王道くんと、俺。

葉津緒

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第三章

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「それ、本人に気付かれないようにする必要あるのか?」

「もちろん最終的には警護対象者の協力が不可欠ですが、今はまだ――」


「ふうん、つまり風紀委員にとって余計な仕事を増やすな邪魔するな、ってことか? 何だか息が詰まっちまうような話だな。うっわ面倒臭ぇ」

「千葉先生、失礼ですが貴方は教師ですよね。ご自身の教え子を守ろうという気持ちは無いのですか」

「教師つっても別になぁ。聖職者だって人間なんだから生きてりゃ普通、過ちの一つ二つくらいは犯すだろうし? そんで面倒臭いもんはやっぱ面倒臭いだろ」

「詭弁ですね」

「そーかぁ?」


適当に相槌を打ちながらペリリッと包みを剥がし、あいつらが置いてったボリュームたっぷりのサンドイッチに噛り付く。
売店の日替わり人気限定品はやっぱ美味いな。


「まあ、今後は俺も気をつけるわ。放送の内容も暗号文にするとかな」

「……郁人の、彼の手首にある拘束された跡について弁解はされないのですか」

「しつこいなお前も。さっき本人が大丈夫だって言ってたじゃねーか。あいつ最近気が抜けてるみたいだから、ちょっと縛ってビビらせた程度だよ」


まあ、うっかりというかついでに少し味見もしちまったけど。
あれぐらい可愛いもんだろ。
しかもあんな色気垂れ流しながら「本当は誘ってんじゃねーのか?」って感じの涙目で怯える郁人を見て、理性を保った俺にむしろ感謝して欲しいくらいだ。


「ですが、不用意な先生の行動で郁人は危うく被害に遭いかけました。今しがたトイレの中で生徒会長に襲われているところを、俺が助けたんですよ」

「あ? ――んの糞ガキ!」



 ガタンッ



「落ち着いてください。会長も先生同様に未遂です。それに郁人は……保健室へ向かったのなら大丈夫でしょう。風紀のガードも付けてありますので」

「チッ、会長だと? あんな馬鹿と俺を一緒にしてんじゃねーぞ」


あいつは自分が偶然生まれ落ちた“だけ”の家の力を、有り難みの一つも感じずに振りかざすただの馬鹿だ。世界を意のままに動かせるとか思ってんだろ、きっと。
そのくせ下手に恵まれやがった己自身を持て余し、周囲にストレスの捌け口だけを見い出そうとする。

なんつーか。
昔の俺を見てるみたいで恥ずかしいじゃねぇかよ。

.
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