王道くんと、俺。

葉津緒

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第五章

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あの、せめて四阿に到着するまでは我慢した方が良いと思うよぉ。つまずいて転んだりしたら大怪我するかも、とか違う意味で見てるこっちがドキドキします!

……よし、見なかったことにして先を急ごう。
そう決めた途端、振り向いた相手と目が合いました。えっ。


「あっれ? 千賀郁人くんじゃん。久しぶりぃ」

「み、美濃岡……先輩」


うわああぁ、どうしよう。
笑顔で手を振る色男

“美濃岡 巧”(ミノオカ タクミ)

さんは三年生で、俺の苦手な人なんだよぅ。だってこの人、本物のチャラ男だし。下手に近付いたら俺が偽物チャラ男だってバレそうだし。
身長は……この人も俺より少ぉし高いねこのやろー。
あと、目が怖い。
一見優しそうな垂れ目の筈なのに、笑ってても笑ってないというか。よく分かんないけど、背中がぞわぞわして今も鳥肌立ちまくりです。

そういや優ちゃんにも「美濃岡にはマジで近付くなよ。見つかったら逃げろ」って言われてました。あわわ、に、逃げなきゃ。


「あの、俺ちょっと用事が」

「何だよ千賀郁人くん、こんなところで覗きなんかしちゃってぇ。毎日一緒の親衛隊にマンネリ感じて、新しい刺激でも欲しくなったとか?」

「ち、違いま」

「ふーん。毛色の違う相手を探しに来たならせっかくだしさぁ、俺らと交じっちゃう? ははっ、それいいね。三人で一緒に気持ち良くなろうか」

「きゃあっ嘘でしょ、郁人さまとヤれるの」

「ヤらな、ひっ!?」


一瞬で距離を詰めた美濃岡先輩に肩をつかまれました。
あああのちょっと、い、痛いデスヨ。


「えー、お前も千賀くんのファンなわけぇ」

「だあって僕、本当は郁人さまの親衛隊に入りたかったんだもん。なのにあの嫌味な隊長が入隊拒否しやがって。ほんとムカつく。何度も邪魔されて郁人さまには近付くことも出来なかったし」

「だったら今ここで仕返ししちゃえよ。あの可愛らしい隊長さんよりも『郁人さま』を気持ち良くさせられたら、お前の勝ち。な?」


話しながら俺の腰に腕を巻き付ける美濃岡先輩。
しまった。さりげない風に見せかけての、逃走防止の拘束技ですね。本物チャラ男怖い。

ゴクリッ、と唾を飲む音がして見れば、さっきまで先輩に抱かれてた可愛い生徒が頬を紅潮させてる。
鼻息荒く、俺を見る目が発情しきってて――。

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