「平凡な365日」番外編

葉津緒

文字の大きさ
上 下
2 / 15
赤と青

赤と青

しおりを挟む
「あーつまんね。一ヶ月ケンカ禁止って、総長命令の罰則重くね?」

「あの子の学園祭へ俺達だけで勝手に遊びに行ったからね。しかも、俺らがその場にいてあの子に怪我を負わせたんだ。むしろ軽い方だろ」

「……まあ、な」

「それにお前の場合、皆からも色々羨ましがられるようなことが多々あったみたいだし」

「はあ? どういう意味だよ」

「あの子の白い足を――」


「ブッ!? 待て、なっ何のことだ、違うぞ別に俺はアイツの足の手触りがスゲー気持ち良かったから、いっそじっくり撫で回したいとかついでに足の指も舐めてみたいとか、何ならあの足で踏まれたら最高に興奮しそうだなとか思ってねーし。
あの白い太腿に頭を挟まれながらアイツのアレをふやけるくらいに可愛がってやる夢を見て、うっかり夢精しちまったりなんかしてねーからな!
あ、あと、後ろからあのエロい太腿の間に突っ込んでメチャクチャに擦り上げたらアイツの竿も袋も蟻の門渡りも穴の入り口にも擦れて引っ掛かったりして、そのまま間違えたふりして中に挿入出来ちまったりする最高にラッキーな夢とか……ごふうっ!?
まずい、思い出すだけで鼻血が止まんねぇぞ。い、いや、だから決して俺はアイツの白い足からそんな妄想や夢は全くこれっぽっちも!」


「あーうん、むしろ恥ずかしい自白をどうも。へえ、『あり門渡とわたり』なんて言葉を知ってるんだ。デジタル大辞泉によると陰部と肛門の間、会陰えいん
……あ、『門渡り』だけでも会陰の俗称として通じるみたいだぞ」

「そ、そうなのか?」


「ちなみに俺もあの子の女装姿と白い足と下着が目に焼き付いて、あれからほぼ毎日おかずにしてる。何なら一晩で過去最高記録回数を叩き出すくらいにはお世話になったかな。まさに眼福。あれを見れただけでも罰則くらう価値は充分あったな」


「ぶっふぉー!?」


「ああ、安心しろ。妄想の中身は多分お前とそう変わらないと思う。ただ俺の場合は、緋色の長襦袢や浴衣を着たあの子が快楽に頬を染めて乱れていく様をじっくりねっとりたのしみながら『お願いだからもぉ入れて』と泣きじゃくって甘えてくるまで、しつこくねちっこく――」


「もももう止めろッ聞きたくねぇわ、そんな妄想話! 耳が腐るわ!」

「チッ、自分の時は喜んで話したくせに」

「喜んでねぇよッ」




「……とりあえずだが、今の話は誰にも言うなよ。特に総長に知られたら罰則どころか確実に殺される。そんでもし、アイツ本人に知られたら俺ら二度と信頼されなくなる、よな」

「そういう目で見られるのが大っ嫌いだからね、あの子。だから俺らも本気で告白すら出来ないわけだし。その分つい妄想がどんどん過激になってくんだけど」

「そのうちまともに顔も見れなくなるくらいに、か?」

「どうかな。とりあえず頻繁に鼻血を出すのはダメだろ」


「ぐっ、アイツが可愛くてエロいのが悪い! 学園祭の時だって俺の前でちっこい尻を揺らしながら『ねえ、早くー』とか、振り向きざまに上目遣いで言いやがって……あれ絶対誘ってたよな? むしろあの場で犯さなかった俺、偉いよな!?」

「ああ、それは偉いんじゃないか? だけどあの子の足に自分の足を絡めたり横抱きにして保健室まで運んだんだって? 皆に羨ましがられる、ってのはそういうとこなんだが」

「足を絡めたのはアイツの暴走を止めるためだし、お姫さま抱っこじゃなくて横抱きならまだ良いだろ。既に限界だったアイツを連れて逃げる方法が他に思い付かなくて、しかも保健室着いた途端、腹に膝蹴りくらったからな!?」

