王道くんと、俺。

葉津緒

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第四章

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問題はチーちゃんが手に持つもう一枚の方。
その紙面を大きく飾るのは、歩くんと会長の写真。
それも

“会長が(多分)無理やり歩くんにキスをしている真っ最中”

のものだった。


――はあァ?
いや、えっ。
ということは恐らく、つまり既に。


「ま、まさかそんな俺の知らない間に」


食堂での王道BLイベントが終了していたというのかあぁぁあ!?
ずーっと楽しみにしてきたのに酷いよ会長!
人を安心させといて、まさかの仕打ち。

ハッ、そうか。
もしやさっきトイレで会ったのも俺を油断させる為のフェイントだったとか。
ううう、くっそぉ騙された。


「(バ)会長め、絶対に許せないぃー!」

「え、郁人お前まさか本気で転入生のこと」

「へえ、郁人くんが怒るなんて珍しいね」



 グイッ



「……何やってんのお前」

「え、亮ちゃん? うわっ」


王道イベントを見逃したショックと会長への怒りで涙目になっていると。肩をつかまれ、振り向けば不機嫌顔の亮ちゃんがいました。

で、何故かそのまま


(お姫様抱っこぉぉおッ!?)
※クラス一同、心の悲鳴


されちゃってますね、姫抱きに。
い、いやいやいや恥ずかしいよこれぇ!
トラちゃんもチーちゃんも目を見開いてるし。
クラスの皆は口を開けて凝視。
ついでに驚きすぎて固まってる。

と、俺も動転のあまり他人事みたいな説明をしてる場合じゃないや。


「は? え、何でちょっ下ろして亮ちゃんっ」

「暴れたら落ちるぞ」

「ぎゃあ! ババ、バカ怖いから止め――」


手を離すふりをした亮ちゃん。
この人たまに本気か冗談なのかよく分からない時があるんだよね。
180台半ばの長身で、170台の俺を姫抱きしながら立ってるわけだし。この高さから落とされるのは流石に嫌だよぉ。

本当に落とされそうで思わず首に腕を回してしがみつく。
そりゃもう、ぎゅううっと!

一瞬、亮ちゃんの動きが止まった気がしたけど油断大敵。落ちてたまるかっ、とますます必死でしがみつく。
周りからは小さい悲鳴というか息を呑むような音が聞こえる。
そして浮遊感。
え、まさか落ち――。


「……ねえ亮ちゃん、何この格好」

「うるせえな、高いと落ちそうなのが怖くて嫌なんだろ。低くしてやったんだから素直に喜んどけ」

.
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