頃。

突然ですが最近、僕にはとても気になる人が出来ました。
新入生歓迎式で見かけた子なのですが、それはもう大変可愛い人です。
早速お友達になりたくて見かける毎に声をかけてみたところ、今ではすっかり打ち解けた様子で気兼ねなく接してくれるようになりました。

それにこれは内緒ですが、僕と目が合ったり話しをする時は、何故か顔を真っ赤に染めてしまうんですよ。
もしかすると、僕のことが好きなのかも……。なんて考えたりしています(笑)

いつか、ぜひ家へ招待して母上さまにも会わせてあげたいです。きっと母上さまも気に入る筈だと思うので。

それではお身体に気をつけて。

追伸
ゴールデンウイークには帰ります。





「という手紙を母上さまに出そうと思うのだが、どうだろうか副会長」

「…………何か色々アレですけど好きにしたら良いんじゃないですか?」

「もぉ、会長うるさぁい。どうしてわざわざ生徒会室で手紙に書く内容全部しゃべってんの」
「それに気になる人って、あの新入生くんのことでしょー?」


ここは全寮制の男子校、九条学園。
その生徒会室内にて繰り広げられる会話。
上から生徒会会長、副会長、双子書記。


「会長……好き、違う。顔、真っ赤……別……」

「会計だってこう言ってんじゃん。そもそもあれのどこが『可愛い』んだよ。会長と同じくらい背高ぇーし筋肉ついてそーだし? さすがの俺でも無理だわ」


続いて片言無口な会計、チャラ男の生徒会補佐。
以上が学園内の某人気ランキングで選ばれた、現生徒会役員たちである。


「ん? 何を言っているんだ、あれほど愛苦しい存在が他にあるとでも。第一、身長なら俺より低いぞ」

「会長確か190あるよな」

「切れ長の目は純和風な感じで惚れ惚れするし」

「眼光鋭い三白眼」
「じゃなかったー?」

「それにあの、若者らしさ溢れる健やかな身体つき。意外なほどしなやかな足腰そして身のこなし!」

「喧嘩、慣れ、筋肉いっぱい。野生動物……」

「だがやはり一番素晴らしいのは何と言っても、ハスキーでありながら艶のある美声だな」

「俺にはアンタを警戒した野犬が、牙をむいて威嚇する唸り声にしか聞こえねぇよ」



何とも噛み合わない会話である。
第一、会長は他の役員達の言葉など聞いちゃいない。

恍惚とした表情でこの場にいない『想い人』の姿を、脳裏に浮かべているようだ。
内面はかなり変態の領域に近い状態だが、その無駄に整った容姿のおかげで外ヅラからは全く分からない。

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