王道くんと、俺。

葉津緒

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第五章

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ああもう切り替えよう。今はこれ以上何も考えない!
そう決めた俺は、ふらつきながら部屋の奥にあるシャワールームへと逃げ込んだ。あ、いや別に逃げてないけどね。ノアに心配かけたくないから、それだけだしっ。




さくっとシャワーを浴びて出ると、棚の上から脱いだ服が消えてました。代わりに新品の下着一式とジャージ(ノアの予備かな?)が置いてあるんだけど。
え。草の汁やら砂やらで汚れてた俺の制服どこぉ?


「ねぇノア、俺の服……」


頭をタオルで拭きながら部屋に戻れば。えっ、何で。


「バ、か、会長?」

「お前……」

「来るな郁人っ」


何故か部屋の中にはノアと、片頬に湿布を貼った橘会長の姿がありました。
驚いたはずみにタオルが床に落ち、俺の濡れた髪の毛からはぽたりと水滴が落ちる。
見開いてた会長の目が細まり、俺をギラリと睨みつけてきた。こ、怖ひ。


「ここで何をしている千賀郁人。いや、何をしていた」

「え? えーっとぉ、」

「それともこれからヤるつもりだったか? はっ、まさか生徒会役員までてめえの毒牙にかけてたとはな。さすが噂の下半身野郎だ、突っ込むのも突っ込まれるのもお手の物ってか。この淫乱が」

「……っ」


ああ駄目だ。タイミングが悪すぎる。
さすがに今はそーゆーの無理だから。ゾワッと鳥肌が立ち涙目になるのが自分でも分かった。


「飛鳥!」

「退けッ」


腕を掴んで止めようとするノアを振り払い、俺に向かってくる会長。
本当、何でこの人こんなに怒り狂ってんだろ。今日会うのはこれで三度目だけど、もしかして俺やっぱり殴られるの!?
かと身構えたら胸ぐら掴まれました。ひいいっ。


「ふざけんなよてめえ、クソ誰にでも靡(なび)きやがって。マジで相手が誰でもいいなら何で――」

「止めろ飛鳥、郁人から手を離せ!」

「煩いっ、俺様に指図するんじゃねえ。こいつだけは絶対誰にも」

「ひぁっ、や、会長やめ……んうぅッ」

「郁人!」


 ――ガリッ


「痛っ、てめ噛みやが、ぐをッ!?」


口を塞ぎさらに奥へと無断侵入して来た相手に、俺は思い切り噛みついた。
痛みで会長の身体がほんの少し離れた瞬間を狙い、優ちゃん直伝の痴漢撃退法をお見舞いする。前屈みで激痛に苦しむ敵を突き飛ばし転倒させれば、ゴンッといい音がしました。頭ぶつけたかもだけど俺はもぉ知りませんっ。


「ごめんノア、制服はまた今度取りに来るね」

「待って郁人!」



床に転がり頭と股間を押さえてるバ会長を後に、俺は今度こそ本当に逃げ出した。

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