大っキライ!

葉津緒

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あーあー聞こえません。俺は何も聞いてないから!

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「唯きゅん、電話終わったの? 唯きゅんが居ない間、俺すっごくすっごぉく淋しかったよー」


しばらくして戻ってきた唯くんに、正真正銘の本音を漏らす。人が複数いるのに無言の密室って、実際いたたまれないよね。


「あ、うん。私用でごめんね長々と。紅茶のお代わり飲みますか?」

「飲む飲む、飲みたいっ。唯きゅんの紅茶、めちゃくちゃ美味しくて俺大好き!」


ありがとうございます、と恥ずかしそうに笑う唯くん。
本当は紅茶じゃなくて俺は唯くんのことが大好きなんだー、とはまだ言えない。
生憎そんな勇気は持ってません。
だって本気で好きな人に、好きって告白するのは初めてなんだよ?
もしも振られたら、と考えるのは辛いし怖いし嫌。せめてもっと二人が仲良くなってからゆっくりじわじわと……。

ハッ! そうだ、良いこと思い付いた。
唯くんと俺が仲良くなるためにも、ここは一つ。


「ねぇねぇ提案なんだけどー。これから生徒会で一緒に仕事するわけだし、親睦を深めるためにもどっか遊びに行かない?」

「遊び?」


急な誘いにびっくり顔の唯くん。
本当に可愛いなぁもお。
生徒会の他連中は驚きより怪訝な眼差しで見てくるから、可愛くなぁい。
別にどーでも良いけどね。


「ちょうど明日から三連休だし。学園の外で楽しくパーッと日頃の鬱憤を晴らそうよ。ね? お願い、唯きゅんっ!」

「え、あ……その」


うん?
何故か視線を泳がせた後、真っ赤な顔を俯かせる唯くん。
まさか俺、変なことでも言っちゃった?


「明日からの休み期間はどうせまた家に戻るんだろ、唯」

「う、うん。えっとだからその、ごめんなさい新田くん」

「えーそっかぁ残念。あ、じゃあまた今度遊びに行こうよ、ね?」

「はい。ぜひ皆で遊びに行きたいです」


嬉しそうに笑う唯くん。
皆で行くとは一言も喋ってないんだけど、俺……。
ち、しょうがない。
唯くんの希望なら他の奴らも同伴させてやるか。あくまで脇役もしくは、その他大勢の引き立て役として。

それより何で足利昂大が唯くんの休日の予定を把握してるんだよ。
いちいち我が物顔で俺と唯くんの会話に割り込みやがって。
そゆの、すげー苛つく。

がるるる、と唸り声をあげてしまいそうな気分で奴を睨んでいたら。
何故か書記にハァ、と大きなため息を吐かれたし。へ?


「会計、ばか。……ほんと、に間抜け過ぎる、憐れ」

「はぁあ!? 何それちょっと、まじでケンカ売ってんの」

「……補佐、が家に帰る理由。電話。色々。気付かない会計、おかしい」

「うん?」


今俺の頭上には、はてなマークがたくさん浮かんでいる筈。
ねえ、いきなり何言いだしてるのかな、この人。全然意味分かんないんだけど。

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