王道くんと、俺。

葉津緒

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第五章

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「ちょ、待って。本当に俺そんなつもりじゃ、ひいいっ!?」

「しーっ、静かに。やだなぁ千賀くんってば、そんなに興奮したら最後まで持たないよ。ああ、それとも『そういう』趣向?」


ねえ! 今、お尻を鷲掴みにされたんだけど。趣向ってなに、止めて痛いから揉まないで。アンッ、ゆゆ指ぃ!?
待って本当に待ってそこは触っちゃ絶対ダメだから――って、めっちゃ自然に俺の髪の毛をすくってキスしてるよこの人ぉ。耳にリップ音が吐息が、クスリと笑う振動が……ひいいいっ。

助けて優ちゃん、ものすごい鳥肌が立ってますううぅーッ。


「先輩、お願っ……も、離してくださ」

「うっわ、千賀くん演技上手いねぇ。嫌がりながらも無理やりされちゃう感じがそんなに好きなんだー。あはは、じゃあ俺も頑張って襲っちゃおーっと」

「な、何言って、うわっ」


突然引きずられて数歩先の芝生に倒れ込みました。いてて。

四阿へと続く小道のすぐ脇にある、芝生スペース。あ、ここ太陽が当たってぽかぽかだ。
校舎からは木や茂みが邪魔をして見つかりにくいし、お昼寝には最高かも……。


「三人でヤるならこっちの方が広くて良いだろ? 屋根の無い青空の下、とぉっても健全で不健全なゴーカンごっこを楽しもうね」

「え」

「ほら、お前も来いよ。大好きな『郁人さま』が俺らに襲われたくてたまんないってさ。ウズウズして待ってるから」

「ふ、郁人さまぁ……っ」

「いいいや全然待ってな、止め、離して!」


起き上がりかけの体を仰向けに転がされ、俺の肩と手を美濃岡先輩が押さえつける。体重をかけて足の上に乗るのは、もう一人の生徒。

カチャカチャとベルトを外す音。
ハアハアと興奮した荒い息。
クスクスという笑い声。


「やだ、やだってば! 離して……離せぇッ」


抜き取られたベルトで後ろ手に縛られる。
上半身を中途半端に起こされて、背後から抱きつくように押さえ込まれたら、嫌でも先輩にもたれ掛かるしかない。
シャツのボタンは外され、素肌を直接撫で回す先輩の冷たい手。


「ははっ、すげー鳥肌。震えてるし寒いの? ごめんね俺、手ぇ冷たくて」

「ひゃっ、あ」

「うん、小っこいけど良い手触り。へぇ、ここ感じるんだ」

「ヤ、痛っ……も、離してッ!」

.
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