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第1話 モジャぐる君に、ご挨拶。
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確かに一瞬落ちるかもと思って怖かったです。
でも久司くんの力強い腕がぎゅっと僕を抱えてくれてたので、すぐに安心出来ました。むしろ耳元で聞こえた舌打ちの方にびくっとしたような。
それよりも、蹴り?
「まーに危険が及ぶような真似は慎んで欲しいな、久司。でもナイス蹴り」
「久司がまーを落とすはず無いけどな。とりあえずナイス蹴り。かわされたのはちょい残念だった!」
(グッジョブです桂木副隊長っ)
「永太も亮平もその他大勢の奴らも、皆して親指立てるなよ! そんで酷いこと言うなよな、全然ナイスじゃないだろ!? あんな蹴り、俺じゃなきゃもろに入ってたし。下手したらマジで死ぬからなぁぁッ」
し、死ぬ?
死んじゃだめですよっ!
「久司くん、モジャぐる……成田 翔吾くんを蹴っちゃだめです。副会長さまが悲しみます」
「……まー」
シャツをぎゅっとつかんで見上げれば、困ったようなどこか悲しそうな久司くん。
その表情に、何故か僕まで切ない気持ちになってしまいます。
「ってそこ、見つめ合うんじゃない! まー、いつまでもそんな奴の腕ん中にいないで俺に抱っこされ――うぉおっと危ねッ!?」
「……」
「ひ、久司くんっ!」
「チッ」「惜しい」
今、舌打ちと惜しいって言った永太くんと亮平くんには後でお説教です。
それにだめって言ったのに、蹴ろうとした久司くんも。
「寮に帰ったら正座で反省会です」
「うッ……あ、あいつは避ける。強い、だだ大丈夫、蹴っても死なない」
(あの久司が)(吃った!?)
「久司くん、めっ、ですよ?」
「……ぅ……」
(久司の頭に垂れた犬耳が見える。しかも垂れ尻尾まで!?)
(きゅうぅん、て哀しげな鳴き声さえ聞こえてきそうだし)
(か、桂木副隊長ぉ)
僕をお姫さま抱っこしながら悲しそうに眉を寄せる久司くん。
何だか叱られた時のシロさんを思い出します。
昔、近所の源吉おじいさんが飼い犬のシロさんを叱りながら教えてくれたことがありました。
『叱ったら可哀相だからと、悪いことをしても何も言わずに甘やかしてばかりいたらペットも人間も駄目になるんじゃよ』
だから僕も心を鬼にしなくては、です。
でも
「……っ」
「もうしないよね久司くん。僕との約束、破ったりしないですよね?」
うつむいていた久司くんの頭をそっと撫で、出来るだけ優しい声音で問いかけます。
不安そうに揺れる瞳をのぞき込みながら、もう一度。
「ね、久司くん?」
「…………………………ん」
小さく頷いてくれる姿に安心し、思わず笑みがこぼれました。
久司くんもホッとしたような微笑みを浮かべています。うん、やっぱり悲しげな顔よりも、久司くんは笑顔の方がずっと良いです。
(今、返事をするのにものっすごい“間”があったね)
(まーのお願いでも、よほど聞き入れたくなかったんだなぁ久司の奴)
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でも久司くんの力強い腕がぎゅっと僕を抱えてくれてたので、すぐに安心出来ました。むしろ耳元で聞こえた舌打ちの方にびくっとしたような。
それよりも、蹴り?
「まーに危険が及ぶような真似は慎んで欲しいな、久司。でもナイス蹴り」
「久司がまーを落とすはず無いけどな。とりあえずナイス蹴り。かわされたのはちょい残念だった!」
(グッジョブです桂木副隊長っ)
「永太も亮平もその他大勢の奴らも、皆して親指立てるなよ! そんで酷いこと言うなよな、全然ナイスじゃないだろ!? あんな蹴り、俺じゃなきゃもろに入ってたし。下手したらマジで死ぬからなぁぁッ」
し、死ぬ?
死んじゃだめですよっ!
「久司くん、モジャぐる……成田 翔吾くんを蹴っちゃだめです。副会長さまが悲しみます」
「……まー」
シャツをぎゅっとつかんで見上げれば、困ったようなどこか悲しそうな久司くん。
その表情に、何故か僕まで切ない気持ちになってしまいます。
「ってそこ、見つめ合うんじゃない! まー、いつまでもそんな奴の腕ん中にいないで俺に抱っこされ――うぉおっと危ねッ!?」
「……」
「ひ、久司くんっ!」
「チッ」「惜しい」
今、舌打ちと惜しいって言った永太くんと亮平くんには後でお説教です。
それにだめって言ったのに、蹴ろうとした久司くんも。
「寮に帰ったら正座で反省会です」
「うッ……あ、あいつは避ける。強い、だだ大丈夫、蹴っても死なない」
(あの久司が)(吃った!?)
「久司くん、めっ、ですよ?」
「……ぅ……」
(久司の頭に垂れた犬耳が見える。しかも垂れ尻尾まで!?)
(きゅうぅん、て哀しげな鳴き声さえ聞こえてきそうだし)
(か、桂木副隊長ぉ)
僕をお姫さま抱っこしながら悲しそうに眉を寄せる久司くん。
何だか叱られた時のシロさんを思い出します。
昔、近所の源吉おじいさんが飼い犬のシロさんを叱りながら教えてくれたことがありました。
『叱ったら可哀相だからと、悪いことをしても何も言わずに甘やかしてばかりいたらペットも人間も駄目になるんじゃよ』
だから僕も心を鬼にしなくては、です。
でも
「……っ」
「もうしないよね久司くん。僕との約束、破ったりしないですよね?」
うつむいていた久司くんの頭をそっと撫で、出来るだけ優しい声音で問いかけます。
不安そうに揺れる瞳をのぞき込みながら、もう一度。
「ね、久司くん?」
「…………………………ん」
小さく頷いてくれる姿に安心し、思わず笑みがこぼれました。
久司くんもホッとしたような微笑みを浮かべています。うん、やっぱり悲しげな顔よりも、久司くんは笑顔の方がずっと良いです。
(今、返事をするのにものっすごい“間”があったね)
(まーのお願いでも、よほど聞き入れたくなかったんだなぁ久司の奴)
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