ワンコとわんわん

葉津緒

文字の大きさ
上 下
31 / 86
第二部 ワンコの秘密

しおりを挟む
「へ~ご褒美ねぇ」

「チッ」


会計さまと会長さまの舌打ちが重なる。
なな何だ、いきなり!? 
今そんな気に障るような出来事がありましたっけ、会長さま。
そうっと様子をみれば眉間に縦の見事なしわが。
……うん、やっぱ不機嫌そうだよね。


「どしたの会長ぉ、急に舌打ちなんて。何か嫌なことでも思いだしたのー」

「あ? お前こそまた変なツラしてんぞ、腹でも痛てぇのかよ」

「えー別に痛くないし。俺のどこが変なのさ、意味分かんない」


ちらりと上目遣いで窺えば、確かに会計さまも笑顔なんだけど……気のせいかさっきまでとは少し雰囲気が違うような。


「?」


「先輩方お二人とも、わんわん君が怯えてます。無駄に喧嘩するつもりなら生徒会室の外でお願いしますね」

「し、しねーよ! つか無駄って何だ」

「ごめんね、わんわん~ほらもぉ怖くないからねぇ」


庶務さまの言葉に、わたわたする会長さま。
困ったような笑顔で取り繕う会計さま。

えーっと。
いや俺、そんなに怯えたつもりは無いんだけど。若干ね、ほんっとにちょこっとだけビクついたくらいですよ。
と、声に出さず言い訳をしてたら会長さまと目が合った。
一瞬大きく見開いた目がパッと逸らされしばらく泳いだ後、再び視線が戻り今度は微妙な笑顔を向けられる。

まるで会長さま自身が一番困惑しているような、納得してない感じの曖昧な表情。


「うん??」


…………まあ、とりあえず俺が会長さまを怒らせた訳でもないみたいだし別にいっか。

あ、忘れてた。

実は「わんわん君が怯えてます」という庶務さま発言のあたりで立ち上がった書記さまは、隊長さんに叱られ渋々仕事を再開させています。
でもって、お願いだから涙目でチラチラ俺を見るのは止めてください。
何だか変に切なくなるし本当、心臓に悪いんだってば。



「書記の仕事もしばらく終わらないようですし、彼を待つ間、わんわん君に貴方達の事情など話してみてはいかがですか?」

「そうですね、まだ教えるには早いかなと思っていたのですが後々面倒なことになっても困りますし。分かりました、せっかくなのでこの機会を有効利用させて頂きます。書記さまも宜しいですよね」

「……ん、まかせ……る」

.
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

過保護な不良に狙われた俺

ぽぽ
BL
強面不良×平凡 異能力者が集まる学園に通う平凡な俺が何故か校内一悪評高い獄堂啓吾に呼び出され「付き合え」と壁ドンされた。 頼む、俺に拒否権を下さい!! ━━━━━━━━━━━━━━━ 王道学園に近い世界観です。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

親衛隊総隊長殿は今日も大忙しっ!

BL
人は山の奥深くに存在する閉鎖的な彼の学園を――‥ 『‡Arcanalia‡-ア ル カ ナ リ ア-』と呼ぶ。 人里からも離れ、街からも遠く離れた閉鎖的全寮制の男子校。その一部のノーマルを除いたほとんどの者が教師も生徒も関係なく、同性愛者。バイなどが多い。 そんな学園だが、幼等部から大学部まであるこの学園を卒業すれば安定した未来が約束されている――。そう、この学園は大企業の御曹司や金持ちの坊ちゃんを教育する学園である。しかし、それが仇となり‥ 権力を振りかざす者もまた多い。生徒や教師から崇拝されている美形集団、生徒会。しかし、今回の主人公は――‥ 彼らの親衛隊である親衛隊総隊長、小柳 千春(コヤナギ チハル)。彼の話である。 ――…さてさて、本題はここからである。‡Arcanalia‡学園には他校にはない珍しい校則がいくつかある。その中でも重要な三大原則の一つが、 『耳鳴りすれば来た道引き返せ』

貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う

まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。 新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!! ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

主人公は俺狙い?!

suzu
BL
生まれた時から前世の記憶が朧げにある公爵令息、アイオライト=オブシディアン。 容姿は美麗、頭脳も完璧、気遣いもできる、ただ人への態度が冷たい冷血なイメージだったため彼は「細雪な貴公子」そう呼ばれた。氷のように硬いイメージはないが水のように優しいイメージもない。 だが、アイオライトはそんなイメージとは反対に単純で鈍かったり焦ってきつい言葉を言ってしまう。 朧げであるがために時間が経つと記憶はほとんど無くなっていた。 15歳になると学園に通うのがこの世界の義務。 学園で「インカローズ」を見た時、主人公(?!)と直感で感じた。 彼は、白銀の髪に淡いピンク色の瞳を持つ愛らしい容姿をしており、BLゲームとかの主人公みたいだと、そう考える他なかった。 そして自分も攻略対象や悪役なのではないかと考えた。地位も高いし、色々凄いところがあるし、見た目も黒髪と青紫の瞳を持っていて整っているし、 面倒事、それもBL(多分)とか無理!! そう考え近づかないようにしていた。 そんなアイオライトだったがインカローズや絶対攻略対象だろっ、という人と嫌でも鉢合わせしてしまう。 ハプニングだらけの学園生活! BL作品中の可愛い主人公×ハチャメチャ悪役令息 ※文章うるさいです ※背後注意

ザ・兄貴っ!

BL
俺の兄貴は自分のことを平凡だと思ってやがる。…が、俺は言い切れる!兄貴は… 平凡という皮を被った非凡であることを!! 実際、ぎゃぎゃあ五月蝿く喚く転校生に付き纏われてる兄貴は端から見れば、脇役になるのだろう…… が、実は違う。 顔も性格も容姿も運動能力も平凡並だと思い込んでいる兄貴… けど、その正体は――‥。

幼なじみ祭

葉津緒
BL
親衛隊による制裁の現場で、意外な出来事が。 王道・脇役・平凡・嫌われ→?

処理中です...