ボクは隊長さん?

葉津緒

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第1話 モジャぐる君に、ご挨拶。

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「お前さぁ、何で図々しく生徒会の皆さまに近付いてるの」
「自分のヒッドイ容姿とか立場とかちゃんと理解してるわけ?」
「僕たち、警告してあげたよね。それなのに……バカにしてんの?」

普段人気の無い校舎裏は、ただ今人口過密な状態です。
小っちゃくて可愛い男の子たちが怒りをにじませ問いつめる先には、モジャモジャ頭でぐるぐる眼鏡をかけた一人の男子生徒。
彼はつい最近、学園へ転入して来たばかりなのだそうですが……。


ここ九条学園は小・中・高一貫の全寮制の学校で、そのせいかほとんどの生徒が『ゲイ』や『バイ』なんだそうです。
美形な生徒は恋愛対象としてすごくモテるし、中でも人気投票で選ばれる「生徒会」の皆さまはもはやアイドル(なのかな?)ってくらい崇拝されてます。

あ、もちろん僕は違いますよ。
自分で言うのも何ですが、いたって平均的な容姿に身長も14、いえ、約150cmとちびっ子。成績も運動神経も普通だし、この学園でモテたことは一度もありません。
それに僕は『ゲイ』でも『バイ』でもないのでモテなくっても全然気になりません!

……コホン、話が逸れてしまいました。


そんな学園に転入して来たモジャぐる君は、あっという間に生徒会の皆さまや他にも美形で有名な方々と仲良くなってしまい、皆さまをお慕いする他の生徒たちから激しく嫌われているのだそうです。

食堂では皆が見ている前で会長さまとキスをして殴った(ええっ!?)とか。
双子書記さまやチャラ男会計さまが

「この子に手を出したら許さないからねー」

と自分の親衛隊を含め全校生徒に宣言し威嚇された、などなど。
僕は直接それらを目撃したわけではありませんが、毎日のように悔し涙を流す皆の姿を見ると……何だかとても悲しくなります。

生徒会の皆さまが転入生(モジャぐる)くんを本気でお好きなのでしたら、僕は心から応援します。でも、その前にせめて転入生くんには皆さまを慕う他の皆の気持ちも大切にしてください、そうお願いしてみようと思うんです。

生徒会の皆さまが好きになった人だし、話せばきっと分かってもらえる筈。
そしたら彼を通して生徒会の皆さまにも想いは伝わるよね!
(※生徒会の方々に直接お願いすることは出来ないそうです。親衛隊のルールって難しい……)



そんなわけで。
まずはご挨拶とそれから話し合いを、と考えて転入生くんをお呼びしてもらったわけなのですが。


「……ふうん、なかなか良い感じ。この学園、レベル高……」


「ちょっと、聞いてるの!?」
「な、何こいつ。ビビりもしないで笑ってるんだけど」
「ふ、副隊長! 副隊長からもこの転入生にビシッと言ってやってください!」


ボソボソと何かをつぶやく転入生くん。
気のせいでしょうか、口の端っこが上がり、楽しそうに笑ってるみたいです。

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