王道くんと、俺。

葉津緒

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第三章

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「どうした、覚えてないのか。まさか薬を使われたり目隠しされたまま犯され」

「されてないから! んもぉ冗談でもそゆ事言うのは止めてよバ会長ー」


ほんの一瞬、思い出したくもない記憶が頭を過ぎったけれどあえて明るく振る舞ってみる。
それよりも、バ会長の中で俺はネコなの? タチじゃないの?
だって俺だよ。優ちゃん命令とはいえチャラ男設定で親衛隊持ちなんだから、普通タチでしょ。変なの。


「ハァ!? じゃあこの痣は何なんだよ」

「えーっと、だからこれは別にその。多分ちょっとふざけて?」

「……ちょっとふざけた、だと」

「痛っ!?」


俺の腕を掴む会長の手に力がこもる。
え、何。
どうしたの会長、急にそんな恐い顔して。
それよりもっと気になるのが――。


「えっとあの、会長ぉ」

「あ?」

「近くない、かなー、とか」

「テメーの気のせいだろ」


えええっ。
いやいや、本当に近いから。
確かついさっきも同じ出来事があったように思うんだけど、これってデジャヴ?


 ギリリッ


「痛ッ!? ち、ちょっ、会長離してってば」

「うるせぇ」


眉間にしわを寄せ、睨み付けてくる会長。
手首を掴む手が妙に熱い。

こうして改めて間近に見ると、学園内アンケート『抱かれたいランキング』一位の美形っぷりは流石に伊達じゃないよね。
何だかんだ(バ会長とか)言ってもやっぱり格好良いし。もぉ早く王道……歩くんとイチャイチャしてくれれば良いのに。出来ればぜひ俺の目の前で!

などと現実逃避から腐の妄想に耽っていたら、会長の綺麗な顔がぐんぐん近付いて来てくる。

は?


「!!」

「…………」


あ、危なかったぁ。
まさに間一髪、いや間一指。

て言うか、え。
これ何?

焦点が合わない程近付き過ぎて、鼻と鼻がくっつきそうな二人の距離。
放っといたら口がぶつかっちゃうよっ!?
って寸前、無意識に自由な方の手が動いたみたいです。だって今現在、会長の口を俺の片手が押さえてるし。

何考えてんのさバ会長。
とりあえずそのままグググッと押しやる。でもあんまし動かないー!
言っとくけど俺の力が無いわけじゃ無いからね。多分、ほんの少ぉしバ会長の方が体力や体格やらで勝ってるだけだから。


「チッ、邪魔くせーな」

「は? え? ちょっ」

.
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