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癒シノ白衣1.5
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《SIDE:???》
保健室から出ていく生徒。
その姿が扉の向こうに消えるのを待って、俺は呟いた。
「アイツか……確かにお前が言ってた通り“あの人”とよく似ているな。目元なんかそっくりじゃねーか。まあ、言動はあんまし似てねぇみたいだけど。んで、やっぱ血縁者なのか?」
「どうだろ。調べてないし分からないよ」
「はあ? 何でだよ、お前らしくねぇな」
「そう? じゃあ『夢を見たいから』知りたくない、なんて言ったらもっと僕らしくないのかな」
白衣姿の晴巳がフフッと笑う。
「あの人がもう一度僕に逢うために生まれ変わって来てくれた……そう夢見る方が素敵でしょう」
有り得ねーだろ。
思わず吐き出しそうになった言葉は、とりあえず煙草に火をつけながら飲み込んでおく。
チッ、結局まだ立ち直ってねーのかよ晴巳。あの人が亡くなってからもう何年過ぎたと思ってんだこの一途バカが、くっそ面倒臭え。
「あっそ。んで、その生まれ変わりくんと上手くいって、保健室のベッドに押し倒しちまってたところを俺に邪魔された訳か」
「ち、違うよっあれは偶然その、事故みたいなもので。好晃くんと僕はまだ……そ、それよりも、ここ禁煙だってば!」
気管支の弱い子や喘息持ちの生徒も来るんだからね、と文句を言いながら窓を開ける晴巳。
露骨に吃りやがって。照れ隠しに禁煙とか持ち出してんじゃねーよ。
「ったく、いっちょ前に本物くせぇこと言いやがって『向井晴巳 先生』さんよぉ」
「そう言う『千葉知宏 先生』は……その格好、どうにかならないのかな。生徒たちが知宏を“ホスト教師”って噂してるの分かってやってる?」
「あ? 知るか、ンなもん。呼びたい奴には好きに言わせとけ」
別にどうだっていいだろ。
そう付け加えたら晴巳に苦笑された。
ふん。何故か昔っから、こいつのそういう顔に弱いんだよな。特に理由は無ぇけど。
ああ、そういや用事があったの忘れてたわ。
「なあ晴巳、昨日お前にやった菓子。あれどうした?」
「お菓子? 昨日? 多分テーブルの上にあるんじゃないかな。どうかしたの」
いつの間にか自分の机に向かって、仕事を始める晴巳。
少し離れた場所にある低めのテーブル。その上には来訪者用の飴や菓子類がいくつも入った皿が置いてあった。
その中を探してみるが見つからない。
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保健室から出ていく生徒。
その姿が扉の向こうに消えるのを待って、俺は呟いた。
「アイツか……確かにお前が言ってた通り“あの人”とよく似ているな。目元なんかそっくりじゃねーか。まあ、言動はあんまし似てねぇみたいだけど。んで、やっぱ血縁者なのか?」
「どうだろ。調べてないし分からないよ」
「はあ? 何でだよ、お前らしくねぇな」
「そう? じゃあ『夢を見たいから』知りたくない、なんて言ったらもっと僕らしくないのかな」
白衣姿の晴巳がフフッと笑う。
「あの人がもう一度僕に逢うために生まれ変わって来てくれた……そう夢見る方が素敵でしょう」
有り得ねーだろ。
思わず吐き出しそうになった言葉は、とりあえず煙草に火をつけながら飲み込んでおく。
チッ、結局まだ立ち直ってねーのかよ晴巳。あの人が亡くなってからもう何年過ぎたと思ってんだこの一途バカが、くっそ面倒臭え。
「あっそ。んで、その生まれ変わりくんと上手くいって、保健室のベッドに押し倒しちまってたところを俺に邪魔された訳か」
「ち、違うよっあれは偶然その、事故みたいなもので。好晃くんと僕はまだ……そ、それよりも、ここ禁煙だってば!」
気管支の弱い子や喘息持ちの生徒も来るんだからね、と文句を言いながら窓を開ける晴巳。
露骨に吃りやがって。照れ隠しに禁煙とか持ち出してんじゃねーよ。
「ったく、いっちょ前に本物くせぇこと言いやがって『向井晴巳 先生』さんよぉ」
「そう言う『千葉知宏 先生』は……その格好、どうにかならないのかな。生徒たちが知宏を“ホスト教師”って噂してるの分かってやってる?」
「あ? 知るか、ンなもん。呼びたい奴には好きに言わせとけ」
別にどうだっていいだろ。
そう付け加えたら晴巳に苦笑された。
ふん。何故か昔っから、こいつのそういう顔に弱いんだよな。特に理由は無ぇけど。
ああ、そういや用事があったの忘れてたわ。
「なあ晴巳、昨日お前にやった菓子。あれどうした?」
「お菓子? 昨日? 多分テーブルの上にあるんじゃないかな。どうかしたの」
いつの間にか自分の机に向かって、仕事を始める晴巳。
少し離れた場所にある低めのテーブル。その上には来訪者用の飴や菓子類がいくつも入った皿が置いてあった。
その中を探してみるが見つからない。
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