王道くんと、俺。

葉津緒

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第五章

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引っ掻かかれ、その痛みに体がブルリと震える。
だから違うよね。甘いしびれなんか俺、感じてない。


「だーめ。このままお望み通り、泣いて嫌がるお前を無理やり犯してやるよ。俺とそいつの二人で、前も後ろも……な。ふふ、嬉しいだろぉ『郁人さま』?」


嬉しくないし、そんなの望んでない。
何でこんなことになったの。
どうして美濃岡先輩はそんな誤解をしたんだろう。

嫌だ。もう止めて、俺に触らないで。


「うあぁっ!?」

「ハアハア……ふ、郁人さまぁ、もぉ僕、我慢出来ないよぉ……んちゅ」


目の前の光景が重なる。
あの時の、あの行為が。
自由を奪い無理やり俺の上で俺の心を無視していやらしい笑みを浮かべた人。
真っ赤な唇からのぞく舌がまるで蛇のそれのように――――。


「や、やだやだやだ、いやだっ嫌、離せぇ! 離して止め、助け……ッうわああああ!!」

「えっ? ふ、郁人さま?」

「チッ、おい静かにしろよ!」


苛つく先輩の声と同時にバチンと頬を打たれる音。
だけどその次に聞こえたのは


「……お前ら、郁人から離れて」


怖いくらいに怒っている、第三者の声だった。



「きゃあっ嘘でしょ、今度は倉橋埜吾さままで!?」

「あらら、生徒会の会計様かよ。あんたも覗きですかー。それとも一緒に遊びたいのかなぁ」

「うるさい、離れろ」


殺気を帯びた低い声に、俺を押さえ付けていた手と重さが消える。


「……ノ、ア?」

「郁人、もう大丈夫。もうひどいことさせないから」


俺のすぐ近くまで来ると、まるで物語の騎士のように片膝をついたノア。
心配そうな顔がこっちを覗いてる。


“倉橋 埜吾”(クラハシ ノア)

こと、生徒会の会計さまは普段めったに人前で表情を変えず話さない、無口なワンコ系美形キャラだ。
そして何故か去年うっかり色々とありまして……実は俺の友達です。
優ちゃんにも内緒だけどねー。

でも何でここにノアがいるの?


俺は仰向けで倒れたまま、滲む視界の中にいるノアを見上げる。
ああ、まだ頭が混乱してるのかな。
さっきまでの怖さと今のホッとした気持ちがごちゃ混ぜで、息が苦しい。

すぐに腕の拘束を外され、着衣の乱れも直してくれたノア。俺はそれをただボーッと眺めているだけだった。

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