それはきっと、気の迷い。

葉津緒

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崇悦とは幼稚園の時に初めて会って、その場でプロポーズされた。

そしたらよく分からない間に両家の親と親族間で話し合いやら取り決めやら契約(?)やらが、とんとん拍子で進み、気が付くと僕は彼の婚約相手になっていました。

ちなみに僕が18歳になったら式を挙げて、崇悦の家の籍に入る約束です。



「こ、こんな平凡が帝王の婚約者、だと?」

「黙れ生徒会長。いや、元・会長だな。お前には役職を降りて貰おうか」

「はあ!? な、何故だッ」

「当然だろう、俺の可愛い睦実を無理やり汚した罰だ。不服なら睦実に触れたその口と舌を、今すぐ切り刻んでやるが?」


バッと自分の口を手で押さえる会長さま。
顔面蒼白です。


「他の者達への処分は後にする。それより風紀委員長、確か俺は留守の間『睦実を守れ』と命令していた筈だが」

「も、申し訳ありません。力が及ばず」

「あのっ崇悦、風紀委員長さまはずっと僕を助けてくれてたよ?」

「フ、睦実は素直で優しいな。だが……俺が気付かないとでも思ったのか?」


崇悦の言葉に、風紀委員長さまの体がビクリと反応する。


「まぁいい、睦実の魅力に負けてしまった事は容易に察しがつく。勿論それなりの覚悟はして貰うぞ」

「は、はい……帝王」


平凡な僕に魅力なんて、そもそも有り得ないよ。だから崇悦が怒っているのはきっと別の理由からなんだと思う。
だって風紀委員長さま凄い焦ってるし。
絶対心当たりがあるんだろうなぁ。

だけど滅多に怒らない崇悦がこんな風になるほどの理由って、いったい何だろう。
うーん、ちょっと気になります。
多分教えてもらえないから聞かないけど。
ちなみに、崇悦があまり怒らなくなった理由は子供の頃に僕が怖がったから、みたいです。過保護?



「久しぶりの再会だ、くだらない事で時間を費やしたくはない。さあ一緒に俺の部屋へ行くぞ睦実」

「え、あ、うん?」


ソファーの下に落ちていた衣服を拾い、急かすように着せてくる崇悦。
小さな子供じゃないんだから服くらい僕一人で着れるのに……やっぱり相変わらず過保護って感じ。

しかも、床に片膝をついて楽しげに僕の世話をする帝王の姿に、生徒会役員の皆様もア然。
何かもう本当にいたたまれないです。

ボタン全部留めてないけどいいや、今は早くこの場から抜け出したいし。
そう思って崇悦の服の袖を掴めば、一瞬ピクリとした後すぐ優しい微笑みを向けてくれる。


「では行こうか」

「う、うん!」


良かったぁ、ちゃんと伝わったみたい。


「お待ちください帝王、あの者の処分については」

「ああ、忘れていた。可愛い睦実を危険にさらした罪は重いからな。二度と愚かな真似が出来ないよう厳しく躾け直すことにしよう」


風紀委員長さまが気を失ったままの珠紀くんを指差して、交わされた言葉。
ぎょっとする役員さま達でしたが、次には憐れむような目を彼に向けています。

えっと何だろうこの空気。
崇悦は躾(しつけ)って言ってたし、それは別に悪い事じゃないよね。
多少スパルタかもしれませんが。



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