ワンコとわんわん

葉津緒

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第一部 ワンコとわんわん

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いや、え、今の何。俺の勘違いじゃなければ唇にキ、キスしたよね? それも数回。
さらにお互いの鼻の頭をくっつけてすりすりって、まるで本当にペットを溺愛する飼い主みたいな感じのやつを。

と、ここで書記さまが不思議そうな顔をし、首を傾げた。


「わんわん、どうしたの? ペロペロしないの? 昔みたい、に俺の顔……ペロペロ、して」

「するかーっ!」


真っ赤になって叫ぶ俺に「ええっ!?」と驚く書記さま。
いや待て、どっからどう見ても犬じゃない俺がそれをやったら確実に変態だよね。
逆にそんな行為を望む書記さまの思考の方が理解出来ないよね!

あ、ああ、そうか。
この人にとっては俺イコール、雑種のノラ犬だったっけ。
どうせ人間扱いされてないなら俺も今のがファーストキスだったとか、ましてやセカンドとサードまで奪われちゃったよ、とほほ……なんて考えないし。
相手は男だ、それこそ犬にでも舐められたと思えば俺の唇はまだ全然大丈夫。誰が見ても間違いなくノーカウントな筈。

ファーストキスは可愛い彼女とするのが俺の夢なんだから!


「わんわん。じゃあ俺が、ペロペロして、あげる」

「は? 待っ、んんんッ!?」



…………………………
…………………………。


顔中に降り注ぐキスと、まぶたの上から、な、舐められた?
しかも離れ際に今度は唇の端だったけど、また――。
嗚呼さよなら俺の夢。

その後、茫然自失な俺を挟み


「あなたは何という真似をしくさってんですか、今すぐ彼を解放しなさい」

「ヤ、だ……わんわん、俺の。ずーっと一緒、わんわん大好き!」

「大好き大好きって馬鹿の一つ覚えじゃあるまいし。だったら余計に限度を覚えろと言ってんですよ。ちょっと皆、書記さまを押さえ付けるのを手伝って!」

「は、はいっ」
「すみません書記さま」
「し、失礼します」


と親衛隊長さん(加えて隊員さん達も)と書記さまがしばらく揉めていた訳だが。


「手を離しなさい、くっ……離せっつってんだろーが、この馬鹿力!」

「ヤーだー!!」


お前らは、母ちゃんと駄々っ子か。

.
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