ワンコとわんわん

葉津緒

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引っ越しわんわん

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「鳴いてたな」「鳴いてましたね」「色っぽかったですよ、わんわん君」「わんわん可愛いッ」


おいこら。最後ちゃっかり参加しないで、書記さま。


「百歩譲って家族に対するじゃれあいや甘えだとしても、マウンティングが擬似的な交尾行動であることは確かでしょう。未遂とはいえ、そういった意味で興奮した書記さまがわんわん君の同意も得ずにコトに及ぼうとした、つまり有罪ですね」

「だから違うんだってば! だって書記さま……ったし……」

「え? わんわん今、何て言ったのー?」

「すみません、よく聞こえなかったのでもう一度お願いします」

「男ならはっきりと、でかい声で言え」


「――――勃(た)ってなかったんです! 書記さまのアレが! だ、だから違うんです!」


恥ずかしくて目に涙が浮かんできた。
俺、何でこんなことを叫ばなきゃならないんだろう。
あの時、押し付けられたモノと擦れて思わず変な声が出ちゃったのは事実。認めたくないけどね。
でも書記さまのに兆しはなかった。そりゃまあ寝起きだし、お互いに少しはアレだったかもですが。

それに書記さまの興奮っぷりはどちらかというと無邪気……ベッドの上で子供がきゃっきゃっしながら飛び跳ねるのに近いような。純粋に楽しくて嬉しくて、それこそ舌を出してヘッヘヘッヘ言いながら大好きな飼い主の足に腰をスリスリしちゃうお馬鹿なワンコ、みたいな感じだった。
むしろそんな相手に気持ち良くなりかけた俺の方が変態――いや、断じて違うから!


「俺のアレ? たつ? 何?」

「ねー。さっきからそれ、わざと言ってるのぉワンコ書記」

「どこぞの乙女かよ。その手の知識はありません自分はピュアな天使ですってか。気色悪りぃから止めろ、その嘘くせぇ演技!」

「…………あ」


きょとんとする書記さまを前に、眉間にしわを寄せた隊長さんが思い出したように呟く。


「そういえば教えられていませんでしたね、その手の知識」

「は?」


あまりにも病弱だった幼児期と度重なる誘拐未遂事件。それらが原因で異常すぎるほど過保護になった周囲の大人たち。
そんな御家族の意向で、性的な知識から徹底的に遠ざけられた書記さまは文字通りピュアな天使(※高校生にもなって、わがまま無知な糞ガキ)に成長されました。

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