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だって片恋は苦し過ぎるから……。
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……えーと。
と、とりあえずここはちょこっと様子を窺ってみたりして。
「――さっきのアレ、って何。書記の寝言? 唯くんに恋人がいるとかいないとか。うわぁ残念だね、あいつ顔は良いのに頭おかしいんだー?」
「……」
人の襟を掴んだまま、眉間にしわを寄せる足利昂大。
押し黙った状態でじーっと睨んで(見下ろして)くるとか何なのさ。
あ、これ見よがしに大きなため息吐きやがった。
「寝言も、顔と反比例して頭がバカなのも、全部お前だろうが」
「はあぁ!?」
「たった今、唯本人が認めたのにお前は……。この俺がわざわざ優しく言い含めてやっても、何一つ理解しない。気付こうとしない。だがいい加減、目の前の現実を受け止めろ」
「現実? な、何言ってんのさー」
「お前が大好きな最上唯には、既に恋人がいる。二人は相思相愛で、そこにつけ入る隙は微塵も無い。お前の恋は絶対に叶うことはないんだ」
ズキン、と胸に痛みが走る。
嫌だ聞きたくない、もぉ帰りたい。
帰りたいのに……くそっ、手ぇ離せ。
「そ、そんなの嘘だし。恋人なんかいるわけ無いよ、だって唯くんはお前を――まさかお前、約束破って無理やり唯くんに手を出したのか!?」
「出す訳ねーだろ、それに唯が好きなのは俺じゃない。あいつの恋人は、俺の兄貴だ」
あに、き……?
足利昂大のお兄さんと唯くんが、恋人同士?
目の前のこいつじゃなくて?
予想外の話に、ズキンズキンと胸の痛みが酷くなる。加えて頭痛に吐き気まで。
ハハ、何それ。
「嘘。嘘だウソ、絶対違う。俺を騙して、俺から唯くんを奪う気だろッ! そんなの誰が信じるかこの大ウソつき野郎。手を離せよ足利昂大、お前なんか大大大っ嫌いだ!」
「黙れ」
「くそっ、離せよ! お前なんか、お前の顔なんか二度と見たくもない! もぉ一生会いたくないし、絶対何も話さない! 会計も辞める。生徒会なんか、お前と一緒のトコになんかいたくない!」
「……黙れ」
「痛っ、何しやが、んんー!?」
腹の奥から次々溢れ出てくる……激しい怒りや我慢できないほどの苦しさ、胸の中のどす黒くてモヤモヤした嫌な感情が。暴発するのを頭のどっかで他人ごとみたいに眺めてる自分がいて、その全部を奴にぶつけてやると決めた最中。
突然何も吐き出せなくなった。
乱暴に掴まれた腕や後頭部、締め付けられた腰や背中、代わる代わる押さえ付けられてく体の痛みに目が回る。
何で、とか。
嫌悪感と、意味の分からないゾクゾクが身体中を走って混乱して。
本気で噛みつかれたらしい唇が、鉄臭い。
キスされてるんだと気付き、絶対こんなのキスじゃない、逃げなきゃ喰われる!
と全力で暴れたつもりが体格と力で勝てない相手には当然通用しなくて。
「……っは、ァ……くそ……ふあっ、んうぅ!」
「…………や、ぁ苦し……離っれろ、よ……んんッ」
「ふぅ、ん……止め……っ…………」
無言のまま、奴は何度も何度も執拗に俺の唇を舌を、口腔内を、犯し喰らい続ける。
噛みつかれ、逃げようとする俺を追い回し無理やり捕まえては絡みあい、吸い付き、食まれてはまた激しく舐め上げられ……。
やがて、膝から力が抜けソファーにもたれるように座り込んだ俺を、足利昂大が見下ろしていた。
.
と、とりあえずここはちょこっと様子を窺ってみたりして。
「――さっきのアレ、って何。書記の寝言? 唯くんに恋人がいるとかいないとか。うわぁ残念だね、あいつ顔は良いのに頭おかしいんだー?」
「……」
人の襟を掴んだまま、眉間にしわを寄せる足利昂大。
押し黙った状態でじーっと睨んで(見下ろして)くるとか何なのさ。
あ、これ見よがしに大きなため息吐きやがった。
「寝言も、顔と反比例して頭がバカなのも、全部お前だろうが」
「はあぁ!?」
「たった今、唯本人が認めたのにお前は……。この俺がわざわざ優しく言い含めてやっても、何一つ理解しない。気付こうとしない。だがいい加減、目の前の現実を受け止めろ」
「現実? な、何言ってんのさー」
「お前が大好きな最上唯には、既に恋人がいる。二人は相思相愛で、そこにつけ入る隙は微塵も無い。お前の恋は絶対に叶うことはないんだ」
ズキン、と胸に痛みが走る。
嫌だ聞きたくない、もぉ帰りたい。
帰りたいのに……くそっ、手ぇ離せ。
「そ、そんなの嘘だし。恋人なんかいるわけ無いよ、だって唯くんはお前を――まさかお前、約束破って無理やり唯くんに手を出したのか!?」
「出す訳ねーだろ、それに唯が好きなのは俺じゃない。あいつの恋人は、俺の兄貴だ」
あに、き……?
足利昂大のお兄さんと唯くんが、恋人同士?
目の前のこいつじゃなくて?
予想外の話に、ズキンズキンと胸の痛みが酷くなる。加えて頭痛に吐き気まで。
ハハ、何それ。
「嘘。嘘だウソ、絶対違う。俺を騙して、俺から唯くんを奪う気だろッ! そんなの誰が信じるかこの大ウソつき野郎。手を離せよ足利昂大、お前なんか大大大っ嫌いだ!」
「黙れ」
「くそっ、離せよ! お前なんか、お前の顔なんか二度と見たくもない! もぉ一生会いたくないし、絶対何も話さない! 会計も辞める。生徒会なんか、お前と一緒のトコになんかいたくない!」
「……黙れ」
「痛っ、何しやが、んんー!?」
腹の奥から次々溢れ出てくる……激しい怒りや我慢できないほどの苦しさ、胸の中のどす黒くてモヤモヤした嫌な感情が。暴発するのを頭のどっかで他人ごとみたいに眺めてる自分がいて、その全部を奴にぶつけてやると決めた最中。
突然何も吐き出せなくなった。
乱暴に掴まれた腕や後頭部、締め付けられた腰や背中、代わる代わる押さえ付けられてく体の痛みに目が回る。
何で、とか。
嫌悪感と、意味の分からないゾクゾクが身体中を走って混乱して。
本気で噛みつかれたらしい唇が、鉄臭い。
キスされてるんだと気付き、絶対こんなのキスじゃない、逃げなきゃ喰われる!
と全力で暴れたつもりが体格と力で勝てない相手には当然通用しなくて。
「……っは、ァ……くそ……ふあっ、んうぅ!」
「…………や、ぁ苦し……離っれろ、よ……んんッ」
「ふぅ、ん……止め……っ…………」
無言のまま、奴は何度も何度も執拗に俺の唇を舌を、口腔内を、犯し喰らい続ける。
噛みつかれ、逃げようとする俺を追い回し無理やり捕まえては絡みあい、吸い付き、食まれてはまた激しく舐め上げられ……。
やがて、膝から力が抜けソファーにもたれるように座り込んだ俺を、足利昂大が見下ろしていた。
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