「……お疲れ様です。そうか、実は色々と大変だったんだな。俺も危うく過剰防衛で傷害罪になりかけたんだが、向こう側が殺傷能力のある武器や違法な薬を所持してたおかげで無事に帰ってこれたんだよな。んで、あの子がお詫びとお礼を兼ねて一つだけ何でも言うことを聞いてくれるって言うから、今度の休みにデートする約束を――」


「はああああ!? ふざけんな、誰がデートなんかさせるかてめ、ぶっ殺すぞ!」

「へえ、赤鬼が青鬼に勝てるとでも? 面白いな、どちらが本当に強いのか決着つけてやるよ」

「上等だこらぁ!」





こうして、ケンカ禁止の罰則期間中早々に本気の殴り合いを始めた二人は、青筋を浮かべた総長の拳と蹴りによってその場に沈められたという。

後日、“あの子”との待ち合わせ場所に何故か二人揃って現れるのだが、どちらも包帯を巻いた痛々しい姿だった。
改めて総長の強さと恐ろしさを味わった二人。
しかし、怪我の様子を心配した“あの子”に普段よりもずっと優しく対応されて、むしろこれこそが真のご褒美だったのか、と信じてもいない神に心から感謝したそうである。

めでたしめでたし?



【END】2020.06.10
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天使様はいつも不機嫌です

白鳩 唯斗
BL
 兎に角口が悪い主人公。

推しを擁護したくて何が悪い!

人生1919回血迷った人
BL
所謂王道学園と呼ばれる東雲学園で風紀委員副委員長として活動している彩凪知晴には学園内に推しがいる。 その推しである鈴谷凛は我儘でぶりっ子な性格の悪いお坊ちゃんだという噂が流れており、実際の性格はともかく学園中の嫌われ者だ。 理不尽な悪意を受ける凛を知晴は陰ながら支えたいと思っており、バレないように後をつけたり知らない所で凛への悪意を排除していたりしてした。 そんな中、学園の人気者たちに何故か好かれる転校生が転入してきて学園は荒れに荒れる。ある日、転校生に嫉妬した生徒会長親衛隊員である生徒が転校生を呼び出して──────────。 「凛に危害を加えるやつは許さない。」 ※王道学園モノですがBLかと言われるとL要素が少なすぎます。BLよりも王道学園の設定が好きなだけの腐った奴による小説です。 ※簡潔にこの話を書くと嫌われからの総愛され系親衛隊隊長のことが推しとして大好きなクールビューティで寡黙な主人公が制裁現場を上手く推しを擁護して解決する話です。

僕の平凡生活が…

ポコタマ
BL
アンチ転校生によって日常が壊された主人公の話です 更新頻度はとても遅めです。誤字・脱字がある場合がございます。お気に入り、しおり、感想励みになります。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

俺の愉しい学園生活

yumemidori
BL
ある学園の出来事を腐男子くん目線で覗いてみませんか?? #人間メーカー仮 使用しています

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

眠り姫

虹月
BL
 そんな眠り姫を起こす王子様は、僕じゃない。  ただ眠ることが好きな凛月は、四月から全寮制の名門男子校、天彗学園に入学することになる。そこで待ち受けていたのは、色々な問題を抱えた男子生徒達。そんな男子生徒と関わり合い、凛月が与え、与えられたものとは――。

生徒会補佐様は平凡を望む

BL
※《副会長様は平凡を望む…》 の転校する前の学園、四大不良校の一つ、東条自由ヶ丘学園でのお話。 ♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢ 『───私に喧嘩売ってるのでしょうか?』 南が前の学園で、副会長として君臨するまでの諸々、武勇伝のお話。 本人の主張する平凡とは言い難い非日常を歩む… そんな副会長サマもとい南が副会長になるまでの過程と副会長として学園を支配… 否、天下の副会長様となって学園に降臨する話である──。

処理中です...