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俺の飼い主さまを探してる

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「ねえワンちゃん、あなたの心はどこにあるの?」

「ここ、ろ?」

「――飼い主を、そう。だけどまだ契約は誰とも結ばれてない。かな君にも十分可能性はあるってことね、うふふ。ワンちゃんには、出来たらかな君を選んで欲しいな」



こないだ学園にやって来た風紀副委員長さんの彼女さんがそう言った。
ちょっと不思議な女の子だった。かな君って誰だろ。
学園祭の日に「皆に紹介しようと思って俺が誘ったんスよ」と副委員長さんは言ってた。
みんなに挨拶して握手した後、会計と副会長は「大丈夫」で風紀委員長は「あなたは駄目」って言われてた。何のこと?
会長だけ他の人よりちょっぴり長くて。内容は聞こえなかったけど……気になる。何話してたのかな。

それに俺が飼い主さまを探してるって、何で分かったんだろう。誰にも秘密なのに。


この学園に入る前に父上が教えてくれた。
一族の中でも特に俺は『イヌ』の血が濃く、主従契約を結ぶ主(飼い主)さまを見つけ出す必要があるらしい。一生を共にし、心から尽くす飼い主さまの命令はイヌにとって絶対で喜びだって。
あと、大人になっても長い間誰とも契約が出来ずにいると人間としておかしくなるかもしれないって。 

よく分かんない。

今はまだ難しいだろうけれど、自分がずっと一緒にいて欲しいなぁと思う人を選びなさい。そういう相手を見つけたら、誰にも秘密のこの話を聞かせて、主従契約を結び飼い主になってもらえるようお願いしなさい。だけどもし断られたら二度とその人を飼い主には選べないよ。
だからくれぐれも慎重に、と注意された。


彼女さんには俺、何も話してないし大丈夫かな。他の人から聞いたのかも。他のイヌが教えた?
……後で父上に電話してみよう。

そうだ、本当はずっと内緒だった飼い主さまのことも聞いてみたい。
何となくだけど、毎日そばにいたいような気がする人が学園にいますって。俺の勘違いかな、本当かな、話してみても大丈夫かな。飼い主さまになってくれるかな。
うわぁドキドキする。
父上なら教えてくれる筈。
ああでも、断られたら嫌だ。そしたらもう二度と俺の飼い主さまにはなってもらえない。今までみたいに普通に近くにいて話したりも出来なくなるのかな。どうしよう、会えなくなったら。名前も呼んでもらえなくなったら。
どうしよう、どうしよう。



「空牙、大丈夫ですか? 顔色が悪いですよ。どこか具合でも悪いのではありませんか?」

「副かいちょ……んん、大丈夫。何でもない」

「くうちゃん本当? 隠したり嘘ついたらダメだよ。本当はお腹痛いとかもっと沢山おやつが食べたいなーとか、風紀の奴らなんか皆エロ容疑で捕まって退学になっちゃえば良いのにー、とか正直に言っても良いからね!」

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