王道くんと、俺。

葉津緒

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第三章

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風紀委員は親衛隊を作ることを認めていない為、代わりに非公式の『ファンクラブ』がある、と優ちゃんが言ってました。


「離れろテメ、くそ風紀が」

「付け上がるなよ、貴様こそさっさと彼から手を離せ!」

「痛あっ!?」


何で。ちょ……離せって言われたのにさらに強く手首を掴むのは止めてよぅ。
馬鹿なの、バ会長は正真正銘のおバカさんなの?
人の言葉が分からないんですか、そうですか。
ってもう、痛みで考えるのが面倒臭くなってきちゃったし。あはは、視界が涙で滲んでるや。


「貴様ッ」

「うるせぇな、俺様に命令してんじゃねーぞクソ風紀。あ? 潰すぞテメ」

「潰すだと? 所詮貴様は、そうやって家の力に頼るしか能の無い奴だということか。つまり己自身の力では俺に勝てないと理解している訳だな?」


「……チッ、糞が」

「うわわっ!?」


乱暴に腕を引っ張られたかと思ったら、ドンッ、とりっちゃん先輩目掛けて突き飛ばされました。もーさっきから痛いばっかしだよ、バ会長のせいで。

よく見てなかったけど、会長はりっちゃん先輩の手を振りほどくと多分ごみ箱を蹴りつけ、そのまま「バタン!」と出て行っちゃったみたい。

あれ?
トイレで用を足さなくても良かったのかな。おしっこ(大のほうかもしれないけどね)漏れちゃうよぉ?



「大丈夫か、郁人」

「うん、りっちゃん先輩ありがとー。あ、でもごめんなさい」


突き飛ばされた弾みでりっちゃん先輩の制服にしがみついたから、少しだけシワになっちゃってる。
品行方正で常に生徒の見本となるべく身だしなみにも気を配る。そんな風紀委員長さまの制服がしわくちゃって……普通にありえないし駄目だよね。

シュンと落ち込む理由が分かったのか、しわの出来た箇所を一瞥すると。


「ああ、これくらいなら問題は無い。別に気にしなくても大丈夫だ」

「りっちゃん先輩……!」


うわぁ。男前な発言と、滅多にお目にかかれないと噂の貴重な笑顔(んーでも俺は結構よく見てるけどね?)が今、目の前に。
これぞまさしく眼福ですっ。

そんな風紀委員長さまはやっぱりと言うか俺より背が高いので――いやほんのちょっとだけだからね。皆して180越えとかムカつく、なんて思ってないよ。

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