ワンコとわんわん

葉津緒

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第二部 ワンコの秘密

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ネットで何かを大量購入しようとする副会長さまのパソコンを強制終了させ、食堂に注文しようとする会計さまの手から受話器を叩き落とし、庶務さまと会長さまからスマホを取り上げる。

書記さまは……縛られた状態なので特に何も出来ず瞳をきらきらさせていた。
よし、放っといても大丈夫だろう。
そういや隊長さんは――


「え、止めて欲しいんですか、わんわん君。ふう、仕方ないですね。
ということで残念ながら今回のプロジェクトは一旦中止してください。担当の者は次の指示があるまで各自、現場で待機」


うああぁあッ!?
ちょっと変わった腕時計にしか見えない精密機械とお話し中だよ、プロジェクトって何、誰とやりとりしてるの、現場ってどこ。思い付きで非常識レベルのお金や人間を動かそうとすんなーッ!

だ、駄目だ。
何かもう色々なことが嫌になってきた。
毎日毎日セレブな美形たち(生徒会役員)に囲まれ、突っ込みも追い付かないお金持ち過ぎる言動を目の当たりにし……。
人のこと勝手に犬だのノラだの、あげく無理やり生徒会補佐にされて。
本当に限界、疲れた。
こないだまでの平凡な生活に戻りたい。


「わ、わんわん……?」

「もう無理、こんな非凡過ぎる高校生活しんどいしダルいし疲労こんぱい。俺やだお家に帰るっ」


皆さまのパソコンやら内線電話やらスマホを始末するために、ソファーから立ち上がり瞬時に動いた俺。おかげで肩で息をしてますけどそれは置いといて。
立ったまま深い溜め息を漏らせば、不安そうに見上げてくる書記さま。
俺の言葉がちょっぴり幼児返りしているのはそんだけ精神的余裕が無いからです。決してわざとじゃないよ!
うう、今すぐ帰りたい。のんびり静かに暮らしたい。


「わんわん突然どぉしちゃったのー?」

「もしかすると一度に大量の情報を与えられたせいで脳がパンク気味なのでは。犬は賢いとはいえ同時に複数のことは覚えられないそうですし。確かに今日はもう早く寮に帰って、ゆっくり休んだ方が良いかもしれませんね」

「わんわん、俺と一緒にお家へ帰る!」

「……会長さま、宜しいでしょうか」

「チッ、本人が帰りたいって言うなら仕方ねーだろ」

「良かったですね、わんわん君。今日からは寮でもずっと大好きな先輩の近くにいられますよ」

.
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