ワンコとわんわん

葉津緒

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第一部 ワンコとわんわん

大団円ではありません。

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「気絶させてしまって」
「ごめんなさい」
「申し訳ないです」
「すみませんでした」


再び目を覚ますと、謝罪の嵐が待っていた。
相手は最近仲良くなった例の親衛隊くんとその友人、他見知らぬ数名。
やけに可愛い人達ばかりだなぁと思ったら、全員書記さまの親衛隊員でした。

おおう、ダメだこれ。
既に完全包囲されてます。

しかし、一体どういう状況なんだろう。
ベンチで横になる俺の額には、濡れたハンカチ。介抱してもらった訳ですね。
そのすぐ脇で涙目の書記さまが、親衛隊長さんとやらに叱られ中……?
あ、二人してこっち向いた。


「ほら、貴方も彼に謝ってください」

「ごめんなさ、い。わんわん……怒った?」

「へ。あ、いや怒ってはないですけど。それよりその『わんわん』って、もしかして俺のことっスか?」

「ん!」

「そ、そうですか」


嬉しそうに笑いながら頷く書記さま。
ですよねー……雑種のノラ犬に似てるんだもんな、俺。全然有り難くはないけど。
書記さまの隣に立つ隊長さんをチラリと見れば苦笑してるし。
さらに周りの隊員さん達もニコニコしながら俺らを見守るだけ、って何か物凄く変だよね。

そういや俺への制裁はどうなるんだろ。
向こうが勝手に寄って来たとは言え、美形書記さまに平凡な俺が接触しちゃった訳だし。ビンタ一発くらいで済めば良いなぁ。
嫌だけど一応試しに、俺がこれからどんな制裁を受けるのか聞いてみる。が。


「制裁だなんてとんでもない」

「駄目、わんわん虐める……許さない!」

「え」


まさかの真っ向否定。
隊長さんの説明によると、こうだ。

春に行われた新入生歓迎式。その最中、壇上にいた書記さまは偶然俺を見かけた。
目にした瞬間幼い頃に引き離された件の犬(イコール俺)だと感じ、直ぐさま抱きつこうとした。
が、他の生徒会役員に首根っこを押さえられ実行出来ず。

せめて名前とクラスだけでも知りたくて一年生の教室付近をうろついたところ、大騒ぎになりまたも生徒会役員から怒られ断念。
仕事も忙しくなり、生徒会室から殆ど動けず日に日にしょんぼり度が増す書記さま。

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