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俺の飼い主さまを探してる
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「うっわ、本物のワンコ書記さまだよ。俺こんな近くで見るの初めてだわ」
「俺も俺も。親衛隊や風紀の奴等がいっつも張り付いてるからなー」
「まさか噂の書記さまが一人で、しかも自分から俺らの溜まり場にのこのこやって来るとは誰も思わねぇだろうし。本当にラッキーだよな」
「んん、んーッ!」
ガムテープのようなもので口を塞がれ、後ろ手に縛られて床に転がる俺。それを見下ろしながらゲラゲラと笑う人達。
どうしよう駄目だ、逃げられない。
さっき必死で逃げようとしたけど「おい、騒ぐな大人しくしろ!」って言われて殴られた。
お腹と頬がズキズキする。痛い。……怖い。
何でこうなったんだろう。
風紀委員長から逃げた後、しばらくして副委員長さんの声が聞こえてきたんだっけ。
近くの木に隠れながら姿を探すと、手に何かを持ち古い校舎の廊下を歩いてくるのが見えた。
いつの間にか俺、旧校舎のある裏庭に入り込んでたみたい。明るい中庭と比べてあまり手入れがされてないようで、ちょっとしたジャングルだ。陽が差さない場所も多くてかなり不気味な雰囲気。お化け出そう。
そういえば生徒会や親衛隊、風紀の皆からもここへは『絶対に近付いちゃ駄目』だと言われてたっけ。
「ワンちゃーん、隠れてないで出ておいで。今なら美味しいお菓子が食べ放題だよ? ワンちゃんの好きなあのお菓子だよ。ほらほら、早くしないと食べちゃうよー」
「っ!?」
……ものすごく迷った。
副委員長さんの方からは確かに俺の大好きなお菓子の匂いがする、ような気がした。
欲しい。でも今日はもう副会長や親衛隊からも沢山美味しいお菓子を貰ったのであんまりお腹は減ってない。どうしよう。
そうだ、食べるのは後にしてとりあえず貰おう。お腹が空いてからゆっくり味わえば良いんだよね。
お化けのふりをしてびっくりさせたら、副委員長さん、怖がってお菓子だけ置いてったりしないかな。
そんなことを考えながら木の前に出ようとした瞬間、俺の口を後ろから誰かの手が塞いだ。
腰に腕を回され捕まえられる。そのまま後方へと引き摺られ、どんどん副委員長さんの姿が遠くなっていく。
「んー!?」
「チッ、静かにしろ!」
口を塞ぐ手に力が加わり、別の誰かにお腹を殴られた。
痛くて、声にならない音がぐうっと喉の奥から洩れる。
その時一瞬、副委員長さんが立ち止まり「あれ? 今何か……」とキョロキョロしていたけれど、すぐに「気のせいかな」と廊下の向こうへ行ってしまう。待って!
「よし、風紀の奴は行ったな。今のうちにこいつ運んじまうぞ」
「ハハッ、了解。おら、暴れんなよ!」
そして俺はこの人達に拉致されてしまったのだった。
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「うっわ、本物のワンコ書記さまだよ。俺こんな近くで見るの初めてだわ」
「俺も俺も。親衛隊や風紀の奴等がいっつも張り付いてるからなー」
「まさか噂の書記さまが一人で、しかも自分から俺らの溜まり場にのこのこやって来るとは誰も思わねぇだろうし。本当にラッキーだよな」
「んん、んーッ!」
ガムテープのようなもので口を塞がれ、後ろ手に縛られて床に転がる俺。それを見下ろしながらゲラゲラと笑う人達。
どうしよう駄目だ、逃げられない。
さっき必死で逃げようとしたけど「おい、騒ぐな大人しくしろ!」って言われて殴られた。
お腹と頬がズキズキする。痛い。……怖い。
何でこうなったんだろう。
風紀委員長から逃げた後、しばらくして副委員長さんの声が聞こえてきたんだっけ。
近くの木に隠れながら姿を探すと、手に何かを持ち古い校舎の廊下を歩いてくるのが見えた。
いつの間にか俺、旧校舎のある裏庭に入り込んでたみたい。明るい中庭と比べてあまり手入れがされてないようで、ちょっとしたジャングルだ。陽が差さない場所も多くてかなり不気味な雰囲気。お化け出そう。
そういえば生徒会や親衛隊、風紀の皆からもここへは『絶対に近付いちゃ駄目』だと言われてたっけ。
「ワンちゃーん、隠れてないで出ておいで。今なら美味しいお菓子が食べ放題だよ? ワンちゃんの好きなあのお菓子だよ。ほらほら、早くしないと食べちゃうよー」
「っ!?」
……ものすごく迷った。
副委員長さんの方からは確かに俺の大好きなお菓子の匂いがする、ような気がした。
欲しい。でも今日はもう副会長や親衛隊からも沢山美味しいお菓子を貰ったのであんまりお腹は減ってない。どうしよう。
そうだ、食べるのは後にしてとりあえず貰おう。お腹が空いてからゆっくり味わえば良いんだよね。
お化けのふりをしてびっくりさせたら、副委員長さん、怖がってお菓子だけ置いてったりしないかな。
そんなことを考えながら木の前に出ようとした瞬間、俺の口を後ろから誰かの手が塞いだ。
腰に腕を回され捕まえられる。そのまま後方へと引き摺られ、どんどん副委員長さんの姿が遠くなっていく。
「んー!?」
「チッ、静かにしろ!」
口を塞ぐ手に力が加わり、別の誰かにお腹を殴られた。
痛くて、声にならない音がぐうっと喉の奥から洩れる。
その時一瞬、副委員長さんが立ち止まり「あれ? 今何か……」とキョロキョロしていたけれど、すぐに「気のせいかな」と廊下の向こうへ行ってしまう。待って!
「よし、風紀の奴は行ったな。今のうちにこいつ運んじまうぞ」
「ハハッ、了解。おら、暴れんなよ!」
そして俺はこの人達に拉致されてしまったのだった。
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