王道くんと、俺。

葉津緒

文字の大きさ
上 下
70 / 89
第四章

20

しおりを挟む
そこからは怒濤の展開でした。
我らが担任の千葉先生が突然現れ、まるで白馬の王子様か正義のヒーローみたいに郁人さまを守り、敵を撃退させたのです。
きゃーっ先生カッコいい!

敵改め、安保のクソ野郎は最後まで嫌味ったらしく負け犬の遠吠えってやつを実演して逃げていきましたよ。けっ、です。二度と来るな!


そして何故か、千葉先生と土屋くんとの間で始まる郁人さま争奪戦。
二人の攻防に振り回され、郁人さまの顔色がどんどん酷くなっていきます。あわわ!?


「土屋くんちょっと待って。郁人くんが吐きそうになってるから、僕が代わりに預かっとくよ」

「……頼む」

「おいこら、中村!」

「あんたは行かせない」

「チッ、面倒くせーなッ」


中村くんのおかげで無事に郁人さまの救出は成功しましたが、戦いは続行中です。
あーあー何も聞こえない、僕は何も見てませんからー。


「郁人くん大丈夫?」

「……はあはあ、し、死ぬかと思った」


一方、背中をさすられている郁人さまの顔色があまり良くありません。僕も慌てて駆け寄ります。


「ふ、郁人さまっ本当に大丈夫ですか? 何かお飲み物でもお持ちしましょうか?」

「えっ、ううん大丈夫だよぉ。心配してくれてありがとー」


えへへ、と嬉しそうに笑う姿に少しだけホッとして、だけど中村くんが口にした安保先生への警戒感に気を引き締めます。

……確かにあれは異常な感じだった。
先ずは優馬隊長に報告し、今後は親衛隊全体で対処する必要があると思う。
うん、さすがは優馬隊長が見込んだ男、中村くん。


「んー、ところでさぁ。あの二人どーやって止めよっか? それとも疲れるまで放っといた方が良いのかなぁ」

「そんなの簡単でしょ」

「へ?」「郁人さまっ」


「!?」


千葉先生と土屋くんがそれぞれ片腕と片足を突き出す、まさにど真ん中。
そこへ背中を押された郁人さまが勢いよく倒れかかる。
周りから短い悲鳴がし、一瞬後には怪我一つなく二人に支えられている郁人さまの姿があった。


「中村」「……どういうつもりだ」「ち、チーちゃん?」

「ほら、簡単だったでしょ。まさか二人が郁人くんを傷付ける筈ないもの。ね」


突き飛ばした犯人がにっこりと笑う。
さも当然のように告げられて、彼を除く全員が呆気にとられます。

.
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

俺の愉しい学園生活

yumemidori
BL
ある学園の出来事を腐男子くん目線で覗いてみませんか?? #人間メーカー仮 使用しています

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!

BL
 16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。    僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。    目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!  しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?  バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!  でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?  嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。 ◎体格差、年の差カップル ※てんぱる様の表紙をお借りしました。

ザ・兄貴っ!

BL
俺の兄貴は自分のことを平凡だと思ってやがる。…が、俺は言い切れる!兄貴は… 平凡という皮を被った非凡であることを!! 実際、ぎゃぎゃあ五月蝿く喚く転校生に付き纏われてる兄貴は端から見れば、脇役になるのだろう…… が、実は違う。 顔も性格も容姿も運動能力も平凡並だと思い込んでいる兄貴… けど、その正体は――‥。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜

小屋瀬 千風
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。 主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。 他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆ 〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定) アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。 それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 【超重要】 ☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ) また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん) ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな! (まぁ「長編」設定してますもん。) ・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。 ・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。 ・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

平凡な365日

葉津緒
BL
平凡脇役(中身非凡)の王道回顧録 1年間、王道連中を遠くから眺め続けた脇役(通行人A)の回想。 全寮制学園/脇役/平凡/中身非凡・毒舌 start→2010

処理中です...