ハル+アキ

葉津緒

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寮ト同室者ト(仮)

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「ふぃー疲れたぁ」


保健室を出た後ぽやぽや気分で廊下を歩いていたら、運悪く休み時間だったみたいで好晃の取り巻きたちに見つかった。
慌てて逃げ出すと今度はガラの悪い人たちに呼び止められ殴られそうになり、腕を掴まれて空き教室に連れ込まれかけ……。

もう本当に間一髪で逃げて来たんだよ。
ここ、怖かった!

というわけで俺は今、寮(※うちの高校は全寮制の男子校です)の自室に引きこもってます。残念ながら自分の、じゃなくて好晃の部屋だけどね。
カードキーは昨日のうちに好晃と交換しちゃってたから、ここに来る以外逃げ場所も無かったし。

て言うかさ、昨日はパニクってて気が付かなかったけどこの部屋、妙に片付いててスッキリしすぎ。しかも良い匂いまでするとか……くっそー好晃め、ムカつく!
こうなったら絶対にあいつの弱点を見つけ出したる。


 コンコン


「藤堂、帰ってんのか?」

「うえっ!? あ、はいぃッ」

「……藤堂?」


ドアの外から突然話し掛けられて、思わず声が裏返っちゃったよ。


「藤堂お前、具合でも悪いのか。昨日から少し変だぞ」


個室のドアを開けて入って来たのは好晃と同室の

“桐沢 冬彦”(きりさわ ふゆひこ)

だった。ちなみにこいつも結構な美形。
ちくしょう美形滅びろ!


「何言ってんだ。そしたら藤堂が真っ先に滅ぶに決まってんだろ」

「うぐぅ、また心の声を読まれたぁ」

「いや、口に出てたし。なあ、本当に大丈夫か。やっぱ言動おかしいし熱でもあるんじゃ――って、熱っ!? ちょっ、お前これかなり熱出てるだろ!」

「へ?」


桐沢の大きな手が、ベッドの上で蓑虫(みのむし)と化していた俺のおでこに触れる。
わあー冷たくて気持ちいいー。
あ、せっかく人がうっとりしてるのに一瞬で離そうとすんな。待てこら逃がすか。


「な、おい止めろ藤堂ッ」

「やだぁ、ひゃっこくて気持ちいーの、もっとしてよぉ」

「は!? いいから俺の手を掴むな気持ち悪い、さっさと離せ!」

「あっ」

「何度も言うが、人を馬鹿にするのもいい加減にしろ。具合が悪そうだからと心配してやればふざけ……な、何故そこで泣く?!」

「ふ、うぅ、グスッ……だって、手ぇ気持ち良かったのに、もっと触ってほしかったのにぃ」

.
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