王道くんと、俺。

葉津緒

文字の大きさ
上 下
71 / 89
第四章

21

しおりを挟む
……いや、確かにそうかもしれないけども。ちょっと、あの。
優馬隊長、この人本当に信頼しても大丈夫なんですよねッ。



授業が終わり、飛んで来た優馬隊長が郁人さまの様子をくまなくチェック。
そこからは土屋くんも一緒のお説教タイムに。ひえぇっ!?


「くだらないこと(千葉との張り合い)で危なく郁人さまを怪我させるところだったなんて」

「……悪かった」


怯える僕らをよそに、謝罪の言葉を口にする土屋くん。はいぃ?
え。まさか優馬隊長・最強説って本当なの!?

郁人さまも驚いた様子で土屋くんのおでこに触れて、熱を計ってます。あ、ぺいっと手を剥がされた。


「千裕くんも、郁人さまを危険にさらすような真似は止めてもらえますか」

「うん、ごめんね。だけどあれで助けられないようじゃ二人とも今後は郁人くんに必要ないんじゃないかな」

「……!?」

「ああ、なるほど。確かにそれもそうだね」

「でしょう?」


ふふふ、と笑い合う可愛らしい二人。
な、何だか黒い。そして怖いです。
寒気がして視線を逸らすと、またも郁人さまのあの蕩けるような微笑みが――


「なるほど全く反省してませんね、郁人さまぁ?」

「ひいぃッ!?」


笑顔の優馬隊長の後ろに一瞬、鬼のような幻影を見た気が、あれ?



やがて隊長が隣のクラスへ帰ると。
郁人さまは疲れきった様子で机に突っ伏し、その後の授業を静かに真面目に受けられていました。
朝、あれほど皆に衝撃を与えた憎い転入生のことも忘れているようなので、僕ら親衛隊一丸となり奴の話題が郁人さまのお耳に入らぬよう様々な努力と工作を続け……。

ですがそれも、帰りのホームルームが始まり、氷川紀幸が転入生の所在を千葉先生に尋ねてから数秒後。

「あああああっ、また忘れてたー!!?」

と郁人さまが絶叫し、僕らは再び絶望に襲われ打ちひしがれて。
――全ては徒労に終わりました。


おのれ、氷川め。
思い出した途端しつこく「ねぇねぇ、歩くんは!?」と千葉先生を質問攻めにする郁人さま。それを警戒心あらわに睨む氷川。

ちょっと、何だよその目!
お前が、例のキラースマイルで教室から消えた連中に含まれていたのは知ってんだからなッ。
同じく消えた太賀がすっきりした顔でトイレから戻る途中、廊下の端っこで体育座りになり何やらぶつぶつ呟いてる氷川を見つけ回収した。そう、中村くんに報告してたし。
教室に帰ってきてからもしばらくの間、真っ赤な顔でチラチラ郁人さまを見てたくせに……。

よし、こいつも優馬隊長に報告しよう。
それもなるべく誇張気味に!



<郁人さま親衛隊、隊員Aの視点・終わり>




【第四章/END】
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

ワンコとわんわん

葉津緒
BL
あのう……俺が雑種のノラ犬って、何なんスか。 ちょっ、とりあえず書記さまは落ち着いてくださいぃぃ! 美形ワンコ書記×平凡わんわん ほのぼの全寮制学園物語、多分BL。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

ザ・兄貴っ!

BL
俺の兄貴は自分のことを平凡だと思ってやがる。…が、俺は言い切れる!兄貴は… 平凡という皮を被った非凡であることを!! 実際、ぎゃぎゃあ五月蝿く喚く転校生に付き纏われてる兄貴は端から見れば、脇役になるのだろう…… が、実は違う。 顔も性格も容姿も運動能力も平凡並だと思い込んでいる兄貴… けど、その正体は――‥。

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

平凡な365日

葉津緒
BL
平凡脇役(中身非凡)の王道回顧録 1年間、王道連中を遠くから眺め続けた脇役(通行人A)の回想。 全寮制学園/脇役/平凡/中身非凡・毒舌 start→2010

星蘭学園、腐男子くん!

Rimia
BL
⚠️⚠️加筆&修正するところが沢山あったので再投稿してますすみません!!!!!!!!⚠️⚠️ 他のタグは・・・ 腐男子、無自覚美形、巻き込まれ、アルビノetc..... 読めばわかる!巻き込まれ系王道学園!! とある依頼をこなせば王道BL学園に入学させてもらえることになった為、生BLが見たい腐男子の主人公は依頼を見事こなし、入学する。 王道な生徒会にチワワたん達…。ニヨニヨして見ていたが、ある事件をきっかけに生徒会に目をつけられ…?? 自身を平凡だと思っている無自覚美形腐男子受け!! ※誤字脱字、話が矛盾しているなどがありましたら教えて下さると幸いです! ⚠️衝動書きだということもあり、超絶亀更新です。話を思いついたら更新します。

親衛隊総隊長殿は今日も大忙しっ!

BL
人は山の奥深くに存在する閉鎖的な彼の学園を――‥ 『‡Arcanalia‡-ア ル カ ナ リ ア-』と呼ぶ。 人里からも離れ、街からも遠く離れた閉鎖的全寮制の男子校。その一部のノーマルを除いたほとんどの者が教師も生徒も関係なく、同性愛者。バイなどが多い。 そんな学園だが、幼等部から大学部まであるこの学園を卒業すれば安定した未来が約束されている――。そう、この学園は大企業の御曹司や金持ちの坊ちゃんを教育する学園である。しかし、それが仇となり‥ 権力を振りかざす者もまた多い。生徒や教師から崇拝されている美形集団、生徒会。しかし、今回の主人公は――‥ 彼らの親衛隊である親衛隊総隊長、小柳 千春(コヤナギ チハル)。彼の話である。 ――…さてさて、本題はここからである。‡Arcanalia‡学園には他校にはない珍しい校則がいくつかある。その中でも重要な三大原則の一つが、 『耳鳴りすれば来た道引き返せ』

処理中です...