大っキライ!

葉津緒

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だって片恋は苦し過ぎるから……。

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「俺は言った筈だ。唯と必要以上に関わるな、後悔するのはお前だと」


ハァハァと息を切らす俺に覆い被さるように。その両腕が俺の逃げ場を塞いで、閉じ込められる。


「……っあ、何……?」

「ムカつく。勝手に泣いてんじゃねーよ、綾佑」

「や、んんぅッ…………ふ、あぁ……っ」


低く掠れた声で名前を呼ばれ、ぶるり、と身体が震えたのは何故なのか。
どうしてこいつは俺をそんな目で見つめるのか。
ムカつくと言いながら、俺のこぼれた涙に指と舌で触れるのか。
沢山の疑問は一瞬で頭の隅に追いやられてしまう。


「は、あ……っ、やだァ!」

「何が嫌だ、キスだけでもうこんなに感じてるくせに」

「ひああァ!? やめ、離し……んぅうッ……!」

「……っ、くそ煽りやがって」


何度も深いキスを繰り返され、身体中を触られたせいで知らずに催していた下腹部のそれは。
衣服の上から握られ、軽く擦られただけなのに達してしまった。
下着の中がぐちゃりと不快な筈なのに真逆の意味でゾクゾクと粟立ちを覚える。
直後、足利昂大の声が乱暴になった気がした。
カチャカチャと急ぐようにベルトを外されて――。


「んやあッ……だ、だめ……それ無理いぃ……ふ、ぅくッ」

「……は、綾佑……んっ……」

「アあぁああッ――――!」


普段、生徒会の皆が座るソファーの上で。
会長様によって直々に押さえ付けられ、イったばかりのそれを咥えられながら、後ろのあの場所に指を入れられて。

本当はずっと欲しくて忘れられなかったあの日の凄まじい快楽の記憶と共に、俺は視界を真っ白に染めたのだった。



 ***



生徒会室のソファーの上で。
次は、奥にある仮眠室のベッドの上で。
その後連れ込まれた、足利昂大のあの寮部屋で。
俺は奴の思うがままに鳴かされ続けた。


「綾佑」

「俺を見ろ、綾佑」


何度も激しく揺さぶられ喘ぎながら、俺の名を繰り返す甘く切ない声に戸惑い、ひどく酔わされる。
どうして、何で……とその謎解きをする前に、与えられた快感が強すぎて何も考えられなくなって。

現実逃避、という言葉が一瞬頭をよぎる。
唯くんへの叶わなかった片恋が苦しくて悲しくて、泣きながら縋(すが)るように足利昂大との行為に溺れてゆく。


「……っひ、ぁ…………は、んん…………ッア……」

「く、……綾佑……っ」



そうして、奴の腕の中で気絶するように眠りに落ちる間際。優しく俺の頬に触れる奴の手の感触と。


『お前は俺のものだ。今度は絶対に逃さねぇからな』


そんな幻聴を聞いたような気がしていた――。



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