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【番外編】風紀副委員長
4 +α視点
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※女の子が登場します。
***
「――と、いうことがあったんスよね。その後、委員長が乱入して来て殴る蹴るのバトルが始まったんスけど、まあ返り討ちにしてやったっス。俺強いっスから」
「そうなんだー。かな君、怪我しなかったの? 大丈夫?」
「大丈夫っスよ、もう治っちゃったし」
「そっか、良かったね」
ニコニコと笑いながら話すのは風紀副委員長と、彼を『かな君』と呼ぶ少女。年齢も同じくらいではたから見れば美男美女、似合いのカップルだ。
しかし会話の内容が内容である。間違っても年頃の異性同士が話すべきものではない。
幸いこの部屋には二人以外誰もおらず、眉をひそめられる心配はない。そもそも第三者がいればこの話題を口にすることはなかった筈だが。
「それでさぁ、今の話を聞いてどう思う? 俺、浮気してないっスよね?」
「うーん、そうねぇ」
可愛らしく小首を傾げる少女。
実は副委員長の噂の彼女……正確には家同士が決めた婚約者なのだが。信じがたくも、他人の心を読む特殊能力保持者である。
それについては副委員長も承知しており、だからこそ嘘偽りなく全てを語った上での質問だった。
心を読むといっても、思ったことを一字一句逃さず完全に把握出来るわけではない。相手の記憶が途切れ途切れに映像として脳裏に映し出されたり、感情が何となく伝わってくるのだ。
よほど強い思いなどの場合は音声として聞こえることもあるが、それは本当にまれである。
明るく清潔感に溢れた可愛らしい少女の部屋。
ラグに座る二人の間には小さなテーブルがあり、その上には温かな飲み物と美味しいケーキが置かれている。開いた窓から流れ込む、爽やかな風と小鳥のさえずり。遠くからは子供たちの楽しそうな笑い声も聞こえてくる。
だが、久しぶりに会う婚約者同士の会話がこれであり、少女の脳裏に次々と映し出されるのは汁気たっぷり、濃厚かつ無修正なBL場面だった。しかも音声つき。副委員長の心の声だだ漏れである。
そんな『かな君』の質問に答えるべく、少女は先ほど彼が話した内容と自身の能力を使って得られた情報を照らし合わせ、考える。
そして――
「うん、浮気じゃないよ」
「あ、やっぱり? そうだよねー、俺浮気してないっス」
「うふふ」
だって浮気じゃなくて本気なんだもの、かな君ったら。
という結論を口には出さず。
「私もそのワンちゃんに会ってみたいな、かな君と三人で」
「三人で?」
「うん、三人で一緒にね」
「一緒に?」
「うふふ。ね、お願い」
じゃあ今度、と了承する婚約者を見つめ楽しそうに笑う少女。
大好きな味の紅茶で喉を潤しながら思案する。
.
***
「――と、いうことがあったんスよね。その後、委員長が乱入して来て殴る蹴るのバトルが始まったんスけど、まあ返り討ちにしてやったっス。俺強いっスから」
「そうなんだー。かな君、怪我しなかったの? 大丈夫?」
「大丈夫っスよ、もう治っちゃったし」
「そっか、良かったね」
ニコニコと笑いながら話すのは風紀副委員長と、彼を『かな君』と呼ぶ少女。年齢も同じくらいではたから見れば美男美女、似合いのカップルだ。
しかし会話の内容が内容である。間違っても年頃の異性同士が話すべきものではない。
幸いこの部屋には二人以外誰もおらず、眉をひそめられる心配はない。そもそも第三者がいればこの話題を口にすることはなかった筈だが。
「それでさぁ、今の話を聞いてどう思う? 俺、浮気してないっスよね?」
「うーん、そうねぇ」
可愛らしく小首を傾げる少女。
実は副委員長の噂の彼女……正確には家同士が決めた婚約者なのだが。信じがたくも、他人の心を読む特殊能力保持者である。
それについては副委員長も承知しており、だからこそ嘘偽りなく全てを語った上での質問だった。
心を読むといっても、思ったことを一字一句逃さず完全に把握出来るわけではない。相手の記憶が途切れ途切れに映像として脳裏に映し出されたり、感情が何となく伝わってくるのだ。
よほど強い思いなどの場合は音声として聞こえることもあるが、それは本当にまれである。
明るく清潔感に溢れた可愛らしい少女の部屋。
ラグに座る二人の間には小さなテーブルがあり、その上には温かな飲み物と美味しいケーキが置かれている。開いた窓から流れ込む、爽やかな風と小鳥のさえずり。遠くからは子供たちの楽しそうな笑い声も聞こえてくる。
だが、久しぶりに会う婚約者同士の会話がこれであり、少女の脳裏に次々と映し出されるのは汁気たっぷり、濃厚かつ無修正なBL場面だった。しかも音声つき。副委員長の心の声だだ漏れである。
そんな『かな君』の質問に答えるべく、少女は先ほど彼が話した内容と自身の能力を使って得られた情報を照らし合わせ、考える。
そして――
「うん、浮気じゃないよ」
「あ、やっぱり? そうだよねー、俺浮気してないっス」
「うふふ」
だって浮気じゃなくて本気なんだもの、かな君ったら。
という結論を口には出さず。
「私もそのワンちゃんに会ってみたいな、かな君と三人で」
「三人で?」
「うん、三人で一緒にね」
「一緒に?」
「うふふ。ね、お願い」
じゃあ今度、と了承する婚約者を見つめ楽しそうに笑う少女。
大好きな味の紅茶で喉を潤しながら思案する。
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