王道くんと、俺。

葉津緒

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第三章

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「ったく、富丘なんぞに好きにさせやがって」


は?
トラちゃんがどうしたの。
うわぁっ耳元でのエロボイスは止めてえぇ、て言うかベロ!
み、耳を舐めたり甘噛みするの俺的に禁止だからーッ。


「くはっ、や……止め……千葉ちゃん勘弁してえッ」

「やだね」


やだねって千葉ちゃん、アナタ一応教師ですよね?
というかこういうことは俺じゃなくて


「ぜひ歩くんにしてあげて下さいっ!」

「は? 誰だそいつ」

「誰って、何とぼけてんの千葉ちゃん! 今日来た王道転入生の歩くんデショ? 貴方がこれから落とす相手デスよ」

「…………」


あっれぇ、何故か俺を見る千葉ちゃんの目が、生温いんですけど。
そんな可哀相な子を見るような眼差しを向けないで下さい。



 ガチャッ ガチャガチャッ


『おいっ!? 何で鍵かけてんだ、中にいるのか郁人!』

「へ、優ちゃん?」

「チッ、来やがったか」


 ドンドカドゴッ バンバシバゴンッ 


『さっさとここ開けろッ、んのエロ教師! 郁人に何かしやがったら絶対ぶっ殺すからなテメーッ』

「ゆ、優ちゃん……!」


俺の身体が接触(というか押さえ付けられてます)している扉の向こうから、もの凄い打撃音と衝撃が伝わってくるよー。気のせいか扉が変形しかけてない?
千葉ちゃんはまた舌打ちをすると不機嫌そうに眉間にしわを寄せ、目を細めた。


「ま、今日はこのくらいで我慢しといてやるよ。フッ……助かったな郁人?」


我慢とか助かったって、何。
いやまぁうん、色々と助かったけどさ。

「今日は」ってもう二度といりません。

てか、だから結局何がしたかったのさ千葉ちゃん。無駄にフェロモン振り撒かないで欲しいよねー王道くん以外には。


 ドガッバキッドゴオォンッ
 ごんっ

「ぎゃっ!」
「うお!?」

「郁人ーッ、無事かあぁぁッ! ……て、あれ。どこだ郁人?」


さすが優ちゃん、力持ち。
鍵のかかった扉を蹴破り、外れた金属製のドアが部屋の内側に倒れて――俺も千葉ちゃんもその下敷きとなりました。
さっきの「ごんっ」は俺の後頭部に扉がぶつかってきた音でぇす。
うう、ズキズキするぅ。


「ふ、郁人?」


 ぎゅむぎゅむむっぐりいっ


「い、痛いッ踏まないで優ちゃんーっ!」

.
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