王道くんと、俺。

葉津緒

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第三章

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あっという間に自由な方の手も拘束されました。だから何で!?


「な、何やって。ちょっ、もぉ本当に離してよ会長ー!」

「……」


上から無言で顔を覗き込まれ、内心嫌な汗が流れ出す。うう、真顔とか怖いし止めてよぉ。しかも会長の目が、獲物を狙う肉食動物みたいでゾッとするし。
ねぇ誰か説明して。この人が急におかしくなった理由は一体何いぃ!?

と考えてる余裕も無く、スッと近付いてきた会長の顔を、サッとかわした俺。
まぁ頭を横に傾けただけなんだけどね。
あ、会長ムッとしてる。


「……」

 スッ

 サッ


「……」

 スッ

 サッ



――ねえ何、このコント。

多分だけど会長は俺にキスしようとしてるんだよね?
まぁ理由は謎ですが。
BL小説とかで攻めが受けに無理矢理キスする時、受けの両手を一つに纏めて片手で押さえ込むでしょ。んで空いた方の手で顎、というか頭を固定する訳で……。

会長、俺の手を纏めずに拘束してるから自分の手も両方塞がった状態なんだよ。

うん、気付いてない気付いてない。
さすがバ会長、おかげで俺も避けられるんだけど。てか気付く前にいい加減、諦めて離して欲しいな。

小っちゃくて可愛い親衛隊の子達ならまだしも、バ会長みたいなガタイの良い同性に密着されたって全然嬉しくないし。
いっそ股間に膝蹴りとかお見舞いしようかな。
でも流石に相手が会長だとちょっと迷う。だって歩くんといざって時、使い物にならなくなったら困るし。

うう、何かちょっと苛々してきたかも。


「……」

 スッ

「しつこい!」


 ゴチン


「ぐあっ!? て、てめッ」


あ、やったー。片手が解放されました。
何故なら会長が自分の顔を手で押さえているからでぇす。
そんなに痛かったのかな、俺の頭突き。
鼻目掛けて思いっきりぶつけてあげたし流血ものかもね。あーすっきりした!

でも下手すると鼻の骨が折れちゃうから、良い子はマネしないようにねっ。
俺のおでこもジンジンするし、この攻撃はあんまり使わないようにしよ。

ん?
何だろ、また会長が静かになったような。鼻押さえたまま目を見開いてるし。
えっと、俺の首のあたりに何かあるのかな。


「会長ー?」


見開いてた目が急激に険しくなる、と思った次の瞬間。


「痛あぁーっ!?」

.
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